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はじめまして。

オープニングはコンビニから。

「なに見てんだよ」

 それが最初の言葉だった。


 家の近くのコンビニの前に、お嬢様がドレスを着てしゃがみこんでいた。

 確かに僕は思わずジロジロ見てしまった。

 “なに見てんだよ”と言われても仕方ないかもしれない。


 でも…見るでしょ!だってパーティーに行くようなドレスだし、ネックレスとか装飾品も高価そうで目立つことこの上ない。


 だけど、不快感を与えてしまったのなら仕方がない。謝ろう。

「すみません」

「失礼だろう。って、言いながら見るなよ。鬱陶しい」

 

 確かに謝りつつもまたジロジロ見てしまった。

「すみません」

 

 僕はお嬢様の隣に座った。


「ジロジロ見て楽しいのかよ」

「楽しくはないですが気になります」

「何が気になるんだよ」

「どうしてこんな所にお嬢様がいるのかなぁって…」

「お嬢様がコンビニの前にしゃがみこむのが珍しいのかよ」

「はい、とても珍しいです」

「珍しいのか?」

「そもそも“お嬢様”が珍しいです」

「そんなに珍しいのかよ」

「ドレスってだけで珍しいです」

「そんなものなのか?」

「え?」

「一般人からすれば珍しいのか?」

「ええ、とても」

「お前、高校生だよな?」

「はい」

「何年だ?」

「2年です」

「同い年じゃねえか」

「そうでしたか」

「同い年だぞ」

「はい」

「なんで敬語なんだよ」

「僕は平民、一般人ですから」

「生まれた家が貧しかろうが裕福だろうが関係ないだろ?」

「そうでしょうか?」

「そうだよ、実際、私が稼いでいるわけじゃない。親だ、親」

「そうですけど、つい敬語になりますね」

「気に入らない、すぐに敬語をやめろ」

「ほな、やめるわ」

「うわ、いきなり関西弁になった」

「大阪から引っ越して来たばっかりなんや、しょうがないやろ」

「大阪から来たのか」

「せやからこの辺のこともよく知らん。お嬢様がいることも知らんかった」

「そうか、そうだろうな」

「“そうだろうな”とは?」

「私はここら辺では有名だからな」

「お嬢様として?」

「それもあるが、大不良として有名なんだ」

「不良に憧れているのか?」

「うん、憧れている。というより、もう不良になっている」

「……」

 お嬢様は髪こそ明るい茶色だが、落ち着いた黄色いパーティードレス、耳にピアス、指に指輪、手首にブレスレット、首にネックレス。今からどこかのパーティーに出席するかのような姿だった。

「何故黙る?」

「全く不良に見えへんねんけど」

「嘘だ!さっきの“ジロジロ見んなよ”とか、めちゃくちゃ不良っぽかっただろ?」

「いや…特に…」

「じゃあ、どうしろというんだ?」

「そもそも服装が良くない。どこから見てもお嬢様だ」

「そうなのか…って、どこを見ているんだ?」

「え?谷間」

 

 僕はビンタされた。


「見るな」

「見せるな」

「私の服を見てどう思う?」

「黄色い」

「見たままじゃないか」

「いいと思う」

「どこがいい?」

「上品に身体のラインが表現されている。Eカップだろ?」


 僕はまたビンタされた。


「私の胸の話をしているんじゃない」

「だって、ドレスやもん」

「ドレスを着た不良がいてもおかしくないだろう?」

「……」

「ほら、ピアスも指輪もブレスレットもネックレスも校則違反だぞ」

「どう見てもお嬢様や。暗くならないうちに帰った方がええで」

「どうして?」

「誘拐されるで」

「大丈夫だ」

「なんで楽観的やねん」

「そこに黒い車が停まっているだろ?」

「うん」

「私のボディーガードが乗っている」

「お嬢様やんか」

「ここまで私に反論した者はいないぞ」

「…友達いてへんやろ?」

「…私は一匹狼だからな」

「俺、帰るわ」

「待て、話の途中だぞ」

「これ以上話してもなぁ」

「不良はどんな服装をするんだ?」

「コンビニならジャージ!」

「ジャージか?」

「ジャージは知っているやろな?」

「馬鹿にするな、運動するときに着る服だ」

「そうだ」

「だが、困った」

「どうした?」

「ジャージは学校のものしか親が買ってくれない」

「少し待てるか?」

「時間はあるが」

「俺のジャージ、1着あげるよ」

「そうか、ありがたい、頼む。買い取る」

「俺のお古だから金は要らんよ」

「お前、いい奴だな」

「よく言われる。ほな、ちょっと待ってて」


 僕は黒地のジャージの上下を持ってコンビニに戻った。

 お嬢様は相変わらず缶コーヒーを飲みながらコンビニの前に座っていた。


「お待たせ」

「ありがとう」

「コンビニのトイレで着替えろよ。インナーのTシャツも持ってきてるから」

「ちょっと待ってくれ」

「どないしたんや?」

「足が痺れてすぐには動けない」

「…ごゆっくり」


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