表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『おろちばーす』  作者: ワニ
1章:とあるワニとアルマジロ
2/6

『絶壁の帰還』

深くを語るつもりはない、無粋というものである。ただ、一つだけ言うとするなら。

それはディノスが少しずつ、少しずつ、心を開き始めたということだ。

草原で絵を描き、保安官の友人ができ、星座を眺め、旅行をした経験は一人のワニの心を開かせるには十分であった。


さて、ここで一つ言っておこう。ディノスは元のゲームの世界で主人公格であったのか…ということだ。

答えは否、である。元の世界ではただの…いわば、モブキャラにすぎなかった。決して、メインキャラクターではなかった。

ディノスがこれから始まる物語の主人公を張れるようになったのは、あなたたちの行動の結果が大きい。まあ、銃に撃たれる悪夢は見たそうだが…


そして…


ディノスにとっては金稼ぎの道具であったギターだが、現在この状況では違った。


「まさか再びこの用途で使うことになるとは…」


そう、ここはステージの上。主役はディノス、テーマは『音楽』。

観客の心を掴みつつ暴力的であった音色は、また色褪せる以前のものと同じ音色となり…


二度目の生誕とは、まさにこのことだろう。


—————————————-


しかし、これだけで心は完全に元通りになるのか?

もちろん、そんなことはない。

だが…?


ディノスが力を失った経緯について話そう。どの者にも『拠り所の世界』というものがある。たとえば、ディノスにとっての『拠り所の世界』はかつてあったゲーム「モンスターパートナー」である。

ディノスの友人、メギドラは「おろちばーす」が『拠り所の世界』である。他にも「みかづきわーるど」だの「アイアンオーシャン」だのといったものがあるそうだが…ま、『拠り所の世界』について説明する上では不要なので今回は説明をパスとする。


どんな者も各々が所属する『拠り所の世界』から力を得ている。そして、拠り所の世界に近ければ近いほど無敵の存在となる。なので、例えばメギドラは「おろちばーす」内では最強の存在であり、どんな強者でも純粋な『拠り所の世界』が「おろちばーす」でない限り絶対に彼を殺すことはできない。また逆も然りである。


では、もしその世界が滅びてしまったらどうなるのだろうか。


ゲーム世界であるとはいえ世界は世界、拠り所の世界が「モンスターパートナー」となっているディノスだが、一つ問題がある。

それは、「モンスターパートナー」が既にサービス終了してしまっていること。つまり、拠り所の世界が存在しないのだ。

なので世界から力を得ることが不可能となり、おろちばーすにほっぽり出されてしまったときとんでもないくらい弱体化を喰らってしまったのである。一応、自分がいたという痕跡があればある程度なら力を得ることができる。まあ、9年前にサービス終了したゲームなど誰も覚えていない。



さて、なぜこんなことを話したかというと…


「アルマ…?」


原初の世界の相棒、それが帰ってきた理由につながるからだ。


残念なことに、アルマは当時人気がなかった。

残念なことに、ディノスは当時人気があった。

それが生き別れとなった原因である。


ディノスはモブキャラであるとはいえ人気があった。ファンアートもよく描かれていた。あとは単純な運。それが拠り所の世界の崩落から免れた要因である。


アルマはモブキャラであり人気がなかった。ファンアートも全く描かれなかった。あとは単純な運。それが拠り所の世界の崩落から免れられなかった要因である。


ただし一人はアルマのことを想い続けた。

諸君はファンアートを描いた。

それが奇跡を生んだ理由と言っておくべきかか。もはや、その理由なんて


「あれ…ここどこっすか?アニキ」


「アルマ……!」


夜も更けて肌寒くなって来た頃、彼の大切な相棒はついに帰ってきた。

ワニは嘘泣きをするという。しかしこのときは本当に嘘泣きだったのだろうか。啜り泣く音だけが夜に木霊する。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