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プロローグ3

 そこで待っていたのはひとりの美女であった。天使のような羽が生えている。


「ようこそお出でくださいました。平田茂樹様。あなたはこのダンジョンの、世界初の踏破者となりました」


 美女は言った。


「ダンジョン? 何の話だ? ていうかあんたは一体誰なんだ?」


「申し遅れました。私は女神です。あなたは、世界初のダンジョンクリア……しかも世界最難関のSSSダンジョンをクリアした初めての人なので、こうして現れたのです」


「ダンジョンって……そんな小説とか漫画じゃあるまいし」


「覚えていませんか? つい先ほど、世界中で地震がありました。それと同時に世界各地にダンジョンが出現したのです」


 ああ、あれか……俺が巻き込まれたあの地震。あれはダンジョン出現の合図だったようだ。


「本来ダンジョンは一層から最奥までボスを倒しつつ進むものでしたが……」


「でしたが?」


「あなたの会社に、ちょうど重なるようにダンジョンが出現したのです。その影響か……高い場所にいる人ほど、深い階層に放り込まれてしまったようで……」


「俺は最上階にいたから、逆にダンジョンの最下層に落ちた……ってことか?」


「そうなります。しかもここは難度SSSの最難関ダンジョン……本来ならば、100層の攻略が必要なのです」


 それを飛び抜けてしまったのか。そりゃ、世界最速クリアにもなる。


「ですので、クリア特典としてあなたにだけ、特別にどんな願いも叶えて差し上げます! 私はそのために、ここにやって来ました」


 最速クリア……しかもSSSの最難関ダンジョンならば、それくらいの特典はしかるべきと言ったところだろうか。

 棚ぼたとは言え、ありがたい。貰えるものは貰っておこう。約30年生きてきて、いいことなんて数えるほどだった俺だったが、どうやら風が向いてきたようだ。


「だが、その前に聞きたいことがある」


「なんでしょう。この際です。どんな質問も受け付けますよ」


「ああ。なら、俺のあの魔王を倒した力……あれはなんだ? ダンジョンが現れたことと関係あるのか?」


「あれはダンジョンとは関係ありません。あれは、あなた自身の力ですよ」


「俺自身の……?」


 どういうことだ?


「あの力はあなたが特別な人間の証。あなた自身に眠っていた力なのです。どうやら危機によぅて解放されてしまったようですね」


「あんな力を……俺が……?」


「はい。私にも詳しくはわかりませんが、あの黒き竜はあなたの意志によってどんな敵だろうと討ち滅ぼす力となりましょう」


 そんな危険な力が俺の中に眠っていたとは……

 会社で仕事をしていた時、何度殺意を抱いたか。下手したらその時に暴発していたかもしれないな。


 とにかく、俺にこの竜の力があることはわかった。この力があれば、ダンジョンが現れたこの世界でも楽に暮らして行けそうだ。


「わかった。これが俺の本当の力だと言うなら、俺として遠慮なく使わせてもらう」


「はい。それで、どういたしますか? 巨万の富も、絶世の美女も、心踊る冒険も、あなたの思うままですよ? 望むすべてを、今のあなたは手に入れられます」


 それはとても魅力的な響きだった。

 今までの抑圧された人生。自分の思い通りにいかなかった毎日……本当の自分を圧し殺して生きていた。

 だが、もう迷うことはないのだろう。


「俺は……やり直したい」


「やり直す……ですか?」


「ああ。またイチから人生をやり直して、今度こそ本当の俺として生きたい。お金も女の子も、俺には必要ない。ただ、今までの空虚な人生……それをなかったことにして、俺は俺の人生を過ごしたい」


 語ってしまった。初対面の人に、こんな話をするのは少し恥ずかしい。が、これが俺の嘘偽りのない本心だ。


「感激いたしました~!」


 見ると、女神が涙を滝のように流して感動していた。


「なんと欲がなく、高潔なお人でしょう! 今時珍しいです! わかりました! 私が誠心誠意、あなたの転生のお手伝いをして差し上げます!」


「転生? できるのか?」


「はい! 記憶と力はそのままに、最高の家庭で、新たな人生を過ごしていただけます!」


「……ありがとう」


「いえいえ! そうですね……ついでに、ダンジョン関連でチート能力もいくつか与えて差し上げます」


「え? 別に俺は……」


「いいのです、いいのです! 私からのほんの気持ちです! 今時あなたのような素晴らしい人物はそうそういませんからね~」


 俺自身が持っていたこの竜の力だけで十分だったが……ありがたく受け取っておこう。


「よし! 準備ができました! 心の用意はいいですか!?」


「ああ、やってくれ」


「はい! では、よき人生を!」


 俺の全身が光に包まれる。ああ……ここから俺の、本当の人生が始まるのか……


 そして、俺の意識はそこで途絶えた。

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