表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/123

第119話 祖父と祖母

 聖君の車に、私、母と、ひまわりまでが乗り込み、祖父の家に向かった。私は気持ちが悪くならないようにと、助手席に乗せてもらった。

 聖君の運転は本当に上手で、止まったり、動くとき、すごくスムーズだ。本当に、本当にこの人って、やることなすことが全部スマートだから、かっこいいっていうのを通り越し、羨ましくもある。

 だけど、妊娠中は、運転が上手な彼でよかったと、心からそう思った。


 後ろでは、母とひまわりが、わいのわいの話していた。

「おじいちゃん、もうお姉ちゃんに赤ちゃんがいること知ってるの?」

「まだよ。きのうの電話では、桃子のことでお願いがあるとしか言ってないから」

「お願いがあるなんて、言っちゃったの?」


「ああ、あなたには話してなかったっけ。桃子の高校のことでね、ちょっとお願いしようと思ってることがあるのよ」

「ふうん」

 ひまわりはそれ以上はつっこんで聞かずに、

「聖君って運転上手!」

といきなり聖君に話しかけてきた。


「そう?サンキュー」

 聖君はバックミラー越しにひまわりを見て、にこりと笑って答えた。

「聖君ってさ、何をやらせても完璧じゃない?完璧な彼氏を持つって、どんな感じなの?お姉ちゃん」

「え?」

 今度は私に質問?


「どうって…」

 私はちょっと黙り込んだ。聖君はちらりと私を見て、何を私が言うか、待っているようだ。

「信じられない…感じ?」

と私が言うと、

「何を?」

とまた、ひまわりが聞いてきた。


「だから、そんな彼氏がいることが信じられない」

 私がそう言うと、聖君は横で、え?って顔をしてから、またそんなこと言ってるって、そんな感じの呆れた表情をした。でも、後ろの二人が、

「ほんと、そうよね」

と思い切り同意したので、また聖君は、え?!って顔をした。


「桃子にこんな彼氏ができるとはね」

 母が言うと、

「彼氏じゃないね、もうすぐ旦那様だ」

とひまわりが言った。

「だ、旦那様?」

 私はオウムのように、その言葉を繰り返し、真っ赤になった。

「じゃ、桃子ちゃんは俺の奥様」

と聖君は思い切りにやつきながら、そうつぶやいた。


「奥様は18歳って、ドラマ、リメイクのリメイクくらいでやってたの知ってる?」

 母がそう言った。

「あのドラマは、奥様はまだ高校生で、その高校の先生と結婚してるんだけど、それを世間には隠して、生活をしているっていう、なかなか昔のドラマにしては、斬新なストーリーだったわね」

