第119話 祖父と祖母
聖君の車に、私、母と、ひまわりまでが乗り込み、祖父の家に向かった。私は気持ちが悪くならないようにと、助手席に乗せてもらった。
聖君の運転は本当に上手で、止まったり、動くとき、すごくスムーズだ。本当に、本当にこの人って、やることなすことが全部スマートだから、かっこいいっていうのを通り越し、羨ましくもある。
だけど、妊娠中は、運転が上手な彼でよかったと、心からそう思った。
後ろでは、母とひまわりが、わいのわいの話していた。
「おじいちゃん、もうお姉ちゃんに赤ちゃんがいること知ってるの?」
「まだよ。きのうの電話では、桃子のことでお願いがあるとしか言ってないから」
「お願いがあるなんて、言っちゃったの?」
「ああ、あなたには話してなかったっけ。桃子の高校のことでね、ちょっとお願いしようと思ってることがあるのよ」
「ふうん」
ひまわりはそれ以上はつっこんで聞かずに、
「聖君って運転上手!」
といきなり聖君に話しかけてきた。
「そう?サンキュー」
聖君はバックミラー越しにひまわりを見て、にこりと笑って答えた。
「聖君ってさ、何をやらせても完璧じゃない?完璧な彼氏を持つって、どんな感じなの?お姉ちゃん」
「え?」
今度は私に質問?
「どうって…」
私はちょっと黙り込んだ。聖君はちらりと私を見て、何を私が言うか、待っているようだ。
「信じられない…感じ?」
と私が言うと、
「何を?」
とまた、ひまわりが聞いてきた。
「だから、そんな彼氏がいることが信じられない」
私がそう言うと、聖君は横で、え?って顔をしてから、またそんなこと言ってるって、そんな感じの呆れた表情をした。でも、後ろの二人が、
「ほんと、そうよね」
と思い切り同意したので、また聖君は、え?!って顔をした。
「桃子にこんな彼氏ができるとはね」
母が言うと、
「彼氏じゃないね、もうすぐ旦那様だ」
とひまわりが言った。
「だ、旦那様?」
私はオウムのように、その言葉を繰り返し、真っ赤になった。
「じゃ、桃子ちゃんは俺の奥様」
と聖君は思い切りにやつきながら、そうつぶやいた。
「奥様は18歳って、ドラマ、リメイクのリメイクくらいでやってたの知ってる?」
母がそう言った。
「あのドラマは、奥様はまだ高校生で、その高校の先生と結婚してるんだけど、それを世間には隠して、生活をしているっていう、なかなか昔のドラマにしては、斬新なストーリーだったわね」
「へ~~、知らない。そんなの」
ひまわりが答えた。
「みんなに隠してるんすか?」
聖君がちらっとバックミラーを見て、聞いた。
「校長だけは知ってたわね」
「へえ。面白いすね、そのドラマ。観てみたいな。あれ?でも、桃子ちゃんだって、奥様は18歳じゃん。あ、まだ17歳か!」
「そうね~~。あのドラマよりも若いのね」
母はそう言うと、くすくすと笑っていた。
昨日、一回は反対をした母とは思えないような、楽天家ぶりだ。これが本当の母の姿なんだろうな。
「高校、やめちゃうの?」
ひまわりがいきなり、そう聞いた。
「だからね、ひまわり。これからどうやったらやめないですむかを、おじいちゃんと考えようと思っているのよ」
「それが今日行く目的?」
「そうよ」
「わかった。私も何かできることがあったら言ってね、お姉ちゃん。私は二人の味方だから!」
ひまわりは力強くそう言ってくれた。横で聖君は、
「たのもしいな」
とにこにこ笑っていた。
祖父の家に着いた。すぐさま、玄関に祖父と祖母が現れた。
「いらっしゃい」
二人で、私たちを出迎えてくれ、家の中に入ると、祖母が、
「まあ、この人が桃子ちゃんの彼氏?」
と聞いてきた。
「榎本聖です。はじめまして」
聖君は二人に、ぺこってお辞儀して挨拶をした。
「玄関で話もなんだから、あがってちょうだい」
祖母に言われ、
「お邪魔します」
と丁寧に言うと、聖君は家にあがった。
