冤罪~夢の中で男性ハンターをやっていました~
夢日記です。
筆者は女性ですが、男性ハンターに憑依した視点で夢を見ていました。
「おい、巨大サメの群れが来るぞ!!!」
うたた寝から呼び起こされた俺は、舟の後方を見る。
嘘だろ、そんな馬鹿な。ここは川なんだぞ。
任務を終えた俺たちは、二隻の小舟で川を下って帰還している途中だった。
「奴ら……舟を狙っている、どうしてだ!」
「復讐…なのか?」
「この中の誰かが奴らの仲間を殺したに違いないッ!!そいつらを差し出せ!!」
「オラ……知ってるぞ」
混乱の中で、その男は静かに俺を指さした。
「こいつだ!こいつとその仲間の5人だ!!巨大サメを狩っていたぞ!!」
「おい、そんなのはモンスターの習性上関係が――」
弁解しようとしたが、すぐに怒声に遮られる。
「そいつらを押さえろ!!!」
周りの人間に押さえつけられ、手足を拘束される。
俺の仲間はこの舟に2人、もう片方の舟に2人乗っていたはずだ。
見れば同じように拘束を受けている。
「やめろ!そんなことより戦わせろ、その方がずっと生存率が上がる!!」
必死の抵抗も、冷ややかな人々の視線に晒される。
そんな中で、悲劇は起きた。
俺が乗っていない方の舟が、巨大サメに襲われた。
水しぶきが10メートル以上上がる。
水に混じって、赤い血が飛ぶ。
悲鳴が耳をつんざく。
――それが、俺の仲間2人と、大勢の人間が犠牲となった、モンスターによる今年一番の事件だった。
*
「――というわけで、君は大勢の人を殺したも同然。死刑となる。何か異論はあるか」
「……あのなぁ、巨大サメの群れと俺たちは関係ないし、そもそもそれ以前にモンスターを狩ったのは確かに俺たちだが、それに至っても襲われたから自己防衛しただけだ」
「それでも巨大サメに手を出してはいけない」
「じゃあどうしろと?黙って喰われろってか?」
「ああ、そうだ」
くそっ、話にならねぇ。
どっちみち死ねって言われているようなものだ。
こんなの裁判でも何でもない。
「――あのっ」
ふと、俺を拘束している調査員の女性が、声を上げる。
「この人は……仲間を護ろうとしただけだと、思います」
おお、庇ってくれるのか。赤茶のストレートな髪を伸ばしていて、結構美人のお姉さんだった。
「黙りなさい」
「私には、この人はそんな極悪人になんて見えません、どうか、お考え直しを――」
「黙りなさい。判決は既に決している。彼の腕に装置を埋込なさい」
「っ……畏まりました」
そう言われ、彼女は俺の腕の上に何かの装置を置き、ボタンを押す。
「ぐ…っ!」
激痛が走り、何かが刺しこまれる。
「それは処刑道具だ。24時間後に即死性の毒が注入される。君の仲間だった他の2人にも同様な装置を既に埋め込んだ。無理引き剥がそうとするなら――君の仲間に即時で即死性の毒が注入されるようになっている。……それじゃあ、人生最後の一日を悔いのないように過ごしなさい」
ふざけている。
仲間を人質に取られたも同然の状態で、家族に最後の別れを告げるための時間だろう。
こんなんで殺されて、たまるものか。
俺に残された選択肢は、この装置を刺激しないように解除するか、身の潔白を証明するしかない。
裁判長が去ると、調査員のお姉さんは心配そうな顔で覗き込んでくる。
「大丈夫…?」
「俺は死ぬつもりはない。24時間だろ?それまでにせいぜいあがいてみるさ」
「……協力するわ。私も、この判決には納得がいっていないし、それに……貴方の助けになりたい」
「嬉しい申し出だね。とりあえず、家に戻ろうと思う。一応、顔を見せてやらねぇと、心配するだろうから」
「家族はいるの?」
「妹が一人だけ」
そうして、俺たちは町の離れにある住宅地へ向かった。
*
「あいつ、居ねぇな。出かけてるのか」
家に妹の姿はなく、気づけば、調査員のお姉さんが家の裏庭に回り込んでいた。
「どうしたんだ、ボーっとして」
「あ、ごめんなさい。町に、こんなところがあったんだ。綺麗だなって、思ってたの」
