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クズはゴミ箱へ  作者: 天方主
第一章 クズは牢獄へ
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クズは牢獄へ 第18話

「おい、クズ共。食事の時間だ」


 風紀委員二人がプレートに置かれたごはん四人前を乱雑に置き、そそくさと出ていった。


「わーい、ごはんですぅ!」


 幸せそうな顔で倒れていた亜紀がパッと起き上がり、プレートをひとつ持っていく。


 プレートの中身は、麦飯、味噌汁、里芋の煮付けにほうれん草のおひたし、そしてプリン――。


 プリン以外は牢獄のメニューらしい、質素なものばかりだ。


「黒水様!プリンがありますよお!ああ、ありがたやあ」


「そんなに珍しいのか?」


「あたしここに入って一カ月になりますけど、デザートが出たのなんて初めてですよ!ゴミ箱にもともといた先輩もデザートは滅多に出ないって言ってましたよ!」


「まじかよ……」


 亜紀は神様に奉納するかのようにプリンを天に掲げていた。


 それにしても、デザートがなかなか出ないというのは甘党である黒水にとっては厳しい現実だった。


「このプリンは大切に味わって食べよう……。奏と斧研は食べなくていいのかよ?」


「うち、あんまお腹すいてない。プリンだけ食べる」


「こんな低俗な食事、私が口に入れるわけないでしょう!?……まあ、プリンだけいただこうかしら?」


 二人とも平常運転だった。


 でもプリンは食べるのかよ……。


 当分食べられない甘味はさすがに魅力的だったのだろう。


「しょうがない。俺がお前らの残す分も全部食ってやろう」


「せいぜい汚らしいブタのように、容器をなめまわすくらい食い散らかすといいわ!あんたみたいなクズはそれがお似合いよ」


「好きに言ってろ、クズ女」


 そう言って、黒水は里芋をひとつ口に放り込む。


 可もなく不可もなく、素朴な味が口の中に広がる。


 今日一日何も食べていない黒水にとっては、それだけでも幸福を味わえた。


「このプリン、人工甘味料のやっすい味がするわね。はーあ、自分の部屋で食べるシャインマスカットが恋しいわあ」


 奏プリンを口に運びながら、遠い目をして言った。


 ここで黒水の中に、ひとつ疑問が浮かび上がる。


「そういえば、なんでお前って今の今まで捕まらなかったんだ?タバコ吸ってたり善良な学生にも恐喝してたりしてたんだろ?こんなにクズなのに――」


「あんた、風紀委員長をなめてるわね?」


 プリンをすくう小さなスプーンを黒水に向けながら、奏が言った。


「――どういうことだ?」


「この世界で風紀委員長と言ったら、権力者よ。学校ではトップの存在。教師ですら風紀委員長には逆らえないわ。そして、風紀委員長の一番大きな仕事であり、最大のリターンはテリスの管理ができるということ――」


「……………っ!?」


 テリスの管理。


 完全には想像できないが、黒水にはその言葉に大きな魅力が感じられた。


「その気になれば、風紀委員長は自分が通う学校の生徒のテリスに記録された情報を改ざんすることだってできるし、テリスそのものの機能を停止することだってできるのよ。つまり、風紀委員長は自分のテリスを機能オフにしてタバコを吸ったり、痴漢をされた人がゴミ箱にいるクズではなく善良的な学生だったと、テリスの記録内容を変更したりすることができるってわけ――」


「へえ、風紀委員長ってそんなに凄い存在なのか……。っておい、お前いまなんつった!?」


「あら?私なにか変なこと言ったかしら?」


 奏は「ほえ?」ととぼけた顔をする。


 このクズ女め……。


 黒水は紛れもなく痴漢犯ではあるが、この世界の基準でいえば黒水は冤罪なのである。


「あくまでたった一人の学生にそこまで権利を与えるなんて……。この世界は不完全だな」


「何言ってるの?この世界は完全よ?私を風紀委員長に選んだんですもの」


「自信満々だな……」


「強いて言うならば、私をゴミ箱に放り投げてしまったことが唯一の汚点ね!」


「ここまでくると呆れてため息も出てこないわ……。――って、あれ?」


 黒水はここで異変に気付く。


 さっきまで自分のプレートにあったプリンが消えていたのだ。


 見回すと、二個目のプリンをたった今食べ終わった斧研の姿がそこにはあった。


「ああ、なんかロミロミ話に夢中だったから、いらねーのかなあって」


「そんなわけねーだろバカ!?クソお、楽しみにしてたのによお……」


「あんたはほんと、注意散漫なのよ。なんの取柄もないクズには里芋がお似合いよ」


「里芋なめんなよっ!?……おい、亜紀!俺のこと尊敬してるんだったらお前のプリン俺にくれ!」


「すみません、黒水様。プリンは最初に食べてしまいました……」


「あんなに大事そうに持ってたのに好きなもの最初に食べる派なのかよっ!?」


「ほんと滑稽だこと!オーホッホッホ!」


 お嬢様のような笑い煽りを聞きながら、黒水は涙目で里芋を箸でとった。

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