ひまわりはさっさと、リビングに行き、ソファーにふんぞり返っていた。
「ひまわり、あんたはちょっと端っこに座りなさいよ」
母にそう言われ、
「は~~い」
とひまわりは、ソファーから下りてクッションを持ち、部屋の隅に行き、ちょこんと座った。
「さ、桃子と聖君はここに座って」
母は私と聖君を二人がけのソファーに座らせた。
「今、お茶を持ってくるわね」
祖母は嬉しそうに、リビングを出て行った。
「君が聖君か。いや~~、こりゃ驚きだな」
祖父がそう言うと、
「え?なんでですか?」
と聖君が聞いた。
「こんなにまで、男前だとは思ってもみなかったからな」
「え?」
聖君は返答に困ってしまっていた。
「桃子ちゃんは面食いなんだな~」
祖父はそう言うと、はっはっはと笑っていた。
「さあ、どうぞ、お茶と、クッキーを持ってきたから良かったらつまんで」
「あ、いただきます」
聖君はそう言うと、お茶を一口飲んだ。
「ほんと、かっこいいし、しっかりしてるのね」
祖母が椅子に腰掛けながらそう言った。
「え?いえ。あの…」
また聖君は返答に困っていた。
「そうでしょ?お母さんもお父さんもそう思うでしょ?」
いきなり母が身を乗り出し、話し出した。
「それでね、ここからはいきなり本題。実はお父さんに、私と一緒に桃子の学校に行ってほしいのよ」
「学校?」
祖父が聞き返した。
「校長先生に会ってもらいたいの」
「僕がかい?またなんで?」
祖父が不思議がると、
「お父さんからも、校長先生を説得してほしいからよ」
と、母はものすごく真剣な表情でそう言った。
「説得?何か、桃子ちゃん、しでかしたのか?」
祖父は落ち着いた顔でそう聞いてきた。
「しでかしたというか、その」
母が話すのを躊躇していると、聖君が、息をすっと吸い込んで、
「桃子ちゃんと俺、結婚するんです」
といきなりそう言い出した。
「え?結婚?ほ~~。それは、いつ?」
祖父はまだ、冷静だ。祖母は、ちょっと慌ててるようで、持っていたクッキーを落っことしていた。
「すぐにでも、籍は入れたいと思っています」
聖君がそう言うと、祖父はまた冷静に、
「桃子ちゃんが、妊娠したのかな?」
と聞いてきた。
「するどい、さすがお父さん」
母がそう言うと、横で祖母が、
「え~~~~?!」
と大声をあげ驚いて、目を白黒させた。
「そうか、そういうことか」
まだ祖父は、冷静だ。
「も、桃子ちゃんが?この、桃子ちゃんが、妊娠?」
祖母は立ちくらみでもしたのか、真っ青になりふらっと倒れそうになった。
「お母さん」
母が祖母を慌ててささえた。
「信じられないわ。まだ桃子ちゃんは高校生なのよ?聖君って言ったっけ?」
祖母は聖君の方を睨みつけると、
「あなた、何を考えてるの!大事な大事な桃子ちゃんに、なんてことをしてくれたの?!結婚なんて反対よ!ええ!絶対に反対!!」
と怒鳴りつけた。
「……」
聖君は目を点にして、驚いていた。私もだ。
「いつものおばあちゃんじゃない」
ひまわりが後ろからぽつりとそう言った。
「お母さん、そんなに興奮したらまた、ぎっくり腰になっちゃうわよ」
母がそう言ってから、
「それに、その台詞、私の時にも同じこと言ったわよね。桃子を妊娠して結婚するって決めたとき」
とちょっと、ため息混じりに続けた。
「え?」
祖母が母を見た。
「だけど、生まれたらめちゃくちゃ可愛がったじゃない。いきなり手のひら返したように、うちにどんどん連れてきなさいとか、旦那にも愛想よくなっちゃってさ。覚えてないとは言わせないわよ」
「……そうだったかしら」
祖母のその言葉に、祖父が隣で苦笑していた。
「ああ、私がなんで桃子に反対したかわかったわ。お母さんに反対されたときの言葉を、覚えてたんだ。同じことを繰り返すところだった」
「え?」
「あの時は、お父さんだけ賛成してくれたのよね?お姉さんも結婚してないのに同棲して、妊娠までして、何考えてるのって責めたし。けっこう辛かったな」
