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キミカゲソウの追憶
あの日の音が鳴った
小屋の扉を開ける音
私は笑顔で抱きついた
あの人の中は温かい
まだやまない星の雨
穴の空いた天井から見えた空
あの頃に見た色彩と同じ
まだ覚えていたんだね
人形の上に積もる風
咲いた花を揺らしてる
それはまるで鈴の音
聞いてとまる小鳥たち
繰り返される夢の中に
見つけ出した私の居場所
どこまでも続く回廊は
人形の記憶を謳い紡ぐのか
四季の花が咲この町に
訪れたもう1人の人形
私にそっくりな人形は
何もいわずに私を抱いた
どうして泣いているの?
言葉のない声を人形は伝える
君に会えたから
もう1人の人形は言葉で伝えた
跡形もなく崩れていく
それでも人形は回廊を廻る
そこは終わることのない夢の中
人形はいつまでもそこにいる
廃墟に降ってきた星のカケラ
それはかつての人形への贈り物
もう1人の人形は呟いた
おやすみなさい