「へ~~、知らない。そんなの」

 ひまわりが答えた。


「みんなに隠してるんすか?」

 聖君がちらっとバックミラーを見て、聞いた。

「校長だけは知ってたわね」

「へえ。面白いすね、そのドラマ。観てみたいな。あれ?でも、桃子ちゃんだって、奥様は18歳じゃん。あ、まだ17歳か!」

「そうね~~。あのドラマよりも若いのね」

 母はそう言うと、くすくすと笑っていた。

 昨日、一回は反対をした母とは思えないような、楽天家ぶりだ。これが本当の母の姿なんだろうな。


「高校、やめちゃうの?」

 ひまわりがいきなり、そう聞いた。

「だからね、ひまわり。これからどうやったらやめないですむかを、おじいちゃんと考えようと思っているのよ」

「それが今日行く目的?」

「そうよ」

「わかった。私も何かできることがあったら言ってね、お姉ちゃん。私は二人の味方だから!」

 ひまわりは力強くそう言ってくれた。横で聖君は、

「たのもしいな」

とにこにこ笑っていた。


 祖父の家に着いた。すぐさま、玄関に祖父と祖母が現れた。

「いらっしゃい」

 二人で、私たちを出迎えてくれ、家の中に入ると、祖母が、

「まあ、この人が桃子ちゃんの彼氏?」

と聞いてきた。


「榎本聖です。はじめまして」

 聖君は二人に、ぺこってお辞儀して挨拶をした。

「玄関で話もなんだから、あがってちょうだい」

 祖母に言われ、

「お邪魔します」

と丁寧に言うと、聖君は家にあがった。


 ひまわりはさっさと、リビングに行き、ソファーにふんぞり返っていた。

「ひまわり、あんたはちょっと端っこに座りなさいよ」

 母にそう言われ、

「は~~い」

とひまわりは、ソファーから下りてクッションを持ち、部屋の隅に行き、ちょこんと座った。


「さ、桃子と聖君はここに座って」

 母は私と聖君を二人がけのソファーに座らせた。

「今、お茶を持ってくるわね」

 祖母は嬉しそうに、リビングを出て行った。


「君が聖君か。いや~~、こりゃ驚きだな」

 祖父がそう言うと、

「え?なんでですか?」

と聖君が聞いた。

「こんなにまで、男前だとは思ってもみなかったからな」

「え?」

 聖君は返答に困ってしまっていた。

「桃子ちゃんは面食いなんだな~」

 祖父はそう言うと、はっはっはと笑っていた。


「さあ、どうぞ、お茶と、クッキーを持ってきたから良かったらつまんで」

「あ、いただきます」

 聖君はそう言うと、お茶を一口飲んだ。

「ほんと、かっこいいし、しっかりしてるのね」

 祖母が椅子に腰掛けながらそう言った。

「え?いえ。あの…」

 また聖君は返答に困っていた。


「そうでしょ?お母さんもお父さんもそう思うでしょ?」

 いきなり母が身を乗り出し、話し出した。

「それでね、ここからはいきなり本題。実はお父さんに、私と一緒に桃子の学校に行ってほしいのよ」

「学校?」

 祖父が聞き返した。


「校長先生に会ってもらいたいの」

「僕がかい?またなんで?」

 祖父が不思議がると、

「お父さんからも、校長先生を説得してほしいからよ」

と、母はものすごく真剣な表情でそう言った。


「説得?何か、桃子ちゃん、しでかしたのか?」

 祖父は落ち着いた顔でそう聞いてきた。

「しでかしたというか、その」

 母が話すのを躊躇していると、聖君が、息をすっと吸い込んで、

「桃子ちゃんと俺、結婚するんです」

といきなりそう言い出した。


「え?結婚?ほ~~。それは、いつ?」

 祖父はまだ、冷静だ。祖母は、ちょっと慌ててるようで、持っていたクッキーを落っことしていた。

「すぐにでも、籍は入れたいと思っています」

 聖君がそう言うと、祖父はまた冷静に、

「桃子ちゃんが、妊娠したのかな?」

と聞いてきた。


「するどい、さすがお父さん」

 母がそう言うと、横で祖母が、

「え~~~~?!」

と大声をあげ驚いて、目を白黒させた。

「そうか、そういうことか」

 まだ祖父は、冷静だ。


「も、桃子ちゃんが?この、桃子ちゃんが、妊娠?」

 祖母は立ちくらみでもしたのか、真っ青になりふらっと倒れそうになった。

「お母さん」

 母が祖母を慌ててささえた。


「信じられないわ。まだ桃子ちゃんは高校生なのよ?聖君って言ったっけ?」

 祖母は聖君の方を睨みつけると、

「あなた、何を考えてるの!大事な大事な桃子ちゃんに、なんてことをしてくれたの?!結婚なんて反対よ!ええ!絶対に反対!!」

と怒鳴りつけた。

「……」

 聖君は目を点にして、驚いていた。私もだ。


「いつものおばあちゃんじゃない」

 ひまわりが後ろからぽつりとそう言った。

「お母さん、そんなに興奮したらまた、ぎっくり腰になっちゃうわよ」

 母がそう言ってから、

「それに、その台詞、私の時にも同じこと言ったわよね。桃子を妊娠して結婚するって決めたとき」

とちょっと、ため息混じりに続けた。


「え?」

 祖母が母を見た。

「だけど、生まれたらめちゃくちゃ可愛がったじゃない。いきなり手のひら返したように、うちにどんどん連れてきなさいとか、旦那にも愛想よくなっちゃってさ。覚えてないとは言わせないわよ」

