2-11『福田湊奪還作戦』
約束の上半暦を迎えた。
昨日声明を出した際に、銀谷国の兼望様が「靜金通貨100億は銀谷が用意するから、俺に100億1000万払え」と要求してこられ、萌加様がそれを承諾したことで支払額は増したものの当日に膨大な額を輸送する手間は省かれた。
しかし萌加様は、
「わたしたちが用意する靜金通貨は1000万と500枚あればいいよ」
と仰り、そのうちの500枚を竜洋に握らせて、直ちに銀谷へ向かうように命令された。
また僕も、靜通商協労者々に手紙を認めたため、それを竜洋に持たせた。
竜洋は早朝、日渡を出発した。
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日渡を発った竜洋は、1時間ほどで袋石国に入国し、街道沿いの宿場で袋石夜鳥と落ち合った。
正午までに銀谷に着くためには、普通に歩いては間に合わないため、前日の東岸諸国会議で萌加から夜鳥に竜洋を運ぶように依頼があったのだった。
そうして夜鳥に運ばれるようにして、午前9時に竜洋は銀谷国に入国。金谷神社にて夜鳥を介して兼望と対談し、靜金通貨100億を渡されて件の人類遺跡こと廃隧道に案内された。
なお、流石に100億もの金通貨はひとりで運べないため、銀谷国の兵5000を率いてやって来た。
まるで戦争に赴くかのような大軍を目撃した国民は皆恐れ慄いたが、これはただの物資運搬であり戦意など誰も有していない。
ただ、竜洋はその枠より除外する。
彼は今、湊を救出するためならば戦闘も辞さない構えでいるのだから。
正午前、廃隧道に竜洋が到着した。
「靜通商協労者々はおるか、日渡国渡海自治領小臣、東河口竜洋である。交渉をせよ」
竜洋は先の見えない隧道にそう言った。すると中から貧弱ながらも武装をした四者の男女が現れた。
「靜通商協労者々か?」
竜洋が訊くと、
「巷じゃそう呼ばれてるぜ」
その中のひとりがそう答えた。
「ならば本題を告げる。福田湊を解放せよ」
「取引の条件は?」
「靜金通貨100億を用意した」
竜洋がそう言うと、5000もの銀谷兵が自分の運んで来た靜金通貨が入った巾着袋を掲げて見せた。
その姿はまるで圧巻であった。
「確認する」
靜通商協労者々はそう言って兵士の元へと向かおうとするも、竜洋が「待て」と声を出して、
「お前らには先にこれをくれてやる」
と懐から靜金通貨500枚が入った袋を取り出して放り投げた。
隧道の入り口に散らばる、黄金色の小判。
男女は目を輝かせてそれに食いついた。地面を貪るように必死に這い蹲り、足元に落ちた金貨を拾っていた。
その瞬間、
『風』
竜洋は自身の権能で風に乗り、靜通商協労者々を飛び越えて、背後の廃隧道に飛び込んだ。
それに気付いた靜通商協労者々だったが、既に竜洋が自分たちの背後で気を失った湊の縄を解き、担いでいるのを目にして、この金貨が囮であったことに初めて気付くのだった。
「くそッ、卑怯な真似しやがって!」
そう叫んだ靜通商協労者々の大男が、仲間の小柄な少女の背中をド突いて「やれ!」と命令する。
少女はその権能『無能力』で辺り一帯の能力を無効化した。
竜洋は風を起こそうとして、権能が発動されないことに驚いたが、能力が無効化されるのは既に幌筵島で経験していたため然程焦ることはなく、正面から抜刀して迫ってくる靜通商協労者々の対処に及ぶのだった。
意識のない湊を抱き抱えながら、四方から迫る四者の敵を、刀で冷静に対処する。
隧道の中に、刀と刀が交わる音が響く。
竜洋の動きは素早く、正面、左、右、あらゆる方向から迫る刀を、時には何も見ることなく完璧に防いでいた。
それどころか、反撃の余裕すらあるように見える。しかし彼は、その余力を残しながらも反撃には転じない。ただ冷静に、相手の太刀筋を見極めながら対処をするのみであった。
「なんだこいつ!? 能力を封じられているくせにっ!」
「うぐっ……! 一撃一撃が、重いっ……!」
「女背負いながら、なんでこんな動けるんだっ!」
「それだけじゃない、わたしたち、あの女の子に一切近づけてない。立ち回りが上手すぎる」
四者は竜洋と交戦しながらそんな会話をする。
その間にも、竜洋は冷静に敵全員の行動を見ながら刀を振って、一歩、また一歩と着実に攻撃を対処しながら隧道の出口へと向かっていた。
狭い隧道、いつ崩れてもおかしくないような人類文明の遺産で、ひとりの少女を庇いながら能力を使わずに立ち回る。
竜洋はかつて、渡海国の臣家の用心棒であった。その役目は臣家の者、特に湊を外敵より守ることである。
