春
青々と透き通る葉桜が空を覆う。
ピンクの桜が満開なら、この公園も花見にこじつけた宴会がそこかしこで開かれるのだろう。
でも今ここにいるのは私と彼だけ。
「もうちょっと葉桜が人気でもいいのにね」
「君は桜の花が嫌いなの?」
「好きだけど、葉桜も好きなの! 君はどう?」
「嫌いではないよ。でも好きってほどでもないよ」
「勿体ない!」
「そんなこと言われても……」
「むー」
「もう……仕方ないな。だったら僕も好きになろうかな?」
「なんか軽くてヤダ」
「君が好きなものだから僕も好きになるんだよ? これが軽い訳ないよ」
青い春の中、桜色に染まる私がいた。