「……そうだったかしら」

 祖母のその言葉に、祖父が隣で苦笑していた。


「ああ、私がなんで桃子に反対したかわかったわ。お母さんに反対されたときの言葉を、覚えてたんだ。同じことを繰り返すところだった」

「え?」

「あの時は、お父さんだけ賛成してくれたのよね?お姉さんも結婚してないのに同棲して、妊娠までして、何考えてるのって責めたし。けっこう辛かったな」

 そんなことがあったんだ。


「そう、よかったわ、あの時のこと思い出して。同じ思いは桃子にさせたくない。私も旦那も結婚には賛成してるのよ、お母さん」

「あんた、何を無責任なこと言ってるの?結婚や子育てが大変なのは、あんただって知ってるでしょう?」

「知ってるわよ。お母さんがいてくれて、すごく助かったことも、それも感謝してる。だから今度は、私が桃子の助けをするの」

「え?」


「旦那も、ひまわりだっているし、聖君の家族も、結婚に賛成してくれてるし、桃子の助けになろうとしてくれてるの。これだけ周りに、桃子のことを助けようとしてる人がいるんだもの。絶対、大丈夫」

「大丈夫じゃないわよ。高校はどうするの?」

 祖母はまだ、顔をしかめている。

「だからそれを、どうにかしようと思って、僕のところにきたんだろう?」

 祖父がやわらかい表情でそう言った。

「そうなのよ、お父さんの助けがいるの」

 母が真剣な顔で、祖父に身を乗り出しそう言った。


「あの!」

 聖君はさっきから、話をしたくてうずうずした表情でいたが、とうとう話を切り出した。

「俺、いえ、僕は生半可な気持ちで結婚を考えてるわけじゃないんです」

 聖君がそう言うと、祖母も祖父も聖君をじっと見た。


「桃子ちゃんとは結婚も考えてたし」

「あなた、いくつ?」

「18歳です」

「大学生?」

「はい」

 祖母の質問に聖君が答えると、祖母は、

「あなた、その年齢で結婚なんて、考えられるわけないじゃないの」

と、ものすごくクールにそう言った。


「お母さん、世間一般的にはそう思うかもしれないけど、聖君は違うのよ」

 母が横から口を挟んだ。

「聖君、ものすごく桃子を大事にしてるの」

「大事にしてたら、なんで妊娠なんてさせてるの?!」

 祖母が怒った顔でそうきつく言った。

「……」

 母は黙り込んで、ちらりと聖君を見た。


「あ…」

 聖君はぼりって頭を掻くと、

「ちゃんと、その避妊はしてたんですけど」

と言いにくそうに話し出した。

「でも、僕は本気で結婚も、桃子ちゃんと家庭を持つことも望んでいたので、それがこんなに早くに叶っちゃったのかな~~と、思って…ます」

 聖君は、自分でも変なことを言っていると思ったのか、最後のほうは声が小さくなり、下をむいてしまっていた。でも、

「はっはっはっは」

と祖父が大笑いをしたので、聖君は驚いて、顔をあげた。


「あなた、何をのんきに笑ってるの?」

 祖母がそう聞くと、

「面白いとは思わないかい?聖君は面白いことを言う」

と、祖父はまだ笑いながらそう答えた。

「面白いってどこが?」

 祖母は半分呆れた顔だ。


「聖君の夢だったわけだろう?桃子ちゃんと結婚することも、子供も。それが叶ったというんだから、面白いじゃないか」

「ええ?」

 祖母はわけがわからないという顔をしていたが、母は、

「そうなのよ、これは旦那も希望していたことだから、喜んでいたわ」

と話に割り込んだ。


「ほう、耕平君のかい?」

 耕平というのは、父の名前だ。

「聖君が息子になるのを、ものすごく喜んでいるから」

「はっはっは、これまた傑作だ」

「あなた!何がおかしいの。それに耕平さんがそんなことを言うとも思えないわ。それ、本当のことなの?彼なら思い切り、反対しそうじゃないの」

 祖母がまた厳しい表情でそう言った。


「そう思うでしょ?私もそう思ったの。でも、まったく動じず、賛成しちゃったのよね。それに喜んじゃって、昨日妊娠してることも、結婚するってことも知ったんだけど、夜は上機嫌でお酒飲んでいたし、ね?ひまわり」

「うん!お父さん、すんごく喜んでた。孫ができるのか~~とか、聖君が息子か~~とか、嬉しそうに言ってたよ」

 母に聞かれて、ひまわりもそう答えた。


「嘘でしょう?」

 祖母は驚いて目を丸くしていた。

「それだけ、耕平君に信頼されてるわけだな、聖君は」

 祖父はもう笑っていなかった。真剣な目で聖君を見ると、そのあと優しい目になっていた。


「はい。僕もそれは感じてます。だから、すごく嬉しいです。桃子ちゃんのお父さんとは、何度か釣りに行っていますが、すごく気が合うというか、あ、これ、僕が言うと生意気ですよね」