彼はその役目を当然のようにこなしているだけだ。このような有事のために日々鍛錬を続けてきていたのだ。
能力が封じられようが構わない。やるべきことは、腕の中にいる少女を守り抜くだけだ。
交わる刀、その激しさを象徴するかのように火花さえも飛び交う。
4対1という数の差と、守るべき少女が背中にいるというハンデがありながら、明らかに竜洋が優勢であった。
彼の強さは、その戦いを静観している銀谷の兵士らが恐れ慄くほどであった。
日渡など所詮は弱小国家。濱竹に縋っていなければ生き延びられないような、ろくに軍事力も持たない国家であるというのが靜連邦における共通認識である。
だが、そうではない可能性が示された。
「うむ、解ったぞ」
竜洋はそう呟くと、視線は正面の大男に向けたまま、左から迫るヒョロ長い男へと一気に間合いを詰めて、その懐に入り込んだ。
「なっ!?」
誰もがその動きに困惑するが、
「遅い」
気付けば竜洋はその男からも離れていて、当初竜洋の背後にいたチビデブ体型の男の正面に立っていた。
「ひぃぃ!?」
竜洋は怯えるチビデブに蹴りを加えた。チビデブは隧道の壁面に頭を打ち付けて、そのまま意識を飛ばした。
「嘘だろ……」
予想外の動きに驚きや呆れを通り越して唖然とするしかないヒョロ長男だが、もうその頃には竜洋がヒョロ長の後ろに回っていて、その首を手刀で叩かれ無力化させられた。
「な、なぁ、待った、一旦話し合おう」
大柄の男がそう竜洋に話しかけるも、視線の先から竜洋は既に消えていて、
「話し合う必要など、俺は微塵も感じていない」
返事は背後から聞こえ、
「っ!?」
大柄の男の意識は竜洋の刀の峰によって絶たれたのだった。
「……」
それを眺めることしかできない上神種の少女。
竜洋は彼女へと視線を向けた。その眼光は鋭く、許しを乞おうが無駄であると少女は悟った。
少女はそのまま力無く座り込んだ。
その時、既に竜洋は少女の目の前に立っていた。
竜洋はひとりで靜通商協労者々の男どもを無力化させた。
男三者、それぞれ気絶し倒れている。
竜洋は、座り込んだ小柄な少女に刃を突きつけ、
「聞きたい話が山ほどある。投降しろ、そして着いてこい」
と言い、湊を縛っていた縄で少女を縛り上げた。
それと一緒に、少女が先ほど拾い集めた金貨を気を失っている男の周りに放り投げた。
少女は「わたしのお金……」と名残惜しそうに手を伸ばしている。それを見て竜洋が「そう易々と手にできる通貨など存在しない、諦めろ」と告げた。
「……くそッ! この野郎……!」
大柄の男が意識を取り戻して去ろうとした竜洋を見た。
「なんだ、起きるのが早いな」
竜洋はそう返すと振り返って、
「都合がいい。我が国の臣から伝言だ、聞け」
と、大智から渡された文を読み上げた。
「『福田湊の価値は靜金通貨100億よりもずっと重い。なのに貴様らはそんな安値で取引しようと言うのだから腹が立った。これは俺が思う福田湊の価値である。喜んで受け取るが良い。日渡国臣、磐田大智』」
そうして竜洋は、隧道に背を向けて立ち去った。
「はぁ? おいコラどういう意味だ!? とっとと、靜金通貨100億渡せゴラ!」
男がそう言って立ち上がった次の瞬間、
「『魂龍食』」
どこからともなく女の声が聞こえて、その直後に男たちの足元に散らばった靜金通貨500枚が白い御霊に姿を変えた。
「う、うわぁ! なんだ、おいっ、離れろ! やめろ! やめっ……!」
そして御霊は、男たちの全身を包み込むように這いつくばると、その空腹を満たすように全身を貪り尽くすのだった。
言わずもがな、御霊術である。
「命の価値など金銭でやり取りできない。それをしようなどと思った時点で、死を覚悟せよ」
彼らが喰らわれていく中で、竜洋はそう呟いた。
竜洋の背中に背負われた福田湊が、薄らと目を開けて、喰らわれていく男どものことを虚な表情で見ていたのを、後ろを歩く靜通商協労者々の少女ははっきりと確認していた。
竜洋はその後、銀谷の兵士を率いて金谷神社に戻ると、兼望より借りた靜金通貨100億を欠けることなくそのまま返し、「後日、追加で1000万を支払います」と告げて、湊と少女を連れて日渡に戻った。
なお、帰りは夜鳥とではなく、迎えに来た兎山明と戻った。
明は当然、靜通商協労者々の男どもを殺害するべく御霊術を発動した本人である。
そもそも、竜洋が萌加から持たされた靜金通貨500枚が明によって作られた偽造品であり、元は御霊である。靜金通貨は神々同士の交渉材料であり、市場には出回っていない。そのため雑な偽造であっても下神種や上神種には本物か確かめる術がないのであった。
