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瞑る鬼の話
鬼は外福は内って
社の奴らはおおはしゃぎ
今日は節分
鬼が最も被害をうける日だ
まったくとんだ災難だ
ため息をついて甘酒を
かつての風物詩は今なお健在
そのこといくばかりか残念に思う
ふと思い出したかつてのこと
人と私が共存していた
互いに笑って泣いて
日々を楽しく生きていた
けれどそれは途端に崩れて
人は私を拒絶した
今となっては昔の語りごと
あの地もう平穏なんてありやしない
月夜を眺めて呟いた
「人は本当に勝手なものだ」
それが私には眩しかった
後ろから近寄る者ふたり
後頭部に豆を投げつける
その片方には鬼がいた
「お前は豆をぶつけられる側だろう」
ノリで混ざる風物詩
鬼が豆を投げる摩訶不思議
これが今のあり方か
私はそっと目を瞑る