表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの空の下で  作者: 里桜
9/30

9. 元カノ

「和也?」


後ろから声がして振り返ると、いまの事務所に入る前に付き合っていた元彼女だった。


「江梨子! 久しぶりだね」

「何年ぶりだろ。私の結婚式以来だから、もう5年くらいかな」

「仕事?」

「ううん、ちょっと気晴らしに買い物」

「そっか」

「…和也、なんか変わったね。カッコよくなった」

「はぁ?」

「黒、すごく似合うね」


なんだ、今日はやけに褒められるな…。俺は社長が言った通りの服を着ただけだから、やっぱり社長のセンスは抜群なんだな…。



「ね、和也、一杯付き合ってよ。ね?」

「いいけど、本当に一杯だけだぞ」

「はいはい」


近くのバーに入り、それぞれ注文してグラスを合わせた。

江梨子がまくしたてるダンナのグチは適当に聞き流し、俺はさっきの出来事を思い出していた。



付き合ってもいないのに、なんだか失恋でもした気分だ…。

でも…あの時まで自分の気持ちに気付かなかったんだよな…。いや、違うな。本当は分かっていたのに、認めないようにしてただけかもしれない。


なんでだ…?



「ねぇ、和也。誰かいい人いないの?」

「残念ながら。いまはそういうタイミングじゃないらしいよ」

「そうなんだ、こんなイイ男野放しにしとくなんて、もったいないね」

「なんだ江梨子、もう酔ってんのか?」

「酔ってないよ。本気でそう思っただけ」

「おまえ、そんなこと言うヤツだったか? 絶対負けたくないとか言って、俺のこと一度も褒めたりしたことないだろ?」


江梨子とは同期だったし、ライバルでもあったから、仕事では分かり合える反面、プライベートでは言い争いが絶えなかった気がする。

毎回、どっちが譲歩するか…って。



「そう。そうだった。いつもケンカしてたよね、私たち」

「だから別れたんだろ?」


カラン…。

グラスの中の氷を揺らし、そこに視線を落としながら江梨子が言った。


「いまさらだけど、謝る。本当にごめん。何度も嫌な思いさせて」

「江梨子、どうしたんだよ? 何かあったのか? 変だぞ」


江梨子はグラスの残りを一気に飲み干し、今度は真っ直ぐに俺を見て言った。



「ねぇ和也、このままどこか行かない?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