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命を運ぶ雨
こぼれた花びらが手の甲の上に乗った
振り払うことなく花びらを台車の上へ
明日は雨だってさ
花を乗せた台車を屋根下へ運ぶ
雨が強くなってきた
アスファルトに出来た水溜まりが音を立てる
早く台車を屋根下へ
ひとつひとつ台車を送る
雨に濡れた花びらが輝いていた
アスファルトは雨水でずぶ濡れ
水溜まりがそこに出来ていた
全部運んだかな
傘をさして周りを見る
奥に見つけた台車がひとつ
最後まで甘いなあ
最後の台車を屋根下へ
雨水が手の甲を伝う
冷たいと感じたのに
暖かいと思った
帰り際にふと空を見上げた
真上は闇夜
月の明かりもない
雨を運ぶ音がまだ響く




