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冤罪~夢の中で男性ハンターをやっていました~

作者: ウルエ

夢日記です。

筆者は女性ですが、男性ハンターに憑依した視点で夢を見ていました。

「おい、巨大サメの群れが来るぞ!!!」


 うたた寝から呼び起こされた俺は、舟の後方を見る。

 嘘だろ、そんな馬鹿な。ここは川なんだぞ。


 任務を終えた俺たちは、二隻の小舟で川を下って帰還している途中だった。


「奴ら……舟を狙っている、どうしてだ!」


「復讐…なのか?」


「この中の誰かが奴らの仲間を殺したに違いないッ!!そいつらを差し出せ!!」


「オラ……知ってるぞ」


 混乱の中で、その男は静かに俺を指さした。


「こいつだ!こいつとその仲間の5人だ!!巨大サメを狩っていたぞ!!」


「おい、そんなのはモンスターの習性上関係が――」


 弁解しようとしたが、すぐに怒声に遮られる。


「そいつらを押さえろ!!!」


 周りの人間に押さえつけられ、手足を拘束される。

 俺の仲間はこの舟に2人、もう片方の舟に2人乗っていたはずだ。

 見れば同じように拘束を受けている。


「やめろ!そんなことより戦わせろ、その方がずっと生存率が上がる!!」


 必死の抵抗も、冷ややかな人々の視線に晒される。


 そんな中で、悲劇は起きた。

 俺が乗っていない方の舟が、巨大サメに襲われた。

 水しぶきが10メートル以上上がる。

 水に混じって、赤い血が飛ぶ。

 悲鳴が耳をつんざく。


 ――それが、俺の仲間2人と、大勢の人間が犠牲となった、モンスターによる今年一番の事件だった。



「――というわけで、君は大勢の人を殺したも同然。死刑となる。何か異論はあるか」


「……あのなぁ、巨大サメの群れと俺たちは関係ないし、そもそもそれ以前にモンスターを狩ったのは確かに俺たちだが、それに至っても襲われたから自己防衛しただけだ」


「それでも巨大サメに手を出してはいけない」


「じゃあどうしろと?黙って喰われろってか?」


「ああ、そうだ」


 くそっ、話にならねぇ。

 どっちみち死ねって言われているようなものだ。

 こんなの裁判でも何でもない。


「――あのっ」


 ふと、俺を拘束している調査員の女性が、声を上げる。


「この人は……仲間を護ろうとしただけだと、思います」


 おお、庇ってくれるのか。赤茶のストレートな髪を伸ばしていて、結構美人のお姉さんだった。


「黙りなさい」


「私には、この人はそんな極悪人になんて見えません、どうか、お考え直しを――」


「黙りなさい。判決は既に決している。彼の腕に装置を埋込なさい」


「っ……畏まりました」


 そう言われ、彼女は俺の腕の上に何かの装置を置き、ボタンを押す。


「ぐ…っ!」


 激痛が走り、何かが刺しこまれる。


「それは処刑道具だ。24時間後に即死性の毒が注入される。君の仲間だった他の2人にも同様な装置を既に埋め込んだ。無理引き剥がそうとするなら――君の仲間に即時で即死性の毒が注入されるようになっている。……それじゃあ、人生最後の一日を悔いのないように過ごしなさい」