 聖君はそう言うと、ぼりって頭を掻いた。

「そうか、耕平君と釣りに行ったのか。僕もね、一回誘われたんだけど、あまり釣りには興味なくってね。逆に絵画展に行くことや、絵を描くことを誘ったんだが、それは耕平君の方が興味なくって、僕らはあまり、気が合わなかったようでね。あ、でもけして仲が悪いわけじゃない。たまに将棋や碁を付き合ってもらってるしね」


「俺、絵、興味あります。絵を描くことも嫌いじゃないです。ただ…」

「ん?ただ、なんだい?」

 聖君が途中で黙ったので、祖父が聞くと、

「ただ、俺、いや僕は、相当、独創的な絵を描くらしくて、学校の先生にはわかってもらえなかったようなんです」

「はっはっは」

 また祖父は大笑いをした。


「僕も学校で美術の先生をしていたが、生徒の一人一人が、それぞれすばらしい才能を持っているのに、評価をしたり、差をつけることが変だと思ってね、やめてしまったんだよ」

「え?そうだったんですか」

 聖君はちょっと驚いた表情をした。


「君が行っていた学校の先生でも、本当は君の才能をかっている人もいたかもな。ただ、成績をつけなくてはならないとなると、無難な評価をせざるを得ないときもあるんだよ」

「あ、そっか」

「僕は興味あるね、その独創的な絵。今度描いてみないか?」

「はい、ぜひ!」

 聖君は目を輝かせた。


「はははは。なるほど。そんな目で話をされられたら、好きになってしまうのもわかるな~。耕平君が君が息子になって嬉しいと言うのも、納得できるよ」

「え?」

 聖君はまた、驚いていた。

「君は人を魅了する何かを持っているね。僕もこれから君にかかわっていけるのが、楽しみだ。さて、桃子ちゃんの高校にはいつ行くとするかい?」

 祖父はいきなり、母の方を向き、話を変えた。


「あ、そうね。まだ、産婦人科で調べてもらってないから、その結果がわかってからかしら」

「それはいつわかるんだい?」

「明日行こうと思ってるのよ」

「そうか。さてと…。一つ忘れていたことがあった。それも大事なことを」

 祖父は今度は私の顔を見た。


「え?」

 私が何だろうという顔をしていると、

「桃子ちゃんは、聖君と結婚したいのかい?子供も生みたいのかい?」

と祖父はすごく丁寧に聞いてきた。

「う、うん。もちろん」

 いきなりそんなことを聞かれ、びっくりしたが、私は思い切りうなづいた。

「そうか」


「桃子ちゃん…でもね」

 祖母は何かを言おうとしたが、祖父が、

「もういいじゃないか。桃子ちゃんが望んでることだ。僕たちも協力してあげよう、ね?」

と祖母に言ってくれた。祖母はまだ、納得していないようだったが、黙り込んだ。


「桃子ちゃん、じゃあ、これから君は高校生活を送っていきたいかい?妊婦の身で高校に行くのは大変だし、いろいろと周りから言われるかもしれないよ?これから、高校を卒業できるよう、頼みに行こうとは思うが、それを桃子ちゃんが望まないのなら、行ってもしかたのないことだからね」

 祖父はすごく冷静にそう聞いてきた。


「うん。もし卒業できるならしたい。学校には大切な友達もいる。一緒に卒業まで過ごしたいって思ってるよ。それに、もし何かを言われたり、大変だったとしても、その友達がいるから大丈夫だと思う」

「菜摘ちゃんや、蘭ちゃん?」

 母が私に聞いてきた。

「うん」


「そうね、あの二人なら、絶対に桃子を守ってくれるわ」

「そんなに桃子ちゃんのことを大事に思ってくれる友達がいるの?」

 祖母が聞いてきた。

「そうなのよ。二人ともいい子で」


「菜摘は僕の妹です」

 聖君がいきなりそう言った。

「え?あら、そうなの。それで知り合ったの?」

 祖母に聞かれ、

「いえ、そういうわけじゃないんですけど…」

と聖君は説明に困ってしまっていた。


「その…、菜摘は本当に、桃子ちゃんのことを大事に思っています。蘭ちゃんもです。見ててすごいなっていつも思うくらい、友達思いなんです。あ、もちろん桃子ちゃんも、すごい友達思いですけど」

