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イチリンソウの迷い子
見開いたまま空を映す
動かない人形の瞳は
水晶ガラスの万華鏡
反射した光が
廃墟の中を淡く彩る
それは紅くて儚い空の色
光に照らされて集う迷い者
人形の示した方へ飛び上がる
それは夜に近い黒い鳥
夜へ誘う迷い者
砕け散ったガラスに朱は燈る
扉の開いた向こうの部屋
在りし日を奏でるオルゴールは
まだ鳴りやない
円盤の上で回り続ける人形は
垂らされた糸を解いて踊ってる
それでも壊れた人形は
同じように踊ってる
手のひらに咲いた花が
何かを言おうと風に揺れる
ふわりふわり落ちてくる紅い花びらは
いずれまた咲く種になる
待ち人は未だ来ない
人形はずっと壊れたまま待っている
夕焼けの向こうの夜
今日もまた星雨が降る




