クズは牢獄へ 第16話
「ちなみに、黒水様!何ptでしたか?」
亜紀が目をキラキラさせて、黒水に顔を近づける。
「-512 ptだけど……」
「入学初日にもかかわらず、この低いポイント……。素晴らしすぎますっ!黒水様、いや師匠と呼ばせてください!」
「だからさっきからお前の言葉が皮肉にしか聞こえないんだよっ!」
「いやいやいや、あたしは本気で真のクズになりたいんですっ!」
「……………」
亜紀の捻じ曲がったやる気に気圧される黒水。
「いやあ、それにしてもお二方とも本当に凄いですよね。入学初日にゴミ箱に入れているんですもん。あたしなんて丸一年かかったのに……」
「あっ、そういえば――」
ゴミ箱集会での奏の言葉を思い出す。
確か、入学初日に二人がゴミ箱に収監されたと言っていた。
「――そういえばお前も今日逮捕されたらしいな。しかも、痴漢とか……。まじきもすぎ」
斧研とかいう女は相変わらずヤンキー座りで、黒水には背を向けて話していた。
その態度と言葉に、黒水は眉間にしわを寄せた。
「ああん?じゃあお前はどうなんだよ?なんで今日逮捕されたんだよ?」
「入学式終わった後、しらねー男三人にナンパされたから」
「おん」
「全員半殺しにしてやった」
「なんでだよっ!ダメに決まってるだろっ!」
「痴漢したやつに言われたくねーよ!」
斧研は顔だけ黒水のほうに向けてツッコミを入れた。
ポニーテールが揺れ、インナーカラーのオレンジが黒水の目に映る。
というか、斧研ってそんな強いやつだったのか……。
おそらく、<身体能力の大幅な向上>のインストール完了後だろうが、女が男三人半殺しはなかなかに末恐ろしい。
見た目明らかに細いのに……。インナーマッスルがとてつもないのか?
これからは言葉遣いには気を付けることにしよう……。
「まあいいや。斧研美影。とりあえずこれからよろしく。何か変なことうちにしたらぶっとばすから」
「は、はいぃ……。五味黒水っていいます。半殺しは勘弁してください」
「五味黒水……。じゃあこれからはお前のこと、ロミロミって呼ぶわ。お前は佐野亜紀だからアッキーね」
「人をハワイの伝統的なダンスみたいな名前で呼ばないでください……」
「わーい!あだ名なんて小学校ぶりですぅ!」
がっくりと項垂れる黒水とは対照的に、ばんざいして喜ぶ亜紀。
にしても、黒水だけあだ名の癖が強すぎる。
あだ名でそんなところから抽出するやつ一人もいないだろ……。
「うちとロミロミは罪も重いし、当分ここにいることになりそうだな。まあ、アッキーは知らんけど」
「あたしもお二人に負けないようにがんばりますっ!」
「「なにをがんばるんだよ……」」
斧研と黒水が思わず言葉を被ってしまう。
「まあ、牢獄という割にはつらくなさそうだし、しばらくここにいてもいいかなあ」
そんなことを黒水がつぶやいていると――。
「離しなさいよっ!シモンこら!……あ、いま私のおっぱい触ったでしょ。はい絶対触ったー!あんたもゴミ箱行きー!」
遠くのほうから聞き覚えのある、ヒステリックな叫び声が聞こえてきた。
完全に『やつ』の存在を忘れていた。
……やっぱりはやくここから出たいかも。




