クズは牢獄へ 第17話
「あー、タバコ吸いたい」
奏は風紀委員のシモンに無理やり黒水たちのいる教室に放り込まれ、キーキーと奇声を発しながら散々暴れまわったあとの一言目がこれである。
本当にさっきまで風紀委員長だったとは思えない、クズの女が黒水の目の前にいた。
恰好もちゃんと青いテリスからオレンジ色のテリスに着替えられていた。
「ちょっと、そこのポニーテールのあんた。ヤンキー座りしているくらいだからタバコの一本や二本隠し持ってるんでしょ。それ、私に吸わせてちょーだい」
「持ってるわけないだろ……。てかお前、うちを逮捕した後取調室で念入りに持ち物検査してただろ」
「チッ!これだからクズは!使えないやつばっかりね!」
奏は舌打ちをして、ドカッと床に座った。
「はにゃあ――。風紀委員長のクズっぷりをこんな間近で見られるなんてぇ――。感激ですぅ!ハワワワワ――」
恋する乙女のように、赤らめた頬を手で押さえていた亜紀だったが、感激のあまりか、その場に倒れ込んでしまう。
「てか、お前もこの教室なのかよ……。最悪――」
「あらぁ。何か獣臭いと思ったら、クズ男がいたのねぇ。確か名前は……、ゴミクズ君だったかしら?」
「五味黒水だっ!『ろ』と『み』を忘れるな!」
まったく、ロミロミと呼ぶ斧研を見習ってほしいものだ。
「それにしてもあんたと一緒に暮らすことになるなんて。私いま人生のどん底だわ」
「いや、こっちのセリフだわ……。はあ、お前と話すの疲れるわ。俺、テリスと話すからもう話しかけんな」
「あら、言われなくてもこんなクズ童貞と私が長く話すわけないわ。ほんとなんで私ここにいるのよっ!くそっ、くそっ!」
奏はふんぞり返って壁を2回蹴った。
「まあいいや。おい、テリス」
『……なんでしょうか、五味黒水』
「ここから脱獄する方法、教えてよ。俺、この女といたくないからよ」
「サーチ実行中……。警告、検索事項に不適切なワードが含まれています。この検索は風紀委員の管理システムに記録されます。加えて、五味黒水の貢献ポイントを-50 ptします。現在の貢献ポイント、-562 pt」
「なん、だと――」
「ふん、愚かね。『その言葉』はゴミ箱では禁句に決まっているじゃない」
餌に食いつく鯉の如く、奏の、口をパクパクさせて喜ぶ様子が見て取れる。
奏にとって人の不幸は蜜の味どころか最高級和三盆糖の味がするのだろう。
「あー、うちもそれテリスに聞いてみようと思ってたからよかったわ。サンキュ、ロミロミ」
斧研は自分の爪を見ながら、感情なしに黒水に礼を言った。
「-50 ptかあ。これ結構痛いんだろうなあ」
「ちなみに私も壁を蹴ったとき、貢献ポイントを20 pt失ったわ!」
「誇らしげに言うことではないだろう!?」
この『ゴミ箱』の厳しさが段々と明るみになってきた。
少しでもこの世界にとって良くない行動をとれば、リアルタイムで刑期が伸びるというシステムだろう。
「はあ、はやくここから出て再度風紀委員長に返り咲かなければいけないというのに……」
「いや、お前みたいなクズは一生ゴミ箱だろ」
「私は成績トップでこの世界に来た天才なのよ?運だけで来たあんたとは違うの!いずれこの世界が私を求めてくるようになるわ!……まあ、あんたは一生ここでしょうけど」
「なんだと?」
奏と黒水が頭と頭がくっつきそうになるくらいに睨みあう。
……というかこいつ、そんな頭いいのかよ。
「ほらほら、二人とも喧嘩すんなよ。しばらくは一緒なんだし、仲良くしとこうな。ロミロミ、かなでん」
「かなでん?なによそれ」
「お前奏っていうんだろ?だから、かなでん」
「最底辺カーストのクズになんであだ名で呼ばれなきゃいけないのよ!」
「そりゃあかなでんも最底辺カーストのクズだからだろ?」
「ああもうなんでなのよ!さっきまで私がカーストの頂点に君臨していたのにぃ!」
こうしてまた、奏の発狂が始まるのであった。




