襲ってくれないんだ
「先輩、せんぱーい。もう教室だれもいませんよー。起きてくださーい」
月に一度の委員会。先輩は必ずと言っていいほど眠っている。
肩を揺らしてみても、頬を突いてみても、先輩は一向に起きる気配がない。
どれだけ深い眠りなんだろう。
私は仕方なく前の席に座り、先輩の机に頬杖をつく。
いつも右を向いて突っ伏して寝ている先輩。
目にかかった前髪をそっと持ち上げる。
長いまつ毛に羨ましいくらいに白い肌。私はこの寝顔を見るのが好きだ。
「早く起きないと襲っちゃいますよ」
先輩の柔らかな頬に手を当てる。そして顔を覗き込むように私も机に頭を乗せた。
なんてしてみたりするけれど、それ以上のことなんてできない。
私は顔をあげ、また頬杖をつき先輩の寝顔を眺める。
「襲ってくれないんだ」
「起きてたんですか?!」
「今まで一度だって寝たことないよ」
「え……?!」
ってことは今まで見てたのは寝顔じゃなくて寝たふりの顔だったてこと?
うわぁ。恥ずかしすぎる。
「襲われるの待ってたんだよ」
「襲いませんよ」
「じゃあ、僕が――」
先輩は私の頬に手を当てると、ゆっくり顔を近づけてきた――