第6章 巨大なオオカミ
薄暗い森を旅していると、突然空の鳥たちが狂ったように飛び回り、それと同時にものすごく大きな咆哮が響き渡った。その咆哮のせいで鳥たちが慌てて飛び去ったのだと気づいた。
師匠はすでに「警戒を怠るな」と言っていた。俺は怖かったが同時に興奮していた。こんな感覚も状況も初めてだったからだ。
そして魔獣が現れた。師匠はそれを「巨大な狼」と呼んでいた。 その瞬間、師匠と初めて戦った時でも、初めてあの巨大な狼の咆哮を聞いた時でも感じなかった感覚が俺の中に芽生えた。
そ…れは「嬉しい」という感情だった。
胸の奥がざわつく感覚は収まらなかった。新しくて、今まで感じたことのないものだった。俺が望んだことはただ一つ。
"
「この魔獣と戦うこと」だった。
「おい子供たちどけ、あの魔獣は俺がやる。」
師匠は剣を抜きながらそう言った。
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その言葉を聞いた瞬間、俺の中に別の感情が湧いた。それは…
«Enojo»
「怒り」だった。
俺は師匠に怒っていた。別に悪いことをされたわけじゃない。でも、あの時点でわかっていた。「どけ、俺がやる」と言われることが。
だから俺は師匠に言った。「心配ない、俺があの魔獣と戦う」と。
もちろん簡単に許してくれるとは思っていなかったけど。
「はあ…?お前頭おかしいのか?ガキがあの魔獣に挑むつもりか。」
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「そんなこと許すと思ってるのか。」
危険なのは分かっていた。でもそれでも退く気はなかった。俺はあれに挑まずにはいられなかった。子供だから危険を考えられないだけかもしれない。それでも俺は戦わなきゃいけなかった。
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「師匠、危険なのは分かってる。見てるだけで鳥肌が立つ。でもだからこそ戦いたいんです。戦わないなら、そもそも宮殿を出る必要なんてなかった。毎日楽しく過ごしていればよかったんです。」
「おいガキ、俺を問い詰めてるのか?いや、むしろ説教されてるみたいだぞ。」
「へへへ、そんなこと言わないでくださいよ師匠。」
「そうだよおじい……」
「子供たち避けろ!」
危ねえ…あの魔獣もそろそろ我慢の限界らしいな。
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「そ…そうだねおじいちゃん、私も戦いたい。」
「お前もか…なんてこった。…わかった、お前は色んな属性を扱えるしな。戦わせてやる。ただし、お前たちは小さい方を倒せ。そんなに言うなら俺が巨大な狼を相手して時間を稼ぐ。傷はつけず最後に渡してやる。今回だけは初めてだから特別だ。全力を尽くせ。」
それで俺たちは小さい魔獣たちを相手にし、師匠は巨大な狼を「遊び相手」にしていた。あのじいさん本当に自信家だ。羨ましいくらいだ。
「よしリリア、遠距離は任せた。俺は近距離で行く。」
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「うん。」
強化された木剣でも魔獣にはなかなかダメージが入らなかった。そこで俺は思いついた。木剣に魔力、いや俺の属性である「風」を纏わせる。そうすれば遠距離でも攻撃できる。もちろんリリアほど上手くはないが、宮殿での2年間の修行を試す時だった。俺は飛び込んで斬りつけた。よく斬れる部分とそうでない部分があった。
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そこが弱点なんだろう。
...
「おいお前ら終わらせる気ないのか、俺死にそうなんだが…」
「死にそうって何ですか師匠?」
「いや…退屈でな。」
それを聞いた瞬間、俺は残りの魔獣を倒し切った。そして次はあの大物だ。待ちきれなかった。難しいのは分かっていた。でも退く気はなかった。
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「よしリリア行くぞ。」
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「うん。」
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そして師匠は遊ぶのをやめ、巨大な狼をこちらへ誘導した。
巨大な狼は俺たちに飛びかかってきた。俺たちはギリギリで避けたが、その踏み込みの圧で俺の頬が切れ、地面の葉も吹き飛んだ。あいつは再び、今度はさらに獰猛に攻撃してこようとしていた。
突進してきた巨大な狼を、リリアが魔力の盾で俺たちを守った。それでも衝撃は強く、近くの木々が切り裂かれた。俺は他の魔獣みたいに木剣で攻撃できなかったので、リリアと一緒に魔法を使うしかなかった。リリアは本当に上手い。「上手い」じゃ足りないほどだ。詠唱なしで魔法を撃てるし俺もできるけど、だからといって俺が彼女より上というわけじゃない。
魔法を撃ち合っている時、信じられないことが起こった。俺の風属性とリリアの火属性が触れた瞬間、まるで融合したかのように火の魔法が大きくなったのだ。
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この二つの属性は本当に相性が良いのだと思った。だから俺はリリアに「動きを止められる魔法」を頼んだ。するとリリアは魔獣の足元の地面を沼地に変えた。魔獣が抜け出そうとしている間に俺たちは風と火の合体魔法を溜め、抜け出した瞬間に撃ち込んだ。炎と風がその体を焼き裂き、こうして俺たちは勝利した。
「はははは!ガキ、お前すげえな。」
「よくやった、お前ら。」
こうして俺たちは初めての戦いに勝利した。だが、もちろんこの旅の危険がこれで終わりというわけではなかった――。




