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曖昧な関係


(っ……!)


 突然、片方外されるイヤホン。触れそうなほど近い肩にこちらに傾く頭。

 何度も繰り返されてきた行為だけれどこの瞬間だけは一向に慣れない。

 それでも平静を装い、当たり前のことのように受け入れる。


「良い曲じゃん。好きだわこれ」


「うん」


「この前のあれも良かったな」


「そうだね。あれもいいよね」


 この前のあれがなんのことを言っているのかはわかってない。

 でも、いつも『良い』しか言わないのでどれでも同じことだろう。


「佐倉くんは何が好きなの?」


 彼はイヤホンを耳にはめたまま「うーん」と考えるようにさらに首を傾ける。

 そして私の方に視線を向けた。 


「小森さんが好きなものが好きなんだよね」


 なんなんだそれは。

 私は佐倉くんの好きなものは何も知らない。それでもその返事に胸が高鳴る。


「その言い方、期待するけど」

「いいんじゃない? 期待しても」

「じゃあ期待しとく」


 私たちの会話はいつも曖昧だ。


 一体何を期待してもいいのだろう。

 思っていても口にはしない。


 イヤホンで繋がったゼロ距離の関係が心地良いから。


 今はまだ曖昧な関係のまま。




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