 聖君はきらきらした目で、祖母にそう言った。

 祖母はしばらく、そのきらきらした目に見入ってしまってるようだった。


「あ…」

と、我に返ったように、祖母は言うと、

「聖君は、桃子ちゃんのどこが好きになったの?」

と突然そんなことを言い出した。

「えっと、どこって…。実は全部なんですけど」

「全部?」

 祖母はびっくりして聞き返した。


「はい。桃子ちゃんと出会って、桃子ちゃんを知れば知るほど好きになって、どこをとっても可愛くって…。えっと、あれ?俺、なんか今、すごく恥ずかしいこと言ってるよね?」

 聖君は私の方を見て、真っ赤になっていた。

 私までつられて、真っ赤になった。すると今度は祖母が私に、

「じゃ、桃子ちゃんは聖君のどこが好きなの?」

と聞いてきた。


 わ。やっぱり私にも聞いてきた~。すごく私は恥ずかしかったけど、

「全部」

とそれだけを言った。恥ずかしくて、それだけ言うので、精一杯だった。

「全部?あなたも?」

「うん」

 私はコクンとうなづいた。隣で聖君が、照れくさそうに私を見ていた。


「ラブラブ~~」

と後ろでひまわりが、ひやかした。

「これ、ひまわり」

と母がひまわりを怒ったが、まったく動じずに、

「私もね、聖君のことが大好きなんだよ、おばあちゃん。だから、お兄ちゃんになるのがめっちゃ嬉しいの!それに、ずっとそれを願っていたの。絶対に、お姉ちゃん、聖君と結婚してって言ってたんだもん。ね?お姉ちゃん」

と、一気にそう言った。多分、今まで話がしたくてうずうずしてたんだろうな。


「まあ、そうなの?」

 祖母がその言葉に、興味を持ったからか、ひまわりは図に乗り、祖母のすぐ横に来て、

「聖君ってね、とにかくすごいの。見てわかるとおり、イケメンだし、運転しても上手だし、スポーツ万能だし、ゲームしても強いし、それにやっさしいの!完璧なの!!」

と聖君を絶賛した。


 それを聞き、聖君は慌てていたけど、母までが、

「そうなのよね。それに料理はできちゃうし、勉強はできちゃうし、できないことは何もないんじゃないかっていうくらい、完璧なのよね~~」

と嬉しそうに話していた。

 聖君は横で、微動だに動かなくなり、真っ赤になっていた。あ、思い切り今、照れてる。


「はっはっはっはっは」

 また祖父が笑った。

「でもそんなに完璧じゃ、ものすごくもてるんじゃないのかい?」

 そう祖父が聞くと、ひまわりがまた、目を輝かせ、

「そうなんだよ、すんごいもてちゃうんだって。でも聖君は、お姉ちゃん一筋なの~~!そこがすごいと思わない?おじいちゃん!だからね、安心していいよ、おばあちゃん」

と二人に向かって、熱く語った。

「まあ、そうなの?」

 祖母がまた目を丸くさせた。


 ひまわりはその後も熱く熱く、どれだけ聖君や、聖君の家族が素敵かを、夏に泊まりに行ったときの話、クリスマス会の話などなど、べらべらと話して、止まらなくなってしまっていた。

 聖君も私も、あまりにもひまわりが、機関銃のように話しているので、黙って聞いていた。ひまわりの話に、祖父も祖母も夢中になって耳を傾け、それを横で母も、嬉しそうに楽しそうに聞いていた。


「ひまわり、すごい」

 私がぽつりと言うと、聖君はにっこりと笑って、

「ほんと、たのもしい助っ人だよね」

と私に耳打ちした。


 ひまわりは本当に聖君や、聖君の家族が大好きなんだな。でも私だってそうだ。だから、あれだけ熱く語るのもわかる気がする。本当なら私が話さないといけないことかもしれない。でも、ひまわりがああやって語ってくれるから、みんなが聖君や聖君の家族のよさをわかってくれる。

 ひまわりや、母を見ながら私は感動していた。それは聖君も一緒だったみたいだ。

 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