川のせせらぎ、虫の声。
町と言っても一番離れにあって、森に近いここは、町の中心で育った彼女にとって新鮮だったのだろう。
「俺、子供の頃からずっとこの庭、それから庭に続く森で遊んでたんだ」
「モンスターとか、居なかったの?」
「居たさ。最初にモンスターを退治したのは5歳の頃だっけ。モンスターはな、町に入り込まないんじゃなくて、こうして、一番離れに住むハンターが退治しているから、町に入っていかないんだ。俺は父親もハンターだったから、戦うスキルを幼い頃から叩き込まれてた」
「強いの?」
「ああ。この辺りのダンジョンは、ほぼクリアしているぞ」
「そう、だったんだ。知らなかった。私、ずっと町の中央で育って、仕事をしてきたから、騎士団が町を護ってくれているのだと思ってた」
「あいつらは悪人は狩っても、モンスターを狩ったりはしないさ」
「町を護っているのは、貴方みたいなハンターなんだね」
「……なぁ、せっかくだから、この辺りの森を案内しようか?」
「いいの?貴方の腕の装置を外す方法を見つけないといけないんじゃ…」
「どうせ方法がまだ思い浮かんでないんだ。森を歩いているうちに閃くかもしれない」
そうして、二人でまるでデートするかのように、森に入っていった。
*
驚いたことに、調査員のお姉さんは回復魔法が使えた。
モンスターが出るたびに俺が戦ったのだが、後ろでホーリーを放ちながら、俺が怪我をするとすぐに癒してくれた。
おかげでどんどん森の奥に入っていくことが出来た。
「あんた、すげえな。あんたとパーティーが組めたら、どんなに素敵なことだったんだろうか」
「貴方だって、すごく強くて驚いたわ。この町は……惜しい人をなくそうとしている」
「……もうすぐ夜だ、一旦戻ろうか」
夜は、モンスターの強さが桁違いになるからと、外出をしないのがこの町の習慣である。
戻る道中で、ハンターへの情報共有として建てられた魔法ディスプレイが目に入る。
「……待てよ」
ふと、いつもと違うそのディスプレイの様子に、俺は気づいた。
「ダンジョンの情報が変わっている。そうか、夜に出かけたことがなかったけれど、夜のダンジョンは昼のものと違うんだ」
「どう違うの?」
「ほら、普段ならレベル38のここが一番難易度が高いんだけど、夜ならレベル48になる」
そう言いつつ俺はディスプレイを指さす。
因みにレベル38のダンジョンは未踏のものだ。それがさらに危険度が上がっている。
俺はこの辺りの殆どのダンジョンをクリアしていると言ったが、二番目のレベル28のものまでしかクリアしていない。それがこの町でのギネスでもある。因みに、これも夜限定でレベル38まで上がっていた。
「……ねぇ、私、思い出したことがあるんだけど」
「何?」
「白虎伝説を、知っている?」
「――ああ。この世界に、4体だけ存在する神体の一つだろ」
「そう。普段なら開かないダンジョンのさらに奥の、隠しダンジョンに祀られていると。神体から授けられる聖水は、飲めばあらゆる毒物や邪念を、払ってくれる」
「!……なるほどな。俺の腕に埋め込まれている、発射寸前のこの毒物にも効くと」
「でも、伝説でしか」
「いや、十分だ。希望が持てた、ありがとう」
そんな時だった、後ろから、少し不機嫌な声で話しかけられたのは。
「戻ってきたと思ったらバカ兄貴、ここで何をしているわけ?」
黒髪ロングに黒いローブ。魔法使いの俺の妹だ。
「あ、ああ。いつの間に」
妹の存在に気づいた俺は、咄嗟に左手を隠した。
「?……今何を隠したのよ、見せなさい」
「え、いや。これは」
見せようとしない俺に、ずかずかと近づいて、彼女は俺の手を掴んで目の前に持ってきた。
「……何よ、これ」
ため息をついて、俺は今までの経緯と、たった今調査員のお姉さんが教えてくれた対策案について話した。
「……バカじゃないの、この町も、お兄ちゃんも……」
「でも、これしか方法がないんだ」
