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もう一度、夢を歌う  作者: 明日羽
第二章 : 武道館編
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最終話 武道館

 ステージの幕の向こうから、ざわめきが聞こえてくる。


 


 何千人という声。


 


 波のように広がる音。


 


 私は深く息を吸った。


 


 手が震えている。


 


 足も少しだけ。


 


「緊張してる?」


 


 美咲が笑いながら言った。


 


「してます」


 


「いいね」


 


 ベースを肩にかけながら言う。


 


「人間っぽい」


 


 涼はギターを調整していた。


 


「由紀」


 


「はい」


 


「今日」


 


 彼女は少しだけ笑った。


 


「人生変わるよ」


 


 私はうなずいた。


 


 もう変わっている。


 


 会社員だった昨日までの私と、今の私は違う。


 


 沙耶がマイクを握る。


 


「客席」


 


 私はモニターを見た。


 


 そこには、広がる人の海。


 


 満員の武道館。


 


 胸が強く打つ。


 


 こんな景色、想像したこともなかった。


 


 そして。


 


 真琴がドラムに座った。


 


「準備いい?」


 


 全員を見る。


 


「楽しもう」


 


 短い言葉。


 


 それだけだった。


 


 スタッフが手を上げる。


 


「10秒前!」


 


 照明が落ちる。


 


 武道館が暗闇に包まれる。


 


 そして。


 


 歓声。


 


 巨大な歓声。


 


 心臓の音がそれに重なる。


 


「3!」


 


「2!」


 


「1!」


 


 幕が上がった。


 


 光が爆発する。


 


 歓声が武道館を揺らす。


 


 真琴のドラムが鳴った。


 


 ドン。


 


 その一音で、空気が変わる。


 


 涼のギター。


 


 美咲のベース。


 


 沙耶の声。


 


 私はマイクを握った。


 


 そして歌う。


 


 声が、武道館に広がる。


 


 観客の手が上がる。


 


 歌声が重なる。


 


 何千人の声。


 


 音楽が、空間を満たす。


 


 曲が終わると、歓声が爆発した。


 


 拍手。


 


 叫び声。


 


 その中で。


 


 真琴がマイクを取った。


 


「ありがとう武道館!」


 


 歓声。


 


「今日は」


 


 少し笑う。


 


「新しい仲間を紹介する」


 


 客席がざわめく。


 


 私は息を飲む。


 


 真琴が私を見る。


 


「由紀」


 


 私は一歩前に出た。


 


 ライトが当たる。


 


 まぶしい。


 


 客席がぼんやりと見える。


 


 何千人の視線。


 


 でも。


 


 逃げない。


 


 私はマイクを握った。


 


「こんばんは」


 


 少しだけ声が震えた。


 


「今日からこのバンドで歌います」


 


 深く息を吸う。


 


「由紀です」


 


 拍手が起きる。


 


 でも。


 


 私は続けた。


 


「私は」


 


 少し間を置く。


 


「夢を諦めた人間でした」


 


 武道館が静かになる。


 


「会社で働いて」


 


「普通に生きて」


 


「音楽とは関係ない人生を送っていました」


 


 客席の誰かが頷いている。


 


「でも」


 


 私はメンバーを見る。


 


「この四人に出会って」


 


 少し笑う。


 


「もう一度、夢を見てもいいと思えました」


 


 胸の奥が熱くなる。


 


「だから」


 


 客席を見る。


 


「もし」


 


「夢を諦めた人がいたら」


 


 私は強く言った。


 


「もう一度始めてください」


 


 武道館は静まり返っている。


 


「夢は」


 


 私は言った。


 


「何歳でも、始められるから」


 


 一瞬の沈黙。


 


 そして。


 


 大きな拍手が起こった。


 


 歓声。


 


 拍手。


 


 それは、さっきよりも大きかった。


 


 真琴がドラムスティックを掲げる。


 


「ラスト!」


 


 歓声が爆発する。


 


「行くよ!」


 


 ドラムが鳴る。


 


 ギターが走る。


 


 ベースが響く。


 


 私は歌った。


 


 全力で。


 


 声が枯れても。


 


 息が切れても。


 


 最後まで。


 


 曲が終わった瞬間。


 


 武道館が揺れた。


 


 歓声。


 


 拍手。


 


 叫び声。


 


 そして。


 


「アンコール!」


 


「アンコール!」


 


「アンコール!」


 


 私は涙をこらえた。


 


 真琴が笑う。


 


「由紀」


 


「はい」


 


「夢叶ったね」


 


 私は首を振った。


 


「まだです」


 


 真琴が少し驚く。


 


 私は笑った。


 


「ここが」


 


 客席を見る。


 


「スタートです」


 


 真琴は大きく笑った。


 


「いいね」


 


 ドラムスティックを回す。


 


「じゃあ」


 


 メンバーを見る。


 


「続きやるよ」


 


 私はマイクを握る。


 


 もう迷わない。


 


 夢は終わらない。


 


 音楽がある限り。


 


 私たちは進む。


 


 その先へ。


 


 もっと遠くへ。


 


 武道館の光の中で。


 


 私は、歌った。


 


とりあえずおしまい。


最後まで読んでくれてありがとうございます。


読んでくれる人がいっぱいだったら…


その時に続きを考えます。


明日羽

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