そんなことがあったんだ。
「そう、よかったわ、あの時のこと思い出して。同じ思いは桃子にさせたくない。私も旦那も結婚には賛成してるのよ、お母さん」
「あんた、何を無責任なこと言ってるの?結婚や子育てが大変なのは、あんただって知ってるでしょう?」
「知ってるわよ。お母さんがいてくれて、すごく助かったことも、それも感謝してる。だから今度は、私が桃子の助けをするの」
「え?」
「旦那も、ひまわりだっているし、聖君の家族も、結婚に賛成してくれてるし、桃子の助けになろうとしてくれてるの。これだけ周りに、桃子のことを助けようとしてる人がいるんだもの。絶対、大丈夫」
「大丈夫じゃないわよ。高校はどうするの?」
祖母はまだ、顔をしかめている。
「だからそれを、どうにかしようと思って、僕のところにきたんだろう?」
祖父がやわらかい表情でそう言った。
「そうなのよ、お父さんの助けがいるの」
母が真剣な顔で、祖父に身を乗り出しそう言った。
「あの!」
聖君はさっきから、話をしたくてうずうずした表情でいたが、とうとう話を切り出した。
「俺、いえ、僕は生半可な気持ちで結婚を考えてるわけじゃないんです」
聖君がそう言うと、祖母も祖父も聖君をじっと見た。
「桃子ちゃんとは結婚も考えてたし」
「あなた、いくつ?」
「18歳です」
「大学生?」
「はい」
祖母の質問に聖君が答えると、祖母は、
「あなた、その年齢で結婚なんて、考えられるわけないじゃないの」
と、ものすごくクールにそう言った。
「お母さん、世間一般的にはそう思うかもしれないけど、聖君は違うのよ」
母が横から口を挟んだ。
「聖君、ものすごく桃子を大事にしてるの」
「大事にしてたら、なんで妊娠なんてさせてるの?!」
祖母が怒った顔でそうきつく言った。
「……」
母は黙り込んで、ちらりと聖君を見た。
「あ…」
聖君はぼりって頭を掻くと、
「ちゃんと、その避妊はしてたんですけど」
と言いにくそうに話し出した。
「でも、僕は本気で結婚も、桃子ちゃんと家庭を持つことも望んでいたので、それがこんなに早くに叶っちゃったのかな~~と、思って…ます」
聖君は、自分でも変なことを言っていると思ったのか、最後のほうは声が小さくなり、下をむいてしまっていた。でも、
「はっはっはっは」
と祖父が大笑いをしたので、聖君は驚いて、顔をあげた。
「あなた、何をのんきに笑ってるの?」
祖母がそう聞くと、
「面白いとは思わないかい?聖君は面白いことを言う」
と、祖父はまだ笑いながらそう答えた。
「面白いってどこが?」
祖母は半分呆れた顔だ。
「聖君の夢だったわけだろう?桃子ちゃんと結婚することも、子供も。それが叶ったというんだから、面白いじゃないか」
「ええ?」
祖母はわけがわからないという顔をしていたが、母は、
「そうなのよ、これは旦那も希望していたことだから、喜んでいたわ」
と話に割り込んだ。
「ほう、耕平君のかい?」
耕平というのは、父の名前だ。
「聖君が息子になるのを、ものすごく喜んでいるから」
「はっはっは、これまた傑作だ」
「あなた!何がおかしいの。それに耕平さんがそんなことを言うとも思えないわ。それ、本当のことなの?彼なら思い切り、反対しそうじゃないの」
祖母がまた厳しい表情でそう言った。
「そう思うでしょ?私もそう思ったの。でも、まったく動じず、賛成しちゃったのよね。それに喜んじゃって、昨日妊娠してることも、結婚するってことも知ったんだけど、夜は上機嫌でお酒飲んでいたし、ね?ひまわり」
「うん!お父さん、すんごく喜んでた。孫ができるのか~~とか、聖君が息子か~~とか、嬉しそうに言ってたよ」
母に聞かれて、ひまわりもそう答えた。
「嘘でしょう?」
祖母は驚いて目を丸くしていた。
「それだけ、耕平君に信頼されてるわけだな、聖君は」
祖父はもう笑っていなかった。真剣な目で聖君を見ると、そのあと優しい目になっていた。
