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『おろちばーす』  作者: ワニ
1章:とあるワニとアルマジロ
4/6

『悪夢は覚めない』


「あ、あの…何度も言うっすけど、僕一人でやれるっすからね?」


「あーいや、それはわかってるんだが…またどこかに消えないか不安でな…」


「そもそも消えたのはアニキの方じゃないっすか」


「確かに」


さて彼らは何をやっているのかというと、治安維持活動…といえば聞こえはいいが、実際はほぼ散歩みたいなものである。木に登ったはいいものの降りれなくなったネコちゃんを助けたり、風船が木に引っかかって困ってる少年に風船を撮ってあげたりなどのことはした。でもそれくらいである。1番の功績は、こんひ


「でもお前って結構人気あるよな」


「そうっすか〜?やっぱ見た目がクールかつキュートなのが原因なんっすかね」


「社会からルッキズムをなくしたい」


アルマはゲーム世界の住民であるとはいえ、その見た目が可愛いらしいのが原因かそこそこ人気がある。どうやらこの世界は可愛いが正義らしい。


「でもアニキも魅力的だと思うっすよ。例えば、えーっと、その、コワモテだけど中身は結構優しいところとか?」


「それはあまりフォローにはなってないかもしれないな」


まあディノスの方も上手い演奏をするギターのワニお兄さんとしてアルマほどではないが1部の子供から人気である。本人は知る由もないのだが…



「おっと、そろそろ時間だ。じゃあまた後でな」 


「バイバイっす、お金稼ぐのも大変っすね〜」


さてディノスの方も働かなければならない。馴染みの酒場にでも寄って、ギターを弾いてこなければ。

未だに力はほとんど戻らないが、まあ仕方ない。アルマが戻ってきただけでも大金星だ。


これは平和な、平和な日常であった。

———————————————————-


あれから3週間が経過。依然として、平和な日々は続いていた。


「今日はこんなもんでいいか…」


ディノスは多少潤った財布を見てそうつぶやいた。まあ、これくらいの金があれば問題はない。とりあえず足手纏いになることはなかろう。

いつもは小静かな夜の街だが、今日だけは多くの人でごった返しており、流石のディノスもそれには応えていた。


「こんなに人が多いと逆走して帰るのにも一苦労だな…どうにかならないか」


何故だかみんな焦りながらディノスとは反対方向へ走っていく。全く、もし強盗などが発生したとしてもあそこら辺はアルマが守ってるんだから強盗くらいなら返り討ちにできるはずだろう。あまりうちのアルマを舐めないでもらいたい。

となると、アルマではどうしようもない火事とかか?

頭を悩ませながら帰路につく。

待て。

この違和感はなんだ?


「嫌な、予感がする」


あの時と同じ感覚がディノスを襲う。世界の崩落から自分1人だけ助かってしまったあのとき。大切な仲間を誰1人助けられなかったあのとき。

今動かなければ、また失う。そしてもう、2度目はない。


「ッ!」


もしかしたら大したことないかもしれない。ただ、アルマの優秀ぶりはここら辺の人間ならもうよくわかっているはず。事実、アルマの人気ぶりはもはや妬ましいくらい凄まじい。あのアルマですら抑えられないくらいの何かが発生したのか?


「ッ…!あっちっす!あっちへ逃げるっす!ここは僕が抑えるっす…手数が多すぎって守りきれないっすね…!」


「アルマ!!!!」


そこにいたのは"何か"と相対するアルマだった。まだ建物の影に隠れて見えないが…


「兄貴!?来ちゃだめ"っす!!」


そこに鎮座していたのは、大型トラックほどの大きさの異形の生命体…一見ヒュドラを思わせるような見た目だが、胴体に大きな口がついてるのが見えるだろうか、そう…あれは、


「ナァァイィィトォォメェェアァァァ!!!!!!」


かつての自分の故郷、『モンスターパートナー』での宿敵…ナイトメアだった。


基本的にモンスターパートナー時代はどんな者もウェルカムであったディノスとアルマだが、このナイトメアだけは別だ。何せこのナイトメアは…

………それは今関係ない話だ。思考が逸れた。



このナイトメアには、知能がない。何かを喰らうことしか考えていない。そして、強い。

当時はディノスとアルマの2人がかりでようやく辛勝。つまりこれが何を意味するかというと…


「アルマだけじゃ、勝てない」


というわけだ。憎いことに、こいつにも微弱ながら拠り所の世界による補正がついているらしい。なので、たとえ元の世界が滅んでも能力を変わらず使うことができるのだ。


そして、ディノスには拠り所の世界が存在しない。彼は能力すら使うことができず…まあつまり、ディノスはこの戦闘において使いものにならないということを意味する。


「…!!盾2つじゃ足りないっすね、三盾流のアルマを目指しておくべきだったっすかね…!」


アルマはたとえ世界が壊れたとしても絶対に壊れることのない盾で四方八方から迫るヘビの首…に見える触手を受け止める。しかし盾は2、触手は9。いくらナイトメアに知能がないと言っても、流石にジリ貧なのであった。


アルマは一見防御力が高い代わりにスピードが遅い…ように見えるが全然そんなことはない。


「こうやってコロコロするのも久しぶりっすね…!」


アルマは丸まって転がることによってかなりのスピードを出すことができる。まあ、旋回性があまり良くないのが玉に瑕だが。これによってなんとかナイトメアを翻弄して時間稼ぎをしているようだが、体力的な問題で永遠に続くことはない。


それに、アルマも能力などはほとんど変わらずとはいえ…世界に顕現したばっかでほとんど力を出せていない。


「メギドラは、メギドラはどうしたんだアルマ!?」


「しばらく帰ってこないっす!なんかブンナグとやらと決着をつけてくるとかなんとか!」


こんなときにメギドラがいてくれたらナイトメアくらいすぐ片付くと思うのだが、どうやら今はいないらしい。まあ、向こうも向こうで…


「ナーラも瀕死、我もあともう1発攻撃できたらいい方ですわよ!」


あちらはあちらでかなりの死闘を繰り広げていたのだが、それをディノスたちが知る由はなかった。さて…


「オレが…オレが役立たずじゃなかったら…」


悪夢は、彼を嘲笑いながら自分を呼んだ世界に喝采し、そして数多の命を食そうと暴れるのを止めないのだった。

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