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「んーっ」


 届きそうで届かない。図書館の本棚の一番上の段。背表紙に指は触れているものの引き出すまでには至らない。

 早く諦めて隣の通路にある踏み台を持ってきたらいいのにと頭ではわかっているのに何故か体は諦めようとしない。


「あ、と、少し……」


 よろけそうなほど爪先を立て、目一杯背伸びする。


「はい。これでいい?」


「へっ?」

 

 突然のことに、力が入っていた全身はストンっと床に沈むように足をつく。


 私の背後から包み込むようにあっさりその本を取ったのはこの図書館でよく見かける"彼"だった。

 いつも同じ席に座り、いつも恋愛小説を読んでいる彼。

 そんな彼のことが私はいつも気になっていた。


 口をつぐみながら少し頬を膨らます表情。

 眉間にシワをよせ何かを考える表情。

 そしてただページをめくりながらその瞳から涙を流す姿。

 ころころと変わる表情にいつも魅せられていた。


「ありがとうございます」


「あっちに踏み台あるよ」


「そうですよね。わかってたんですけど、取れるかなと思って。ご迷惑をおかけしました」


 私は受け取った本を両手で抱え頭を下げる。

 頭を上げて見上げた彼は私を見てクスッと笑っていた。


「いいよ。ぷるぷるしながら背伸びする君がすごく可愛かった」


 表情が豊かな彼。私に笑いかける彼。

 目を細めくしゃりと笑う彼に今日も私は魅せられた。




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