第7話:二人の距離と、迫る影。新たな陰謀の兆し
リリアと過ごしたあの日から、私たちの関係には微かな変化が訪れていた。
以前よりも少しだけ心の壁が低くなり、彼女の目に映る私もどこか柔らかくなった気がした。
庭園の花々が優しく風に揺れる午後、リリアは私に静かに声をかけてきた。
「アリシア様、今日はご一緒に散歩しませんか?」
その提案に、私は迷わず頷いた。
歩きながら交わす言葉はまだぎこちなかったが、それでも互いの存在を確かめ合うかのように穏やかな時間が流れた。
しかし、その静けさは突然、侍女のエリスの慌ただしい足音で断ち切られた。
「アリシア様、申し訳ありません!少しよろしいでしょうか!」
エリスが息を切らして駆け寄ってくる。
「何かあったの?」
不安げに尋ねる私に、エリスは言葉を選びながら答えた。
「王宮内で不穏な動きがありまして……何者かがアリシア様を狙っている可能性があります」
その一言が私の胸を凍らせた。
「誰が?どうして私を?」
答えは得られなかった。
エリスはさらに続ける。
「まだ詳細は掴めていませんが、警戒を強めるようにと命じられました」
リリアがすぐに私の手を強く握り締めた。
「アリシア様、ご安心ください。わたしが必ずお守りします」
彼女の瞳は強い決意に満ちていた。
けれど、その言葉を聞くほどに、私の中の不安は増していった。
これまでの監視と独占欲が、守るという形で外に出ているのだろうか。
だが今は、それがどんな形であれ、私を守ってくれる存在であることを願うしかなかった。
夕暮れの空が少しずつ深い藍色に変わっていく。
私たちは手を離さず、迫り来る影に立ち向かう覚悟を固めたのだった。