171/660
あきらめ
冷たい手すりに掴んで揺れる
春というのに吐息が白い
画面に写し出された天気予報
現在の気温は6度だそうです
扉が開いて寒い風が吹き込んできた
思わず身震い
画面が水滴で濁っていた
服の裾で拭い歩く
連続して移る雨模様が
気に食わないほど晴れて見える
向こうの方が明るいじゃないか
僕の真上の空は鉛色
水溜まりに反射する雨が
足下を濡らしていく
雨水を含んだ靴が気持ち悪い
地面を踏む度に悲鳴をあげる
道に落ちる桜の花びら
いつもよりも穢く見える
それは僕が濁っているから
それともそれが現実だから
目的もなく向かう目的地
それが日課だから僕は行く
雨の音がどうもうるさい
目的地は既に過ぎていた