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クズはゴミ箱へ  作者: 天方主
第ニ章 クズは学校へ
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クズは学校へ 第5話

 五味黒水は中学時代、いじめを受けていた。


 理由は単純。


 力がなかったから。


 最初は体育の時間にからかわれたりする程度だった。


 それが段々とエスカレートしていって、中一の二学期くらいから黒水はクラスのヤンキーのサンドバッグになっていた。


 よくある、いじめの典型である。


 毎日ボコボコにされ、顔と体をあざだらけにして帰宅する日々――。


 黒水の両親も、先生も、黒水に手を差し伸べてはくれなかった。


 一年間は学校に通ったが、やがて耐えられなくなり中二から不登校になった。


 何も考えず、アニメとエロゲ三昧の日々を二年間過ごした。


 だから、現実から目を背け、クズみたいな日々を送った黒水にはもはや行ける高校もなかった。


 ただひとつを除いては――。


 学園都市アンダーの<特別枠>制度だ。


 これはどんな経歴だろうと、中学三年生全員に平等に合格の可能性が与えられる。


 黒水にはもうこれしかなかった。


 一心不乱に願書を書いた――。


 久しぶりに浴びる朝日はつらかったが、それでも頑張って外に出て願書をポストに投函した――。


 だから、合格通知が来たときは飛び上がるほどにうれしかった。


 ――これから最高の人生が幕を開けるんだ。


 黒水は心の中でずっとそう考えていた。


 それなのに――――。




「なあ、どこまで行くんだ……」


「うるせえ!クズは黙ってろ!」


 取り巻きの男一人が怒号を発した。


 黒水はビクッと肩を震わせる。


 ヤンキー三人に首根っこ掴まれて人気のない場所に連行される状況――。


 それは黒水にとって中学時代のトラウマを思い起こさせるものだった。


(この世界はいじめがないと聞いていたのに……)


 黒水は心中呟いた。


 ひたすら無言で、汚れ一つない白い階段を上り続けると、自動ドアが見えてきた。


 そのドアが開いた瞬間――。


「ぐわっ――!」


 首根っこ掴まれていた手が放され、黒水は外に放り投げられた。


 そこは、屋上だった。


 ヤンキー三人が地に倒れている黒水を見下してヘラヘラと笑っていた。


「うん、やっぱり貢献ポイントに問題はなさそうだな」


「じゃああの噂は本当だったんですね、兄貴ぃ!」


「ああ」


 そう言って彼らは一歩、また一歩と黒水に近づく。


「ほら立て雑魚!」


 取り巻きに再度首根っこを掴まれて、地面から足が浮くほど持ち上げられる黒水。


「歯、食いしばれよお――」


 リーダー格であるヤンキーが黒水に対し拳を構えて――


「ぐはあ――!」


 黒水の腹にパンチを食らわせた。


 黒水はその勢いで、風に飛ばされるビニール袋のように軽く吹き飛んだ。


「このテリスってやつはほんと着心地がいいなあ。思った以上に体が動いてくれる」


「オレンジのテリスはバージョンアップ前の初期のやつみたいですから、相当弱いですねぇ、兄貴ぃ!」


「……………――――っ!?」


 とてつもない痛みに襲われて、黒水は声が出せなかった。


 その様子を見て、爆笑しながら黒水のほうに近づくヤンキーたち。


 そして、へたり込む黒水に何度も蹴りを入れた。


「ここじゃいじめることもできねえって聞いたから退屈すると思ったけどよお!てめえみたいな殴り放題のサンドバッグがこの世界にいてくれて助かったぜ!」


「これから楽しませてくれよお、オレンジ!」


 ヤンキーたちは黒水を蹴ることを辞めなかった。


 ふと、黒水の目に防犯カメラのようなものが映った。


「だれか、たすけ――ぐわっ!」


 そう言って、防犯カメラのほうに手を伸ばすが――、その手を思いっきり踏まれてしまう。


「何やってんだお前。俺たちはただゴミを蹴っているだけだぜ?助けが来るわけねーだろーが!」


 再度、ヤンキーたちの爆笑音が耳をつんざく。


 そして、黒水はヤンキーのその言葉に絶望した。


 そうか、奏の言っていた「ゴミ扱い」とはつまりこういうことだったのか、と。


 痛みの連続に苦しむ中、諦めて目を閉じかけたその時――。




「なにやってんだ。お前ら」




 朦朧とする意識の中で、少女の声が聞こえてきた。


「なんだ?てめえもオレンジじゃねえか。仲間に加わりたくなったか?」


「いや、兄貴!こいつは男を三人半殺ししてゴミ箱送りになった伝説の暴力女ですよっ!?」


「テリスの力を使ってもこいつに勝てるかどうか……」


 震えあがるような二人の取り巻きの声。


「チッ!それはめんどくせーな。今日はこの辺にしとくぞ」


「「は、はいぃ!」」


 こうして、ヤンキー三人はそそくさと屋上から出ていった。


「大丈夫かよ、ロミロミ。全身痣だらけだぞ」


 気が付くと、黒水は斧研に介抱されていた。


「別にこんなことには慣れて――、ったあ!」


 黒水の全身にズキズキと痛覚が走る。


「それにしてもロミロミ、ほんとに弱いな」


「うっせえよ。あいつら、テリスのせいで身体能力すごいことになってんだから仕方ねえだろ」


「それでも、男は強くなったほうが人生お得だぞ」


「……それができたら困ってねえよ」


 黒水は蝶の羽音のような、微かな声でそう言い、歯を食いしばった。

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