「はい。僕もそれは感じてます。だから、すごく嬉しいです。桃子ちゃんのお父さんとは、何度か釣りに行っていますが、すごく気が合うというか、あ、これ、僕が言うと生意気ですよね」
聖君はそう言うと、ぼりって頭を掻いた。
「そうか、耕平君と釣りに行ったのか。僕もね、一回誘われたんだけど、あまり釣りには興味なくってね。逆に絵画展に行くことや、絵を描くことを誘ったんだが、それは耕平君の方が興味なくって、僕らはあまり、気が合わなかったようでね。あ、でもけして仲が悪いわけじゃない。たまに将棋や碁を付き合ってもらってるしね」
「俺、絵、興味あります。絵を描くことも嫌いじゃないです。ただ…」
「ん?ただ、なんだい?」
聖君が途中で黙ったので、祖父が聞くと、
「ただ、俺、いや僕は、相当、独創的な絵を描くらしくて、学校の先生にはわかってもらえなかったようなんです」
「はっはっは」
また祖父は大笑いをした。
「僕も学校で美術の先生をしていたが、生徒の一人一人が、それぞれすばらしい才能を持っているのに、評価をしたり、差をつけることが変だと思ってね、やめてしまったんだよ」
「え?そうだったんですか」
聖君はちょっと驚いた表情をした。
「君が行っていた学校の先生でも、本当は君の才能をかっている人もいたかもな。ただ、成績をつけなくてはならないとなると、無難な評価をせざるを得ないときもあるんだよ」
「あ、そっか」
「僕は興味あるね、その独創的な絵。今度描いてみないか?」
「はい、ぜひ!」
聖君は目を輝かせた。
「はははは。なるほど。そんな目で話をされられたら、好きになってしまうのもわかるな~。耕平君が君が息子になって嬉しいと言うのも、納得できるよ」
「え?」
聖君はまた、驚いていた。
「君は人を魅了する何かを持っているね。僕もこれから君にかかわっていけるのが、楽しみだ。さて、桃子ちゃんの高校にはいつ行くとするかい?」
祖父はいきなり、母の方を向き、話を変えた。
「あ、そうね。まだ、産婦人科で調べてもらってないから、その結果がわかってからかしら」
「それはいつわかるんだい?」
「明日行こうと思ってるのよ」
「そうか。さてと…。一つ忘れていたことがあった。それも大事なことを」
祖父は今度は私の顔を見た。
「え?」
私が何だろうという顔をしていると、
「桃子ちゃんは、聖君と結婚したいのかい?子供も生みたいのかい?」
と祖父はすごく丁寧に聞いてきた。
「う、うん。もちろん」
いきなりそんなことを聞かれ、びっくりしたが、私は思い切りうなづいた。
「そうか」
「桃子ちゃん…でもね」
祖母は何かを言おうとしたが、祖父が、
「もういいじゃないか。桃子ちゃんが望んでることだ。僕たちも協力してあげよう、ね?」
と祖母に言ってくれた。祖母はまだ、納得していないようだったが、黙り込んだ。
「桃子ちゃん、じゃあ、これから君は高校生活を送っていきたいかい?妊婦の身で高校に行くのは大変だし、いろいろと周りから言われるかもしれないよ?これから、高校を卒業できるよう、頼みに行こうとは思うが、それを桃子ちゃんが望まないのなら、行ってもしかたのないことだからね」
祖父はすごく冷静にそう聞いてきた。
「うん。もし卒業できるならしたい。学校には大切な友達もいる。一緒に卒業まで過ごしたいって思ってるよ。それに、もし何かを言われたり、大変だったとしても、その友達がいるから大丈夫だと思う」
「菜摘ちゃんや、蘭ちゃん?」
母が私に聞いてきた。
「うん」
「そうね、あの二人なら、絶対に桃子を守ってくれるわ」
「そんなに桃子ちゃんのことを大事に思ってくれる友達がいるの?」
祖母が聞いてきた。
「そうなのよ。二人ともいい子で」
「菜摘は僕の妹です」
聖君がいきなりそう言った。
「え?あら、そうなの。それで知り合ったの?」
祖母に聞かれ、
「いえ、そういうわけじゃないんですけど…」
