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異世界帰りのアルバイター  作者: 糸島荘
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1-6


「ここが俺の家だ」


 近くのコンビニでアハト用に最低限の買い物を済ませてから、家へと辿り着いていた。


 築30年のアパートなので、良く言えば趣がある。悪く言えばボロボロだ。2階への階段は、少し踏むだけで軋むほどにガタがきている。その分、都会へ電車1本で行ける割に、家賃は格安なので文句は言えない。


「思っていた以上にボロボロですね」


「今ならまだ電車は動いているから、隊長の方へ行けるぞ?というよりそうしてくれよ」


 アハトは首を振り、大丈夫と答えて扉の前にいる黒の元まで登ってくる。ここでアハトについて分かった事がある。彼女は足音を極力しないように歩いている。


 軋んでいた階段も、彼女が登っている時は少しの金属音も立てていない。見た目は青髪青目で外国人なのに対して、動きはまるで忍者である。


「入らなくてもわかると思うが、中は狭い。片付ければ2人でも寝れると思うから、まず片付けるの手伝ってくれるか?」


 そう先に忠告しておいてから、歪んで重くなった扉を開ける。黒は慣れた足取りで中に入っていき、電気をつける。その後ろから付いてきていたアハトが、部屋を覗き込んで呆れた声を上げる。


「ゴミがあちらこちらに……これが世間一般で言われる、汚部屋というのですか」


「きっとマシな方だと思うけどな!一人暮らしをしているとその辺りがザルになってしまうもんなんだよ。誰も家に入れる予定なんてないし」


「はぁ、わかりましたよ。要するに貴方は寂しい人、という事ですね」


 非常に心外な納得の仕方をされているが、事実なのは間違いない。それにこれ以上、反論しても疲れるだけだろうと思い、言い返すのは辞めた。


 今日はアハトに、言葉でボコボコにされる前から、火の男によって物理的にボコボコにされたので疲れている。正直、明日のバイトのためにも早く寝て疲れを癒したい。


 風呂は事務所で済ましてきているので、片付ければ後は寝るだけだ。


「そういえば、アハトは飯を済ませてたか?コンビニでも俺ばかりが買っていて、お前が買ったのはお菓子を幾つか。それもお菓子じゃなくて、付属のクリアファイルが目当てだろ?」


 よくあるお菓子を幾つか買うと、おまけとしてグッズが付いてくるキャンペーン。今回は女性配信者とコラボしているらしい。


 ビジュアルは確かに可愛いが、アハトはこういうものには興味がなさそうなイメージを勝手に持っていた。


 アハト自体のビジュアルも負けていない。黙っていれば、道ゆく人の目を引く見た目をしている。暴力的な思考を見なければ、一緒の家に止まるというイベントに胸踊っていたかもしれない。


「バーチャル配信者?というのは可愛いです。可愛いは最強なんですよ?愛でて当然です」


「そ、そうか。お前が良いなら俺は良いが、もし腹減ったならそこの棚にカップ麺がたらふく入ってるから。勝手に食ってくれ」


 キッチンの上にある棚には普通、調理器具が入っていると思うのだが、そこには買いだめされたカップ麺、カップ蕎麦、定番焼きそばFOUなどが、相当数ストックされている。


 2人で食べても1週間は持つ量だ。正直、買い過ぎだとは思っているが、なくなる度に買ってしまうので中々減らない。こういう現象に名前はないのだろうか


「大丈夫です。それより、これで片付けは終わりですか?終わりならそろそろ寝たいのですが」


 いつのまにかゴミは片付いており、どうにか2人は寝れそうである。とは言ったものの布団は1つしかないので、どちらかは床で寝ることになる。あるのはあまりの毛布だけだ。


「次は布団を買いに行かないといけないか。よし、隊長に出してもらおう」


「?何をしているのですか?布団で寝るのは貴方ですよ」


 布団を敷いた所から少し離れたところで毛布にくるまっていると、アハトが疑問を投げかけてくる。


 流石に怖い女子だとしても、布団は自分よりも年下そうなアハトが使うべきだとは黒でも思う。


「1日くらい大丈夫だ。もう寝たいから電気消すぞ」


 返事を待つ前に黒は電気を消す。今日はクソ客に加え、放火犯に押しかけ少女と疲れる事がたくさんありすぎた。美少女が隣にいるというのに、今日は良く寝れそうだ。

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