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異世界帰りのアルバイター  作者: 糸島荘
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1-7


 昨日は散々な目に遭った。異能力者にやられるのはいつもの事だが、まさか押しかけ娘が現れるとは思っていなかった。


 見た目は可憐な美少女ではあったが、中身はだいぶ暴力的、それに世間知らずな雰囲気があった。彼女と喋っていると心労が溜まっていく。


 そんな彼女だが、朝起きた時にはもう隣にいなかった。学生服を着ていたので、学校に行った……のか?


 一体どこからやって来たのかわからないが、ここから通える距離なのだろうか。教科書なども一切ないはずだが、置き勉でもしてるのだろう。


「まあ、関係ないか。俺も昼からバイトだし、そこまで構ってられないわ」


 今日の朝食は昨日コンビニで買っておいた菓子パンだ。食べながら見るためにテレビを付けると、そこには放火犯がまた出たという話が映されていた。


 ただし、逮捕されたという話はなく、街を騒がしている不届き者という批判が主であった。異能の力を世間一般に晒す訳にはいかないので、情報統制はしっかりされている。


「あそこまで暴れていたのに、案外目撃者はいなかったんだな。それとも協力者とやらが何かしていたとみるべきか。どちらにせよ俺が考える事ではないか」


 そういう事は上が考えるだろう。下っ端である自分達が考えるような事ではない。そう結論づけて、菓子パンを食べ終わったので立ち上がる。


 時間は朝9時、バイトに出発するまで後数時間ほど余裕がある。ならばやる事は1つ。


「ゲーム!……と言えれば良かったのにな。昨日のレポートを提出しろと隊長からもメールできてたし、今やるか」


 薄給の癖に、戦わせるだけじゃなく、レポートもしっかり提出しろとはとんだブラックな会社だ。


 異能力者としての安全を保障されているとはいえ、この仕打ちでは異能力者と自己申告する者が少ないのも頷ける。理由がなければ従う者は当然少ないだろう。


 ただ、異能力者の総数は少ない。全人類の1割にも満たない数だと言われている。少数派はいつだって蔑ろにされがちだ。政府も良い駒だと思っているだけなのだろう。


 本当に殺してやりたい。


 溢れ出た嫌な感情を飲み込む代わりに出た溜息を吐き、仕方なくノートPCを開く。と言っても書く事は相手の能力と被害状況くらいだ。


「さて、タイトルは火の玉を扱う能力者について、で良いか。どうせ上の奴らには見られないんだし、自分が読めるように適当に纏めておくか」



 あくまで当事者が纏めるのは対応した事件の事のみなので、特段誰かが見るといったことはない。じゃあ、纏める必要はないと思うかもしれない。実際、思っているが、そうしろという指示がある以上、逆らえば後が怖い。


 隊長以上の地位にある人間とは相対した事はないが、一度サボった時に送られてきた脅し文は流石に怖かった。どうやって家族構成からバイト先、友人関係まで全て調べ上げ、リスト化してくるなんて誰が予想できよう。


 考えれば考えるほど組織に対して負の感情ばかり生まれてくる。名誉挽回の為に一応言っておくと、利点も幾つかあるので嫌々従っている訳ではない。


 とか考えている間に、レポートは完成に近づいていた。思っていた以上に薄い内容となってしまい、自分の学の無さを痛感する。


「と言っても、やられた感想しかないしな。俺がもっとまともに戦えれば……ってアハトにも聞く必要があるか」


 彼女のあの感じだと、まともに報告をしているとは思えない。案外、隊長にはきっちりしていたのでちゃんとしているのかもしれないが。


 とにかく話を聞くまでこれ以上、レポートを進める事はできなくなった。エンターボタンを思い切り押して、とりあえずの作業を完了とする。


 気がつけば時間は12時、ついさっき朝飯を食べたはずが時間の流れは早い。腹は減っていない。しかし、何か腹に入れておかないとバイトで倒れかねない。


「確か、冷蔵庫にトマトジュースがあったよな。それとカップ麺でも食っていくか」


 今までの事務仕事は余興。黒の1日はこれから始まる。

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