ずっと前から好きだった
「川原、好きです! 付き合ってください!」
今どき珍しく真っ直ぐな言葉で告白をしてくる彼は真剣な顔をしている。
でも、私は知っている。昨日クラスの男子と罰ゲームの話をしていたことを。
「罰ゲームだよね」
「えっ……」
「好きだなんて言わないでよ」
「な、んで」
「好きでもないのに好きって言われたくない」
気持ちのない『好き』ほど虚しい言葉はない。
私は彼に背を向け歩き出す。
「好きだ!」
「ちょっと、言わないでって」
言わないでと言ったそばから好きだと言われ腹立たしく感じた。
私は振り返り睨むように彼を見る。
彼はやはり真剣な顔をしていた。
「好きだよ。ずっと好きだった。それに罰ゲームじゃないよ。俺が勝ったんだ」
「勝った?」
「もう一人、川原のことが好きなやつがいてそいつとどっちが先に告白するか揉めてたんだ。それでゲームで決めようって。本当はそんなことで決めるべきじゃなかったのかもしれないけど、どうしても俺が先に告白したかった」
「そう、なんだ……」
「俺、川原に好きになってもらいたい。好きになってもらえるように頑張るから。だから、」
「好きだよ」
「えっ?」
「私も好きだよ」
きっと、私の方がずっと前から好きだった。