第12章:リリア・マーヴィル
—アイト、大丈夫か? どうしたんだ?
—し……死んでる……
—師匠、どうして殺したの?
—…
(ゼキンの心の声)
まあ、人間が死ぬのを見るのは初めてだろう。無理もない。
—おじいちゃん、とにかく早くここから出よう。
—ああ。
洞窟の中から連れ出され、通路を歩いていくと――
壁のあちこちに血しぶきと染みが残っていた。
師匠はここにいた連中を全員殺していた。
そして一人や二人ではなく、大量の人だった。
洞窟の至るところに死体が転がり、全てがズタズタで、
腐臭にも似た匂いが充満していて、耐えられなかった。
人生でこんな光景は見たことがなかった。
吐き気が止まらず、実際あの男が殺された時にも吐いていた。
体が変な感覚で、もう自分じゃなかった。
洞窟を出た瞬間、ほんの少しだけ息ができた気がした。
だが外にもまだ死体がいくつか転がっていた。
そして既に夜になっていた。
多分、昼からずっと訓練して、蛇の化け物と戦って、
その後に拉致されて……時間の感覚が無くなっていたのだと思う。
とにかく早く宿に戻らなきゃいけなかった。
その前に師匠は服を脱いで血を洗い落とした。
宿に着くともう修理されていて、昨夜と同じように人で賑わっていた。
そしてまた昨夜とは別の連中が師匠に絡んできた。
だが昨夜絡んできた別のグループが止めに入り、
「関わるな」と忠告したが、聞かずに殴りかかり、
結局そいつら同士が喧嘩を始めた。
俺の頭の中にはまだ洞窟の光景しかなかった。
その夜、俺は何も食べず、何も話さなかった。
リリアにも、師匠にも……誰にも話さなかった。
心が完全に乱れていた。
師匠も俺に何も言わなかった。
多分、悪化させたくなかったんだと思う。
でも俺は聞きたくなかった。
怒りと混乱でいっぱいだった。
そして俺たちは一言も話さずに夜を越した。
リリアは慰めてくれたし、励ましてくれたけど、
俺は何も返せなかった。
別にリリアに何かあるわけじゃない。
ただ言葉が出てこなかった。
それだけだ。
そして翌朝になっても空気は重いままだった。
本当に説明できないほど気まずかった。
二人は下に降りて食べ物を買ってきた。
師匠は周囲に気を張りながら、俺にも食べさせようとしたが、 俺は食べられなかった。
—アイト、食べなよ。無理なら私が食べさせてあげる。
—…
—よし、口開けて。
—そんなに自分を追い詰めないで。
食べなきゃ訓練もできないでしょ。
だから口開けて。
—私だって……悔しいし、辛いんだよ。
—でもだからって食べない理由にはならない。
だから食べて。
—俺は師匠に怒ってるんじゃない。
俺自身に怒ってるんだ。
あの時、師匠が戦ってる間……
俺は何もできなかった。
リリアも、自分も守れずに……
それどころか捕まったんだ。
勝てないのはわかってたけど、それでも……
姉さんだったら何かできてた。
そう思うだけでムカつくんだ。
リリアはそっと俺を抱きしめて言った。
—じゃあ強くなればいい。
もう二度と、そんな気持ちにならないように。
その瞬間、俺は少しだけ笑えた。
リリアは同い年のはずなのに、
二つか五つ年上みたいな気がした。
その抱きしめ方は……
母さんみたいに暖かかった。
ごちゃごちゃしていて本当に申し訳ありません。許してください。




