クズは学校へ 第4話
午前八時三〇分。
教室にはもう半分以上の席が埋まっていた。
黒水と斧研のほうをチラチラと見る生徒――。
こちらを見てヒソヒソと話す生徒――。
しかし、そのような生徒は案外ほんの数人で、ほとんどの生徒は風紀委員長の逮捕の話で持ち切りだった。
「はあ――、そりゃそうだよな」
初めてのクラスに緊張していた部分もあったため、あまり目立っていないことに黒水はほっとした。
これに関しては、奏のクズっぷりに感謝だ。
――と、ひとりの女子生徒が黒水のところに近づいてきた。
「オレンジ――」
「俺のテリスの色?まあ、そうだな」
「そこ、私の席なんですけど」
「ああ、すまんすま――」
「はやくどいてっ――!」
「……………」
彼女は今にも泣きそうな表情で叫んだ。
教室にいる人全員が黒水のほうに顔を向ける。
やり場のない気持ちになり、黒水はそそくさとその場を去ることしかできなかった。
彼女のほうをチラリと見ると、持参のアルコールシートで机を必死に拭いていた。
「ほんとにゴミ扱いかよ……」
ゴミ扱いされるとは奏に散々言われてきたが、その言葉が段々現実味を帯びてきた。
不意に、黒水は無性にこの教室から飛び出したくなった。
ただ、教室の扉の向こうにはシモンが立っている。
簡単には逃げられないだろう。
黒水は気持ちをグッと堪えて、ホワイトボードの隣にある掲示板を確認してみる。
自分の席がどこにあるか、情報を探していると――。
「おい、お前」
「……………」
「お前のことだよ、痴漢野郎!」
黒水は後ろのほうから声をかけられた。
振り返ると、男三人組がニヤついた表情をして立っていた。
「おい、オレンジ。ちょっと面貸せよ」
真ん中に立っていた男が扉のほうを顎でさした。
男の耳についていた銀色のピアスがギラリと光る。
――明らかに、嫌な予感がする。
黒水は首根っこを掴まれたが、抵抗せず彼らに連行されることにした。




