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「どうだ、怪しい参加者はいたか」
「経歴の点で怪しい者が何名かは。ですが、今のところ特に変わった行動をしている参加者はいませんね」
一面、15個以上のモニターが三面に渡って並べられている異様な部屋に黒服の男が2人。薄暗がりの中、並べられているモニターに異常がないかチェックしている。
「今、対象と接触している彼。彼がその怪しい人物ですよ。ほらこれ、おかしくないですか?数年前、急に起業して社長になったと調べはついているんですが、肝心の仕事内容は非公開。こんなの臭すぎでしょう」
片手で鼻をつまみながら、もう片方の手を鼻の前で振る動作をする。その動作は誰から見ても馬鹿にしているような態度を取っている。それがもう1人の黒服の気に障ったようで、頭をガツンとぶん殴る。
「今は仕事中だ、ふざけるのも大概にしろよ。いつもそんなふざけた態度を取っているから、ボスにも絞められるんだ。だが、目をつけている場所は良さそうだぞ」
男は様々な場所を映し出されたモニターの1つを指差す。そこには会場を出ようとしている日威黒の姿があった。その姿は不審者そのもので、暗くなった会場から挙動不審に出て行こうとしている姿がばっちりとモニターに映し出されていた。
キョロキョロと天井や壁などの回りを見渡しながら、幾つもある会場の出口で人が1番少ないところから出ていき、モニター外になる。
「よし、ボスは今忙しい。ガキ3人連れて、お前が話を聞いてこい。場合によっては捕まえて部屋へ招待しても良い。決して皆様の目に触れないように、できるだけ優しく……な」
「了解了解。そろそろあいつらも暴れ足りなすぎて、今にも爆発寸前でしたからね。きっとちょうど良い気晴らしになりますよ」
「本当、大変だよ。あいつらみたいなガキを何人もあやすのは。与えたおもちゃもすぐ壊すし、その割にボスが優しいからすぐつけあがるんだ」
どちらも何かを思い出して心底嫌そうな態度をみせる。これまで起こった事がどれだけ酷い事だったのか、2人の顔を見ればわかる。
「ボスの事は良いだろ。ボスにはボスの考え方があるんだから。それよりも早く行け。こんなところで油を売っていると、対象がどこに行ったかわからなくなる。ほら、これ無線機」
乱雑に机の上へ置かれていた2つの無線機の1つが、ガタイのいい黒服が全体的にヒョロくて後輩風が強い黒服へと投げ渡す。
渡されたのは昔ながらの無線機で、周波数を設定して会話するよくあるタイプの無線機。わざわざ使うのがめんどくさい無線機なんかを使わずとも、携帯を使えば済む話ではあるのだが、彼らの組織には一応の理由がある。
「幾らボスが浪漫あるからとか言って、普段の連絡から無線機でやらすのはどうなんだ。周波数がバレたら盗聴される可能性だってある訳だし」
「それは携帯だって同じ事だ。今の時代、何処から情報が漏れるかなんてわからない。それならば案外、無線機みたいにアナログな物の方が安全だったりするんだよ」
「そうかねぇ」と何処か納得のいっていない態度を見せながらも、痩せ型の黒服は部屋から出ていく。残った筋肉質の黒服は収納されていたキーボードを取り出し、体格に見合わない滑らかさでタイピングを始める。
黒服が入力し終えると、今まで固定されていた画面の映像が、まるで唐突に意思を持ってしまったように上下左右へ移り変わる。
モニターには「Auto Search Mode」と赤文字でデカデカと書かれている。カメラの動きは文字通り、何かを探して動いていると察しがつく。
「こうしておけば何かが画面の中で起こっても勝手に録画しておいてくれる優れものだからな。ボス第一とは言ったが、 最新テクノロジーは使うべきだよな。どうせいつもみたいにしょうもない奴だろうから、ちょっくら豪華ホテルのベッドで休憩でもするかな」
黒服はキーボードをしまって、席を立つ。壁にかかる鍵を取って、防火扉のように頑丈な作りの扉を勢いよく閉じる。モニターに流れるように映る、青い髪が注目されロックオンされているのにも気づかず。




