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10歳差の男の子との恋の始まりは彼からの人生相談

別に、10歳年下の男の子をこちらからたぶらかしたわけじゃないのよ。悩んでいる彼の気持ちに寄り添って話を聞いてあげただけなんだよね。それだけなのに、なんで恋がはじまっちゃったんだろう。

 出会いは、チャットルームでの悩み相談だった。さみしいからという理由で立ち上げていたオープンチャットに彼が入ってきて、悩み事相談を受けたのがきっかけだった。わたしも人間だ。困っている人の助けになりたい。けれども、年頃の女が若い男の悩み事相談を受けるときは本当に注意したほうがいい。きっと大学生の頭の中でいろんな脳内物質がどくどく出たりしておかしくなってしまったのだろう。そして、彼はわたしに恋をした。それもまだ会ったことのないわたしに。 彼から好きだ。会いたい。そういう心を求める言葉がでてきたのは本当に本当に初めのうちだけだった。次第に彼の言葉は彼の欲望の言葉に切り替わっていった。セックスしたい。やりたい。やらせてほしい。いくらわたしが30歳の大人の女性であっても、いくら彼が未熟な大学生だったとしても、わたしだってやっぱり女だ。心を無視されて体だけを求められたのではやってられない。心が傷つく。心の話がしたいのだ。

 わたしは30年間女をやっていて、いまだけではなく意図せず自分の存在を欲望の対象と捉えられることがなんどかあった。男兄弟に大事にされて育ってきたからなのだろうか、男友達との距離の取り方がおかしかったのだろうか、なぜかよくわからない。自分で言うのもおかしいが、特にわたしは美人なほうでもない。容姿は普通くらいで、ひとによってはかわいいと思われる。初対面の人にかわいいと言われることも少なくはなかった。でも、スタイルだってそんなによくはない、おなかはちょっと出ているし、足もぱんぱんだ。胸だって小さい。母親くらいの年齢の女性警察官にいちど相談したことがある。そうしたら「そういうときは男性との間に物理的な距離を取りなさい」と言われた。男性が欲情しておさえられなくなったときに、トイレに行くとか家に帰るなどして距離を置くのがいいそうだ。距離を置かれるとさすがに男性もそれ以上は何もできない。そうやってわたしはは自分の心を無視され尊厳を傷つけられることから自らを守ることができるのだ。


 不思議に思えるかもしれないが、わたしも彼に恋をしていたのかもしれない。メールだけのやり取りしかしていないのに、わたしに恋をしていると言ってくる彼がどんな人なのか、どうしても知りたいという欲求がおさえられなかったのは確かだ。愚かだったのかもしれない。しれないのではなく、ほんとうに愚かだった。チャットによる相談を受けている日々、ある日、彼からメールが届いたのだ。今日は朝から心臓がバクバクいって苦しい、と。彼はメジャートランキライザーを飲んでいて、その副作用で動悸がすることがあると説明した。薬の飲み忘れがあったりすると、心臓がバクバク言うことは決してめずらしくはないのだという。その場合はちゃんとかかりつけの医者に相談するべきなのだ。だからわたしが彼にあの日会いに行ったのは、ただの余計なおせっかい。ほんとうにいまとなってはなぜわざわざ自分から彼に会いに行ってしまったのだろうかという後悔しかない。彼は体調不良をわたしにメールで知らせることによって、心配させたかっただけなのだ。なのにわたしは遠距離に住んでいる彼に会うために、朝から電車に乗って待ち合わせの場所に向かったが、到着したのは夕食の時間の近くだった。遅れてやってきた彼は思ったより小さくて痩せていた。わたしと一緒に安い定食屋で質素な食事をとり、カラオケへ向かった。一生懸命に盛り上げようとしている姿を見せたが、わたしのテンションは下がっていった。実際に目の前に現れた大学生の彼は、幼く、自己中心的な男だった。こちらに対する配慮はない。大学生でももっと周りに配慮ができるタイプの大人の男性であればこちらもその気になったが、なんだか行動や会話のすべてが自分よりで、これからどこに行くか決めるときもこちらの以降は気にせずに勝手に決めた。あからさまにつまらなさそうな態度をとっているわたしに「ごめんねつまんなくして」と言って、急にキスをしてきた。おいまて、まだ出会ったばかりだぞ? なかなかなれなれしいなこいつと思い、体を思い切り離すと、「ごめん」と謝ってきた。「でも、彼女とせっかく会えたのにキスもできないなんていやじゃない?」と続けた。嫌なのはこっちだ。それに彼女ってだれだ? わたしのことか? もうこいつと一緒にいるの嫌すぎて今すぐ帰りたい! 交通費を返せ! 怒りで言葉がでなかった。大体から出会って1時間も経たない女にキスするなんて節操ないんかこいつ。カラオケ屋を背にして怒りに任せてわたしは駅へ向かった。


ネットでしかやり取りしてないとどんな人なのかもわからないうちにこちらの勝手な想像で作り上げた人物像に恋をしてしまったり、なんだか現実の恋とちょっと違うネット恋愛に戸惑うわたし。

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