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歳月の画廊
美しくも荒々しいその風景画は
いつも私の心にささっていた
言葉を語らずとも触れれば分かる
この手にはいくつもの色彩の跡があった
同じ景色が続く回廊の中を走り続けた
始まりに戻るたびに目先は変わる
しかし眼前の世界は変わらない
何回腹を立てただろう
それこそが私である意味だった
幾度となく続く路を歩く
始点には風景画が増えて
終点には抽象画が増えていった
人と交わるような分岐点
それでも私は壁の向こうで叫んでいた
やがて鼓動はゆっくり流れ
私は私という自分をやめた
全てが嘘で固まった彫刻を砕く
その時に流した涙を忘れはしない
歩幅は小さくなり立ち止まる
抽象画は破れ落ち
風景画は色あせる
私は何度ここに立ったのだろうか
無駄に思えていた時間は既に終わっている
鼓動を亡くした手は震え
世界は既に止まっている
虚言に耳を傾ける悪魔よ
どうか私を救わないでくれ
始点に横たわっていたのは
黒く塗りつぶされた棺であった