と聖君は説明に困ってしまっていた。
「その…、菜摘は本当に、桃子ちゃんのことを大事に思っています。蘭ちゃんもです。見ててすごいなっていつも思うくらい、友達思いなんです。あ、もちろん桃子ちゃんも、すごい友達思いですけど」
聖君はきらきらした目で、祖母にそう言った。
祖母はしばらく、そのきらきらした目に見入ってしまってるようだった。
「あ…」
と、我に返ったように、祖母は言うと、
「聖君は、桃子ちゃんのどこが好きになったの?」
と突然そんなことを言い出した。
「えっと、どこって…。実は全部なんですけど」
「全部?」
祖母はびっくりして聞き返した。
「はい。桃子ちゃんと出会って、桃子ちゃんを知れば知るほど好きになって、どこをとっても可愛くって…。えっと、あれ?俺、なんか今、すごく恥ずかしいこと言ってるよね?」
聖君は私の方を見て、真っ赤になっていた。
私までつられて、真っ赤になった。すると今度は祖母が私に、
「じゃ、桃子ちゃんは聖君のどこが好きなの?」
と聞いてきた。
わ。やっぱり私にも聞いてきた~。すごく私は恥ずかしかったけど、
「全部」
とそれだけを言った。恥ずかしくて、それだけ言うので、精一杯だった。
「全部?あなたも?」
「うん」
私はコクンとうなづいた。隣で聖君が、照れくさそうに私を見ていた。
「ラブラブ~~」
と後ろでひまわりが、ひやかした。
「これ、ひまわり」
と母がひまわりを怒ったが、まったく動じずに、
「私もね、聖君のことが大好きなんだよ、おばあちゃん。だから、お兄ちゃんになるのがめっちゃ嬉しいの!それに、ずっとそれを願っていたの。絶対に、お姉ちゃん、聖君と結婚してって言ってたんだもん。ね?お姉ちゃん」
と、一気にそう言った。多分、今まで話がしたくてうずうずしてたんだろうな。
「まあ、そうなの?」
祖母がその言葉に、興味を持ったからか、ひまわりは図に乗り、祖母のすぐ横に来て、
「聖君ってね、とにかくすごいの。見てわかるとおり、イケメンだし、運転しても上手だし、スポーツ万能だし、ゲームしても強いし、それにやっさしいの!完璧なの!!」
と聖君を絶賛した。
それを聞き、聖君は慌てていたけど、母までが、
「そうなのよね。それに料理はできちゃうし、勉強はできちゃうし、できないことは何もないんじゃないかっていうくらい、完璧なのよね~~」
と嬉しそうに話していた。
聖君は横で、微動だに動かなくなり、真っ赤になっていた。あ、思い切り今、照れてる。
「はっはっはっはっは」
また祖父が笑った。
「でもそんなに完璧じゃ、ものすごくもてるんじゃないのかい?」
そう祖父が聞くと、ひまわりがまた、目を輝かせ、
「そうなんだよ、すんごいもてちゃうんだって。でも聖君は、お姉ちゃん一筋なの~~!そこがすごいと思わない?おじいちゃん!だからね、安心していいよ、おばあちゃん」
と二人に向かって、熱く語った。
「まあ、そうなの?」
祖母がまた目を丸くさせた。
ひまわりはその後も熱く熱く、どれだけ聖君や、聖君の家族が素敵かを、夏に泊まりに行ったときの話、クリスマス会の話などなど、べらべらと話して、止まらなくなってしまっていた。
聖君も私も、あまりにもひまわりが、機関銃のように話しているので、黙って聞いていた。ひまわりの話に、祖父も祖母も夢中になって耳を傾け、それを横で母も、嬉しそうに楽しそうに聞いていた。
「ひまわり、すごい」
私がぽつりと言うと、聖君はにっこりと笑って、
「ほんと、たのもしい助っ人だよね」
と私に耳打ちした。
ひまわりは本当に聖君や、聖君の家族が大好きなんだな。でも私だってそうだ。だから、あれだけ熱く語るのもわかる気がする。本当なら私が話さないといけないことかもしれない。でも、ひまわりがああやって語ってくれるから、みんなが聖君や聖君の家族のよさをわかってくれる。
ひまわりや、母を見ながら私は感動していた。それは聖君も一緒だったみたいだ。