22/23
明日も寒い日でありますように
「はぁ、寒い」
朝、通学路を歩きながら両手に息を吹きかけた。生暖かい風が手のひらを気休め程度に温める。
「手袋、忘れたの?」
「うん。急いでて忘れちゃった」
うそ。わざと忘れた。
前髪をセットするのに十五分かけられるくらいの余裕もあった。
「こんな寒いのにドジだなぁ。ほら、僕の使って」
彼は自分のつけていた手袋を外し、渡してくれる。
ほんと、優しいんだから。
「……ありがとう」
私は、両手に彼の手袋をはめた。温かい。
でも、そうじゃないんだよ。
手袋は、片方でよかったの。
もう片方の手は、繋ぎたかったの。
やっぱり、少女漫画みたいに上手くはいかないよね。
「なんか、湿ってて気持ち悪い」
「え?! うそごめん! やっぱり返して!」
「やだ」
「ええ?!」
察してよ、なんて言わない。
素直に手を繋ぎたいって言えない私が臆病だから。
だから、この手袋は私が預かっておきます。
明日は二人とも手袋はありません。
明日も寒い日でありますように。