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異世界帰りのアルバイター  作者: 糸島荘


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 何日も付き合ってやる。そう意気込んだはいいものの、異世界に関する質問は最初だけで、その後は1週間前に捕縛した火の玉を操る男や、言霊を使ってくる迷惑客の話が主な内容だった。


 その辺りの話は隠す気なんて更々なかったので、スーパーで起こった出来事から全て知っている事は話した。佐々木は相槌を打ってはいるが、あまり聞いていない気がする。


 一応、報告書に書いてはいたので、既知の話しかなかったのか、それとも興味はないが念の為聞いたのか。どちらにしてもわざわざ聞いたのだから、もうちょっと興味があるように相槌をして欲しい。


「それであの男が言霊を使っていると、アハトが教えてくれたんです。ってあそこにはアハトも居たと思うんですけど、彼女は無事なんですか」


「心配は要らない。黒君が倒れた後、早急に全員回収させたよ。君も気づいているとは思うが、彼女は本部預かりの異能力者だからね。この程度で死ぬ事はない」


 途中までは普通に話していた佐々木だが、最後の部分だけは声色が冷たく感じたのは気のせいだろうか。まるで彼女はいつでも使い捨てられると。


 しかし、次の瞬間にはその声色から微塵もそんな事は感じさせられなかった。


「そうだね、最初にした質問以外だと、聞きたい事はこれくらいだ。大人しく答えてくれた君をこのまま拘束し続けるのは悪いね」


 佐々木は一言、「おい」と言うと影に隠れていたであろう部屋の扉が重々しく開く音がし、黒服の男数人が足音も立てず静かに入ってくる。


 佐々木の部下と思しき黒服達は、椅子に縛られて身動きできないクロを囲む形で周りに立つ。目の前に立っている黒服の男の手には拳銃がこちらに向けられており、いつでも頭を撃ち抜ける態勢を作っている。


 そして別の黒服が背後に回って縛っていた縄を解いてくれているらしい。固く縛っていたのか時間がかかっている。


 普通の人間なら頭を拳銃で撃ち抜かれれば、息の根を止める事は可能だ。人間であればの話だが。幸い、吸血鬼であるクロにとっては血を吸っていない状態だとしても、拳銃程度で死ぬ事はない。


 死ぬ事はないが、血を吸っていない状態では怪力は出せないので大人しく縛っていた縄を解いてもらう。


「ほら、立て。そのまま手を上げたままでだ」


「解放してくれてありがとよ。これはお礼だ」


 拳銃を構えている黒服までは3メートル程の距離がある。全力で飛びついたとしても、相手が拳銃を使った事があるのなら飛びつくよりも拳銃で撃たれる方が早い。


 それでも構わないと黒服に飛びつくが、連続3回の銃声が間髪入れずに鳴り響き、頭と胴体と左肩に激痛が走る。撃ち抜かれた箇所に力が加わり、後ろへと飛びそうになるが足を思い切り踏み気合いで耐える。


 銃で撃たれて立っているのを見て驚いている黒服目掛けて、渾身の右ストレートを両手が拳銃で塞がって隙だらけの腹を殴る。


「この野郎、舐めた真似を」


「おい、悶えていないで早く撃て」


 未だ大人しく座っている佐々木を除く黒服達3人が騒ぎ始める。腹を殴られて座り込んでいる黒服以外は拳銃を持っていないのか射線上に黒服がいるからなのか、何も懐から武器を出さずに素手のまま迫り来る。


 不意を突いて1人はやれたが、相手は残り3人以上。それに加え、撃たれた箇所はまだ治っていないので左腕は使えない。しかし、そんな状況を一気に拮抗状態へ持っていく為に、被弾してでも武器持ちを真っ先に狙ったのだ。


「お前ら近づくな。そこから一歩でも進んだらこいつの頭を撃ち抜く。どうだ?一気に形勢が逆転したな!」


 殴った瞬間に走った衝撃で、手から離していた拳銃を落とす前にすかさず奪っておいた。吸血鬼の再生力に頼った作戦だったが、口先では強がったものの思った通りにいって正直安堵している。


 いや、安堵していた。今の一連の動きを見て、身動きひとつ取る仕草を見せなかった、不気味な紳士である佐々木が言葉を発するまでは。


「幼稚ですね」

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