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異世界帰りのアルバイター  作者: 糸島荘
2/62

1-2


 鬼ごっこが始まって5分、意外にも燃やされずに逃げ回る事ができている。もちろん、無傷とはいかないが服が少し焦がされた程度で済んでいる。


 それも上手くゴミ箱やパイプを使う事で攻撃を逸らしているが、そろそろ燃え広がる可能性があり使えない。しかし、これ以上先に進めば、人通りがある場所へと出てしまう限界状況だ。


「おいおい、逃げ回ってばかりじゃあ面白くねえなあ!少しは反撃してみたらどうだあ?」


 体目掛けて浮いている火の玉3発を飛ばしてくる。大きさはゴルフボール程度だが、バッティングセンターのボール並みの速度で飛んでくる。1発はかろうじてゴミ箱を蹴飛ばす事で、火の玉をぶつけて避ける。


 残った2発の内1発は完全に外れるが、1発は左肩を貫く。それに伴い肩から痛みと熱が伝わる。チリチリと燃えているが、一気に燃え広がらなかったのは幸運だ。()()()()の痛みならば問題はない。


 これ以上後ろには下がれない。だが、周りには唯一あったゴミ箱が燃えた事により、もう盾になる物がない。


「何もなくなっちまったなあ!異能力者かと思えば、何も使ってこない。ちっぽけな正義感で動いちまったかあ!」


「それの何が悪い。お前も、誰もいない夜のビル街で放火するなんて小物じゃないか」


「言ってくれるじゃねえか。左肩をやったから次は右肩と思っていたが辞めだ。俺の最高火力で全身燃やしてやるよ!」


 3つ欠けていた火の玉が6つに戻ってから、1つに集まり始める。ゴルフボールくらいの大きさだった火の玉が1つ、また1つ集まる度に大きくなる。


 最終的に6つ集まると、大きさはバレーボールくらいにはなっていた。確かにこの大きさの火の玉を、今までと同じ速さで食らえば、タダでは済まないだろう。


「泣き叫んで「辞めて下さい」とでも言うかと思ったが、肝が座ってるじゃないか」


 確かにこの程度、向こうの世界に比べたら怖くない。しかし、いつになっても痛いのは嫌だ。出来るなら痛みを感じる前に殺してほしい。


 それを態度で示す為、手を広げ抵抗の意思がない事を伝える。


「なんだ、ただ諦めていただけかよ!だが残念、頭は狙わねえ。腹を抉って少しでも痛みを感じてもらうぜえ!」

 

 見た目通り、やってる事も言ってることも最低だ。こんな事なら美人の女性に殺されたかった。


 男は火の玉を器用に操り、手の位置まで持ってくる。それをまるでドッジボールをするみたいに、投げる体勢を取っている。


 思い切り、手で火の玉を持っているが熱くないのだろうか。


「食らえ!俺の燃える魔球!ファイヤーボール!」


 一気に幼稚な技となったが、威力自体はゴルフボールとは比にならないくらい高いだろう。熱が迫る。当たったら痛いんだろうなと、他人事のように考えながら目を閉じた。


「お待たせいたしました。少々、準備に手間取ってしまいました」


 重たい物が地面に着地したような、鈍い音が鳴り響く。そのすぐ後、爆発音が鳴り響くが特に痛みを感じない。


 目を開けると、まず目に映ったのは青い塊。そしてそこから生えている少女。正確に言えば、少女の体から巨大な青い腕が生えていると言った方が良いだろう。


 どうやら青い腕がその巨体を用いて火の玉を潰したらしい。


「後は貴方だけですね。えいっ」


 呆気に取られている男を、少女は感情のこもっていない声で叩き潰す。まるで害虫駆除をしているように。


 男は避ける事なく潰されて、意識を失ったようだ。


「お前は一体?隊長に言われていた奴だとは思うが」


「私は、アハト。この度、黒様と同じ特殊異能力対応課に配属されました。よろしくお願いいたします」


 そう、大変今更ではあるが俺、日威黒は普段アルバイトをしているフリーターでありながら、異能力者の対応する組織に所属しているのである。

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