クズ共は特別任務へ 第13話
「さっきから何言ってるんだお前……」
一瞬またふざけているのかとも考えたが、目の前にいる奏はいたって真面目な顔をしていた。
「文字通りよ。あんたのことをあんた以上に知っている」
「……………」
奏は、今度はゆっくりと同じことを言う。
薄明るい廊下は謎の緊張感に包まれていた。
黒水が奏から目を逸らし、身動きが取れないまま黙っていると――。
ハア、と大きなため息を真下にこぼした奏が話を始めた。
「わかったわ。あんたの知りたいこと、すべて話そうじゃない。特訓とはいったい何なのか、そしてなぜあんたを逮捕したのか――」
「――――ッ!?」
黒水はその言葉を聞いて奏の顔のほうに向きなおし、ゴクリとつばを飲み込んだ。
お風呂上がりのしっとりとした奏の長髪が黒水の頬をかすめる。
「そうね……。まずは私が風紀委員長の仕事で、第四高校に入学する新一年生全員の名簿を確認していたときの話からはじめましょうか」
「……………」
「五味黒水――」
「は、はい……」
「あんたの名前を名簿で見たとき、なぜか初めて見たとは思えなかったわ。特徴的な名前だからかと最初はそう思ったわ。一緒に住んでる貧乳女も確かあんたの名前に何か引っかかるようなことを言っていたわよね」
「……………」
「気になってあんたのこと、調べてみたの。そしたらびっくり!『怪力を持つ神童、現る』という見出しのニュースが出てきたのよ。小学生の幼いあんたの写真を見て、当時のニュースを思い出したわ。今じゃ全く面影もないけど――」
「まあ、そんな時代もあったな」
「学校の体力テストでスポーツ選手級の記録をバンバン出して一躍世間のスターに……!当時は相当チヤホヤされたんでしょうねえ?」
「だから何だってんだよ……!別に今の話と関係ねえだろっ!」
ずっと隠してきた過去の話をえぐられ、黒水はあからさまにイラつきを見せた。
しかし、奏は気にせずに話を続けた。
「それからもっと掘り下げて調べてみたの。すると、二〇三七年以降――、あんたが中学生になったころぐらいからパタリとニュースがなくなっていたわ。ただ一本、『神童五味黒水くん、中学生になり失墜』という記事だけは見つかったのだけれど……」
「……………」
「それが原因でいじめられて、その一年後には引きこもりになってクズみたいな生活を二年間も送ったってわけね」
「うるせえ……」
「それにしてもなんで中学生になった瞬間、神童と言われた怪力が魔法のようにパッと消えてしまったんでしょうねえ。気になるわあ」
「うるせえって言ってんだ!!」
黒水は奏の目の前で怒号を発した。
壁に突き立てた拳に力が入る。
しかし、奏は一切物怖じせず――。
迫ってきた黒水の顔を額でグッと押し返した。
「知りたくないの?あのとき強大な力を失ってしまった理由を――」
「他人のお前に何がわかる……?」
「私の偏差値八〇オーバーの頭で考えれば、これくらいの推理、造作もないわ」
確かこの前、主席合格と言っていた気がする。
あまり信用はしていないが。
ただ、なぜ一瞬にして最強の力を失ったのか黒水の人生において考えない日はなかったといっても過言ではない。
中一の春を境に、黒水は人生のどん底まで落ちたのだ――。
「その推理、聞かせてくれよ……」
黒水は真っ直ぐに奏の目を見て言った。
奏は黒水の気持ちに応じるように息を吸い込み――。
「あんたが最強から最弱の男になってしまった原因……。それは――」
「それは……?」
「それは――、あんたが性の喜びを知ってしまったからよ!!!」
「……………は?」




