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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Meaningless×Mad World

作者: 生温みかん

「なあ、マイクよ」

「何でえ、トム」

「俺たち、やっぱ死んでんじゃねえの?」

「ぬわぁーにぃー? じゃあ何でオレたちゃ動いてんだぁ?」


 トムと呼ばれた青年が、荒れ果てた砂の大地に大の字になって横たわる。それに倣うように、マイクと呼ばれた青年もどこまでも広がる砂の上に身を放り出す。ブロンドの短髪の青年たちはよく似た姿をしていた。赤い目のトムと、青い目のマイク。


「俺は難しいことはわかんねえ。でもよ、俺たちの家はこんな砂漠じゃねえだろ? だからきっと死んだ後の世界だぜ、ここは」

「ああ? マジかよ、待ちくたびれたぜ! やーっとオレたちは自由に暴れられるんだな?」

「そうだ……あれ、前にもこんな話しなかったか?」

「さあ? とりあえずよぉ、記念に一発遊ぼうぜ」


 マイクはがばっと身を起こし、体をぐっと伸ばした。トムもゆっくり立ち上がると、二人は提げていたホルダーから銃を取り出し、お互いの額に突き付けた。


「腕は一本五十点、足は一本二十点。胴体は一発十点だ。脳天ぶち抜いたら百点……ただし、殺したら負けだ!」

「オーケーマイク、今日は勝たせてもらうぜ?」


 その言葉を合図に、二人は後ろへ数歩下がり――彼らの“遊び”は始まった。鳴り止むことなく、銃声が辺り一帯に響き渡る。二つの生ける屍は、すでに朽ちたはずの体を動かし、自分たちが生きているのか死んでいるのかもわからないままに大地をさ迷う。



**



 その行為はただ、少女の食欲を満たすものに過ぎない。例えそれが常識外れなものであろうと、行為を引き起こす欲求の根源は何一つ常人と変わらない。


「おなか、すいた」


 少女が口にする言葉は、ただそれだけ。言葉を持たないのか、言葉にしないのか、それはわからない。その虚ろな目は、感情すら持ち合わせていないのではないかと思わせるほどに無機質だった。

 少女は対象を殺すことはしない。生きたまま食したほうが新鮮さがあると少女は考える。それに、どうせ殺すことに変わりはない。腕も足も肉があるならば骨になるまで貪り尽くす。耳をつんざく悲鳴も、セーラー服に飛び散る赤色もまるで気にしない。彼女は食事をしているだけなのだ。例えそれが共食いとされる行為であろうとも。


「……おなかすいた」


 口の周りについた血液を舐め取ると、少女は再び呟いた。残したのは数人分の骨といくつかの内臓と肉片。もう男か女かもわからない死体の一つから眼球をむしり取り、口の中に放り込む。それを最後に少女は何処かへ歩き去っていった。暴食少女の欲求は満たされることを知らない。



**



「お、願い、です、どうか……この子たちの命だけは」

「ワーオ、コレゾ美シイ家族愛デース! ワタシ、感動シマシタ! デモ残念、ワタシ、生キテル人間興味ナイデース」


 ゆるく巻いた明るい茶色の髪が揺れる。艶やかな魅力を醸し出す体型の女性。目の前には母親と二人の子供という親子連れがいる。怯えた表情で身を寄せ合う子供と、同じく恐怖に満ちた表情で震えながら子供を庇おうとする母親。女性は母親を褒めたたえた直後、冷たく言い放ち手にしたナイフを子供たちの額へと勢い良く投げた。泣き叫び、すでに絶命した子供たちを抱く母親を女性はニコニコと笑って見守る。


「マダデース。マダ駄目。デモコレデ完成デース!」


 声高らかにそう述べると、母親の後頭部にナイフを深く突き刺した。生が死へと変わる。その感覚に快感を覚え、女性は恍惚とした表情を浮かべる。腕に子供を抱きながら絶命した母親。その頬には涙が伝っていた。その構図を見て、女性は満足そうに頷いた。