「分かってるわよ!私も協力するわ。3人でパーティーを組みましょ。だから……居なくならないで」
そう言う妹の声は震えていた。
俺は今の状況で何か約束することはできなかった。
沈黙を破ったのは、調査員のお姉さんの方だった。
「それじゃあ、どうしよう。白虎様がいるダンジョンというと、やっぱり一番難易度が高いこのレベル48かな?ここに入るっていうのは――」
「危険だ」
その案を、俺は即座に否定した。
「俺たちで太刀打ちできる相手じゃない。昼間のレベル38の時点で未踏なんだ。やめた方がいい」
「じゃあ、どうすれば」
「勘だけど……白虎で言えば、青龍、朱雀、玄武と合わせて方位の四神だ。どこを真ん中に置くかにもよるけど、この大陸の形状と、この大陸のダンジョン全てを合わせて、線を引くと――多分、この町にある、西の白虎は、ここに居る」
そう言って、俺は昼間の時点でレベル28だった――今はレベル38のダンジョンを指さした。
「なるほどね、バカ兄貴にしてはいい線いってると思う」
「はは」
「このレベル38のダンジョンに、私たち3人で?」
「ああ。元のレベル28は、俺がソロでクリアしたことがある。難易度的にはついていけるだろう。隠しダンジョンの方の難しさは分からないが……」
「行くわよ。それしか方法がないんでしょ」
妹が不機嫌そうにしながらも、杖を握りしめていた。
「…でも、どうやって行くの?ここから結構距離があるんじゃ」
その時だった。
ブーっという鈍く長い汽笛が、辺り一帯に響く。
「夜行列車だ」
今俺たちがいるのはちょうど橋の近くであり、その橋の下を、黒い蒸気機関車が通っていった。
「いいなぁ、あれ。朝には森を抜けて首都に到着するものよ。いつかは乗りたいな」
調査員のお姉さんのその言葉を聞いて、俺は瞬時に線路の位置をマップ上で思い浮かんでみた。
「じゃあ、乗ろうか」
「え?」
彼女が何かを言うよりも前に、俺は左手にお姉さんを、右手に我が妹を抱いて、橋から飛び降りた。
「えええええ!?」
お姉さんの悲鳴が響く。
難なくと列車の天井に着地すると、彼女たちを下ろした。
「この列車、ダンジョンの近くを通るんだよ。近道さ」
そう言って笑う俺を、妹は睨んでいた。
*
ダンジョンに入ってからの俺たちは、快進撃だった。
「時間がない、ドロップアイテムも宝箱も無視しろ。真っすぐに、ボスの部屋へ向かうぞ」
流石限定ダンジョンだろうか、昼のものとは比べ物にならないほど、財宝が落ちている。
「分かったわ!」
「ん」
妹は軽く返事しながら大規模魔法陣を展開する。炎に吹き飛ばされて、モンスターがまた大量に焦げていく。
魔法が打ち漏れたモンスターは、基本俺が斬って処理をする。調査員のお姉さんは俺にバフをかけながら、傷ついたときには瞬時に回復魔法を使ってくれる。心強いわけだ。
ルートは俺の頭の中に入っていた。一度はクリアしたダンジョンだ。最短でボスの部屋までたどり着くことが出来た。
俺たちがボスの部屋に入ると、退路を塞ぐように今来た通路の方に結界が張られる。
「こいつを倒したら、隠しダンジョンの扉が開くのね?」
妹が大げさに杖を構える、開幕と同時に大技を使うつもりなんだろう。
「分からないけど、そう信じるしかないな」
「準備は出来ているわ!いつでも攻撃を始めて!」
後ろから調査員のお姉さんの声が響く。
本当に、最高な仲間たちだ。
俺は久々に、ボスを前にして、恐怖心よりも高揚感が打ち勝っていた。
「――行くぞ」
武器を構えて、俺はボスへと突進した。
夢はここで終わっています。
この後の展開は、皆様のご想像にお任せします。
久しぶりに見た、めちゃくちゃグラフィックが綺麗な夢でした。
森の解像度が高く、夜行列車に飛び乗る時もワクワクしていました。
(主人公に憑依している感覚の一人称視点で夢を見ました)
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