 ふざけている。

 仲間を人質に取られたも同然の状態で、家族に最後の別れを告げるための時間だろう。

 こんなんで殺されて、たまるものか。


 俺に残された選択肢は、この装置を刺激しないように解除するか、身の潔白を証明するしかない。


 裁判長が去ると、調査員のお姉さんは心配そうな顔で覗き込んでくる。


「大丈夫…?」


「俺は死ぬつもりはない。24時間だろ?それまでにせいぜいあがいてみるさ」


「……協力するわ。私も、この判決には納得がいっていないし、それに……貴方の助けになりたい」


「嬉しい申し出だね。とりあえず、家に戻ろうと思う。一応、顔を見せてやらねぇと、心配するだろうから」


「家族はいるの?」


「妹が一人だけ」


 そうして、俺たちは町の離れにある住宅地へ向かった。



「あいつ、居ねぇな。出かけてるのか」


 家に妹の姿はなく、気づけば、調査員のお姉さんが家の裏庭に回り込んでいた。


「どうしたんだ、ボーっとして」


「あ、ごめんなさい。町に、こんなところがあったんだ。綺麗だなって、思ってたの」


 川のせせらぎ、虫の声。

 町と言っても一番離れにあって、森に近いここは、町の中心で育った彼女にとって新鮮だったのだろう。


「俺、子供の頃からずっとこの庭、それから庭に続く森で遊んでたんだ」


「モンスターとか、居なかったの?」


「居たさ。最初にモンスターを退治したのは5歳の頃だっけ。モンスターはな、町に入り込まないんじゃなくて、こうして、一番離れに住むハンターが退治しているから、町に入っていかないんだ。俺は父親もハンターだったから、戦うスキルを幼い頃から叩き込まれてた」


「強いの?」


「ああ。この辺りのダンジョンは、ほぼクリアしているぞ」


「そう、だったんだ。知らなかった。私、ずっと町の中央で育って、仕事をしてきたから、騎士団が町を護ってくれているのだと思ってた」


「あいつらは悪人は狩っても、モンスターを狩ったりはしないさ」


「町を護っているのは、貴方みたいなハンターなんだね」


「……なぁ、せっかくだから、この辺りの森を案内しようか?」


「いいの?貴方の腕の装置を外す方法を見つけないといけないんじゃ…」


「どうせ方法がまだ思い浮かんでないんだ。森を歩いているうちに閃くかもしれない」


 そうして、二人でまるでデートするかのように、森に入っていった。



 驚いたことに、調査員のお姉さんは回復魔法が使えた。

 モンスターが出るたびに俺が戦ったのだが、後ろでホーリーを放ちながら、俺が怪我をするとすぐに癒してくれた。

 おかげでどんどん森の奥に入っていくことが出来た。


「あんた、すげえな。あんたとパーティーが組めたら、どんなに素敵なことだったんだろうか」


「貴方だって、すごく強くて驚いたわ。この町は……惜しい人をなくそうとしている」


「……もうすぐ夜だ、一旦戻ろうか」


 夜は、モンスターの強さが桁違いになるからと、外出をしないのがこの町の習慣である。


 戻る道中で、ハンターへの情報共有として建てられた魔法ディスプレイが目に入る。


「……待てよ」


 ふと、いつもと違うそのディスプレイの様子に、俺は気づいた。


「ダンジョンの情報が変わっている。そうか、夜に出かけたことがなかったけれど、夜のダンジョンは昼のものと違うんだ」


「どう違うの?」


「ほら、普段ならレベル38のここが一番難易度が高いんだけど、夜ならレベル48になる」


 そう言いつつ俺はディスプレイを指さす。

 因みにレベル38のダンジョンは未踏のものだ。それがさらに危険度が上がっている。

 俺はこの辺りの殆どのダンジョンをクリアしていると言ったが、二番目のレベル28のものまでしかクリアしていない。それがこの町でのギネスでもある。因みに、これも夜限定でレベル38まで上がっていた。


