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怪奇と戦慄のエナジードリンク   作者: カキヒト・シラズ


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第5話

 これははずれだろう。

 富島聡は吐息をついた。

 応接室のソファには富島と向かい合って、一人の女性が座っている。

 プロフィールによると女性は今井俊美、三十二歳、会社役員とのこと。


 結婚相談所『トート』は新宿西口の高層ビル三〇階にあった。

 婚活シートにプロフィールを書き込み、性格心理テストを受けるとAIが最適な相手を選別して紹介してくれる。会費は他社より割高だが、その分、会員の平均スペックは高いとの話。ただしこれは『トート』営業スタッフのセールストークではある。


 俊美を見たとき、最初の三分ぐらいまでは当たりだと喜んだ。熟女系の美女だったからだ。

 少し厚化粧だが、高価なネックレスや指輪やまとい、ワンピースもブランドものだ。

 だが彼女の話を聞くうちに、自分とは合いそうにない女だと直感した。

 俊美の話を総合すると、彼女は学生時代から評判の美人で過去にイケメンの彼氏が何人もいた。

 マイナーなミスコンで準ミスになったこともある。

 社会人になると中小企業のオーナー社長の愛人兼社員になり、同社の常務兼総務部長を務めているとのこと。

 本人曰く、社長の愛人だからだけでなく、仕事の実力もあるので総務部長のポストを射止め、年収一千万円を越えるとのこと。

 社長には奥さんと別れるよう説得したがだめで、そのかわり神戸のタワマン最上階部屋を買ってもらい、そこに住んでいるとのこと。

 社長はもう老人で近い将来、代替わりするらしい。そうなると自分のパトロンがいなくなる。その前に結婚しておこうと思い、『トート』に入会したとのこと。


「富島さんのプロフィール読ませてもらったんだけど」

 俊美が言った。

「その歳まで女性と付き合った経験がないの?」

「ええ」

 富島はしどろもどもに答える。

「もしかしてあなた童貞?」

「はい」

「それって素人童貞という意味? 風俗くらい行ったことあるんでしょう?」

「……」

「真性の童貞?」

「まあ、そのう」

「あなたの年齢で童貞ってキモいわよ。口に出さなくても女は例外なく本心ではそう思うわよ。

 あなたは年収もそんなに高くないし、それほどイケメンでもないし、年齢も三〇歳だし……。

 せめてセックスぐらいうまくないと女から見て魅力ゼロよ。わかってるの」

「ええ、まあ......」

「とりあえず、次回からあなたとの交際はカウンセラーに頼んでキャンセルにさせてもらうわ」

 俊美はそう言い捨てて立ち上がり、応接室を去った。

 『トート』の仮交際で女性に嫌われるのは慣れている。でもこんなふうに自分の豆腐メンタルをボコボコにされたのははじめてだ。

 富島は心の中ですすり泣いた。


(つづく)

 

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