「嗚呼、ワタシハ今幸セデース! Viva la muerte!」


 快楽に震える体を抱きしめながら、女性は再び喜びの言葉を口にした。



**



 じわりじわりと、痛め付ける。苦しみに表情が歪む。いつからかそれは彼の快感となっていた。


「……さあ、答えてください。お嬢様は何処ですか」

「し、知らねえ! 本当だ、本当に何も知らないんだ!」


 手枷や足枷に体の自由を奪われた無精髭の中年男性。恐怖に歪んだ表情で必死に燕尾服の男性に訴える。微笑を浮かべたまま、彼は刃物で男性の皮膚を少しずつ削いでいく。薬で鈍らせているにも関わらず、そのたびに苦しみ悶える無精髭の男性を楽しそうに見つめる。

 そんな行為が数時間に及んだ。一向に飽きもせず拷問を続けるうちに、中年男性はついに気を失った。いや、死んだのかもしれない。それを見て、燕尾服の男性は不快感をあらわにした。気絶か死か、そんなことはどうだっていい。苦しむ表情を見れなくなったことに彼は不機嫌になった。


「……もういい。あとは猛禽たちの餌にでもなりなさい。私は、お嬢様を探さないと」


 念のため、所持していたレイピアで心臓を貫く。その血を払うと、彼は立ち去った。残った死体に群がる大型の鳥たち。彼が本当に求めているのは、はたして“お嬢様”か拷問相手か。



**



 荒れ果てた大地は身を隠す術が少なくて困る。木々の一本も見当たらない砂漠では、立ち止まればすぐに死に捕まる気がしていた。


「はあ……っ、着いた……ここが今回のセーブポイントね」

「そのようだね。いやー、今回は案外早くゴールできたね」

「あの双子のゾンビに会ったときは焦ったけどね……」

「拷問執事や食人少女に会わなかっただけマシだろう? ネクロフィリアにも会わずに済んだ。僕らはまだまだ天に見放されてないみたいだ」


 まだ顔立ちにあどけなさが残る娘と、小学生ぐらいの、男だか女だか非常に見分け辛い容姿の子供。娘のほうは息を切らしながら、大きな菱形の輝く石を見上げた。ここが今回のゲームのセーブポイント。ある日突然巻き込まれた、謎のゲームの。


「ねえチェシャ。このゲーム、いつ終わるのかな」

「さあね。気がついたら僕らはゲームに参加してたんだ、気がついたら終わってるんじゃないかな?」

「もう褒美なんかいらないから帰りたい……」

「藍は無欲だねえ」


 チェシャと呼ばれた緑の髪の子供は答える。藍と呼ばれた、名前と同じ髪色の娘は深いため息をついた。高校三年生の藍は、その日も学校で授業を受けていた。それがいつからだ。こんな訳のわからない場所へ飛ばされたのは。チェシャとは飛ばされた先で偶然出会った。

 この子供は、飛ばされた先でセーブポイントを見つけゲームをクリアしろと言った。そうすればゴールに辿り着け、褒美が手に入ると。藍は早く帰りたい一心で、チェシャは藍と共にゴールすれば望む褒美が手に入るらしく共に行動することになった。正直何が本当で何が嘘かもわからない。道中出会ったのは狂った人間ばかり、いつ死んでもおかしくない。


「……さて、ひとまず休戦だね。また会おう、藍」

「うん、またねチェシャ」


 体が白く輝く光に包まれていく。ゴールしたら一旦元の世界へ帰ることが出来る。しかし、数時間から数日もすれば再びゲームが始まり、強制的に何処かへ飛ばされるのだ。誰が始めたのかわからない、目的もわからない、最後に本当にゴールが待ち受けているかもわからない。ただ藍は、ひたすらにゴールを目指すだけ。同じ参加者であるおかしな奴らに殺される前に。


 意味の無い世界で、意味の有るものは見つけられるのか――――?

連載ネタのまとめですので非常に支離滅裂としています。すみません。←

現在連載中の空っぽの旅人とトリップという点は似てますが、他は全然そういうつもりはないです。


ちなみにに作中の「Viva la muerte!」の台詞は「死よ、万歳!」って意味だったり。

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