「……ねぇ、私、思い出したことがあるんだけど」


「何?」


「白虎伝説を、知っている?」


「――ああ。この世界に、4体だけ存在する神体の一つだろ」


「そう。普段なら開かないダンジョンのさらに奥の、隠しダンジョンに祀られていると。神体から授けられる聖水は、飲めばあらゆる毒物や邪念を、払ってくれる」


「!……なるほどな。俺の腕に埋め込まれている、発射寸前のこの毒物にも効くと」


「でも、伝説でしか」


「いや、十分だ。希望が持てた、ありがとう」


 そんな時だった、後ろから、少し不機嫌な声で話しかけられたのは。


「戻ってきたと思ったらバカ兄貴、ここで何をしているわけ?」


 黒髪ロングに黒いローブ。魔法使いの俺の妹だ。


「あ、ああ。いつの間に」


 妹の存在に気づいた俺は、咄嗟に左手を隠した。


「?……今何を隠したのよ、見せなさい」


「え、いや。これは」


 見せようとしない俺に、ずかずかと近づいて、彼女は俺の手を掴んで目の前に持ってきた。


「……何よ、これ」


 ため息をついて、俺は今までの経緯と、たった今調査員のお姉さんが教えてくれた対策案について話した。


「……バカじゃないの、この町も、お兄ちゃんも……」


「でも、これしか方法がないんだ」


「分かってるわよ!私も協力するわ。3人でパーティーを組みましょ。だから……居なくならないで」


 そう言う妹の声は震えていた。

 俺は今の状況で何か約束することはできなかった。


 沈黙を破ったのは、調査員のお姉さんの方だった。


「それじゃあ、どうしよう。白虎様がいるダンジョンというと、やっぱり一番難易度が高いこのレベル48かな?ここに入るっていうのは――」


「危険だ」


 その案を、俺は即座に否定した。


「俺たちで太刀打ちできる相手じゃない。昼間のレベル38の時点で未踏なんだ。やめた方がいい」


「じゃあ、どうすれば」


「勘だけど……白虎で言えば、青龍、朱雀、玄武と合わせて方位の四神だ。どこを真ん中に置くかにもよるけど、この大陸の形状と、この大陸のダンジョン全てを合わせて、線を引くと――多分、この町にある、西の白虎は、ここに居る」


 そう言って、俺は昼間の時点でレベル28だった――今はレベル38のダンジョンを指さした。


「なるほどね、バカ兄貴にしてはいい線いってると思う」


「はは」


「このレベル38のダンジョンに、私たち3人で?」


「ああ。元のレベル28は、俺がソロでクリアしたことがある。難易度的にはついていけるだろう。隠しダンジョンの方の難しさは分からないが……」


「行くわよ。それしか方法がないんでしょ」


 妹が不機嫌そうにしながらも、杖を握りしめていた。


「…でも、どうやって行くの?ここから結構距離があるんじゃ」


 その時だった。

 ブーっという鈍く長い汽笛が、辺り一帯に響く。


「夜行列車だ」


 今俺たちがいるのはちょうど橋の近くであり、その橋の下を、黒い蒸気機関車が通っていった。


「いいなぁ、あれ。朝には森を抜けて首都に到着するものよ。いつかは乗りたいな」


 調査員のお姉さんのその言葉を聞いて、俺は瞬時に線路の位置をマップ上で思い浮かんでみた。


「じゃあ、乗ろうか」


「え?」


 彼女が何かを言うよりも前に、俺は左手にお姉さんを、右手に我が妹を抱いて、橋から飛び降りた。


「えええええ!?」


 お姉さんの悲鳴が響く。

 難なくと列車の天井に着地すると、彼女たちを下ろした。


「この列車、ダンジョンの近くを通るんだよ。近道さ」


 そう言って笑う俺を、妹は睨んでいた。



 ダンジョンに入ってからの俺たちは、快進撃だった。


「時間がない、ドロップアイテムも宝箱も無視しろ。真っすぐに、ボスの部屋へ向かうぞ」


 流石限定ダンジョンだろうか、昼のものとは比べ物にならないほど、財宝が落ちている。


「分かったわ!」


「ん」


 妹は軽く返事しながら大規模魔法陣を展開する。炎に吹き飛ばされて、モンスターがまた大量に焦げていく。

 魔法が打ち漏れたモンスターは、基本俺が斬って処理をする。調査員のお姉さんは俺にバフをかけながら、傷ついたときには瞬時に回復魔法を使ってくれる。心強いわけだ。


 ルートは俺の頭の中に入っていた。一度はクリアしたダンジョンだ。最短でボスの部屋までたどり着くことが出来た。


 俺たちがボスの部屋に入ると、退路を塞ぐように今来た通路の方に結界が張られる。


「こいつを倒したら、隠しダンジョンの扉が開くのね?」


 妹が大げさに杖を構える、開幕と同時に大技を使うつもりなんだろう。


「分からないけど、そう信じるしかないな」


「準備は出来ているわ!いつでも攻撃を始めて!」


 後ろから調査員のお姉さんの声が響く。

 本当に、最高な仲間たちだ。

 俺は久々に、ボスを前にして、恐怖心よりも高揚感が打ち勝っていた。


「――行くぞ」


 武器を構えて、俺はボスへと突進した。

夢はここで終わっています。

この後の展開は、皆様のご想像にお任せします。


久しぶりに見た、めちゃくちゃグラフィックが綺麗な夢でした。

森の解像度が高く、夜行列車に飛び乗る時もワクワクしていました。

(主人公に憑依している感覚の一人称視点で夢を見ました)


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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