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漣の揺れる場所
静かに繰り返すこの音が
どこか懐かしく頬を撫でる
遠くを照らす残照が
青色の空に零れていく
手から落ちた砂の雫
波間に解けて消えて行く
深く深く水が問う
掬い上げた色が透けて行く
拾い上げた貝に耳をあて
海の音を思い出す
いつからか忘れてたこの音が
私の中で響いている
やがて残照が降りて行く
月明かりが泡沫に
蒼い光が翻す
漆黒の真昼がやって来た
繰り返す波間に身を寄せて
静かに耳を傾けた
澄んで聞こえる星の音
目を閉じて歌を歌う
漣が手を握る
揺れる波間に溶けて行く
またここで始めよう
漣はまだ泣いている




