第二話 忍び寄る赤
「よし。どれほど潜在能力があるのか俺には全くわからない。そうだな、かくれんぼをしよう。ルールはこの部屋だけだ」
「はーい!先輩は目閉じて!」
ここはまだできたばかりで使われていない部屋。物は机、椅子、黒板のみ。
数え終わり、あたりを捜索する。
だが、俺はこの子供を舐めていた。
数分探してもいない…まさか出て行ってしまったか!?
「降参だ。出てきてくれ」
すると、後ろから飛びついて来たのだ。
「うぉっ!どこにいたんだ!?」
「先輩の後ろー!」
ありえない…エージェントの腕が下がっているのもあるだろうが、気配すらなかった…ずっと、俺の背後に!どうやら、エージェントを超えるほどの力を持っている。まるで人間じゃない。だが、これは使える。
となると、次はコードネームだな。ただただ"子供"じゃ呼びづらい。
「…なら、デミヒューマン。今日からデミヒューマンと呼ぼう。君の新しい名前だ」
「でみ、ひゅーまん?わかった!ボクはデミヒューマンになる!」
任務の同伴。相棒になるというのならそれなりの体力が必要だろう。
俺は遊びを教えながらこの子を鍛えた。子供というのは嫌いで異常にヤンチャなイメージもあったし、ウザいとも思うほどだった。しかし、デミヒューマンは言うことは全て聞き命令は絶対に守るスパイエージェント体質だった。何より、できるまで諦めない心と、常に楽しくしてくれてた。最初は俺は面倒くさいと考えていたが、いつのまにか一緒にいる時間も増え楽しくなっていった。
それから1ヶ月半ほど過ぎ、ニヴルヘイム公認でデミヒューマンは正式エージェントになった。年齢的にはニヴルヘイム史上最年少だ。
そして、遂に、初任務の日が来た。
「アクリス。9年ぶりの任務だ。デミヒューマンは初陣だな。アメリカ、デトロイト州でとあるギャングがKGBと手を組んだ。KGBから供与された銃器、爆薬を破壊してくれ。回収しても構わない。冷戦悪化の一歩だ。絶対に止めてくれ」
アメリカ、デトロイト州…
この州は近年治安悪化で問題になって来ている。ギャングのアジトとなったデトロイトは、反政府組織も混じっていた。
とあるビルに、ターゲットはいる。
「デミヒューマン。この写真のやつにこいつをくっつけて来てくれるか?」
「はーい!」
渡したのはC3爆弾だ。
「よし。終わったら連絡をくれ」
通信機を持たせ、デミヒューマンは元気よく中に入っていった。
「よし…俺もさっさとやっちまおう」
ブローニング・ハイパワーを持ちクリアリングをしながら奥の部屋へ向かう。グリフォン曰く、地下壕があるらしく、そこにKGBに関する情報があるという。
地下へ通ずる階段で降ると、壁を挟んだ奥の部屋で話し声がした。英語じゃない…ロシア語だ!だが、英語で繰り返しているような話し方も聞こえる。翻訳者がいるか。翻訳者を捕まえて情報を聞き出せばより有利になる。
「W54?」
「Да. W54 - ето небольшое ядерное」
「W54は小型核のことだ」
「そんなデカブツを俺らに回収して欲しいってことか…だが、国家機密なんだろ?どこにあるんだよ?」
W54…噂には聞いていたが、本当に実在したのか!一刻も早く動かねば、核の脅威がさらに高まる!ここまで情報を絞り出されているというのなら、こちらが情報を持ち帰ってコイツらは暗殺した方がいい。
「Окинава」(沖縄だ)
「沖縄?アメリカ統治下のあの島にか?」
「Ах…до этого」(あぁ…その前に)
気配に気づいたのかロシア人が扉を開けマカロフPMを構えた。
俺はCQCで人質にし、その場にいたギャングを全員射殺する。
<せんぱーい!準備完了ー!>
タイミングよくデミヒューマンが設置したようだ。
「よくできたぞデミヒューマン。そこから離れてさっきの場所で合流しよう」
<わかったー!>
「Кто тебя!?」(誰だ貴様は!?)
首をへし折り暗殺する。既に本当の俺らの姿を見ているならば暗殺しなければならない。誰であろうと。
その場をすぐに立ち去りデミヒューマンと合流。数メートル離れて爆薬を起爆しビルを吹き飛ばした。弾薬に誘爆してパチパチと弾丸が次々火花をあげている。
その場を立ち去って素早く車に乗り逃げた。任務完了だ。
英語とロシア語はまだお勉強中です。おかしな部分があるかもしれませんが、ご了承下さい…。