「それで、あなた名前は何というのかしら?」
日渡国渡海自治領の福田神社にて、兎山明が連れ帰ってきた靜通商協労者々の少女に質問する。
明の隣には小臣の竜洋が座る。小巫女の湊は念の為に安静を取るべく、巫女館で鎌田巡の付き添いの元休息している。
名前を訊かれた少女は、小さな口を開いた。
「……落石リン」
「歳は?」
「……15」
「出身地と神種は?」
「……出身はサハ大陸の衣堆国、神種は上神種」
そこまで聞いて、明と竜洋は顔を見合わせた。この少女の産まれがサハ大陸であったことに驚いたからだ。
「あなた、サハ大陸の産まれなの? てことは、戦争で捕虜になって靜連邦まで連れて来られたの?」
明がそう訊くと、「そうです」と短い返事がきた。
「上神種と言うが、上級上神種か下級上神種、どちらだ?」
竜洋が訊くと、
「私の父親は臣でした。でもあの戦争で、目の前で濱竹の巫女に殺されました。私も左腕を切り落とされました」
そう返した少女は自身の左腕を捲って、その義手を顕にした。
「あの巫女ならやりかねないわ。目をつけられて災難だったわね」
明はそう言って、次の質問をした。
「それで、この戦後3年のうちにあなたが辿った道を教えてほしいのだけど。それと、靜通商協労者々という組織や今回の事件の目的についても詳しく聞きたいわ」
その言葉に、リンは俯いて、静かに淡々と話し出した。その表情は竜洋や明には見えていないが、悔しそうで、今にも泣きそうであった。
「……私は、大陸が降伏してすぐ、あの巫女の命令で終戦を待たずに濱竹国へ連れて来られました。笠井と名乗る軍官に拘束されて、濱竹に着いたら投獄されました。そこで終戦を迎えて、靜国に移送され、その他の北端上神種と共に裁判にかけられて、周りが死刑を宣告される中、無能力者の解析をする名目で無期懲役になりました。それからは靜国の地下牢で過ごしながら、研究機関で無能力についての解析をされてきたけれど、ある日突然、宇治枝国に移送されて、もっと劣悪な牢獄に入れられました。ですが宇治枝の神がある日、いきなり国内の罪人を恩赦すると言い出して解放されることになりました。突然自由になったものの身寄りのなかった私は、元盗賊団の男たちに買い取られて連れ回されることになりました。そして男たちは『靜通商協労者々』を立ち上げました。その組織には、高額だけれど危険な仕事がどこからともなく湧いてきて、どれも雇い主は不明だったけれど、資金を渡してくれるのはいつも南四の上神種たちでした。ですが、毎回依頼を引き受ける時に言わされる言葉があって、それが『全ては靜連邦のために。全ては三大神様のために。』なんです。今回の命令は『日渡国の上神種を攫え』だったけれど、それを引き受けた時も言わされました。正直、日渡がどんな国かなんて知らないし興味もないですけど、金を得るためには、生きていくためには、これをやるしかありませんでした」
話しているうちに、リンは泣き出した。臣家の娘として平凡に育ってきたお嬢様であったため、善悪の判断は当然できる。また、話しているうちに牢獄の劣悪な環境や、男たちからの暴行の日々、それと、戦争にて自分の上に降り注いだ父親の血肉などを思い出し、苦しくなってしまったのだった。
「私は、何も悪いこと、していないのに。私はなんで、こんなに悪いことをしなきゃいけないのって。ずっと、ずっと、ずっとずっと、そう思いながら……。なんでこんな目に遭わなきゃいけないのって、私だけ、どうしてこんな酷い目に遭わなきゃいけないのって、ずっと……」
気付けばリンは、なりふり構わず泣いていた。泣いて、泣いて、ひたすらに心の内を吐き出し続けた。
「ごめんなさい、ごめんなさい! 私、わたし、ほんとは全部、悪いことだって分かっていました。でも、どうすることもできなかったんです。だって、やらなきゃ死んじゃう。生きていけない。生きていくためには、命令を聞くしかなかったんです!」
額を床板に叩きつけ、そのまま擦りながら泣くリン。それを見て明が、彼女の肩にそっと手を置いた。
「顔を上げなさい。こんなくだらないことで、大事な顔面に傷をつけては勿体無いわ」
明は優しく語りかけた。リンはびしょ濡れの顔面を明に向けた。潤んだ瞳の先、滲むような視界の中、明が優しく微笑んでいるのを見た。
「自己紹介が遅れたわね。私は日渡国渡海自治領の領主、兎山明よ。かつて始神種をやっていたけど、今は降りているわ」
明が名乗る。少しでもリンに安心してもらおうと、彼女なりの配慮である。
「あ、あの、私、殺され……」
「殺さないから、落ち着きなさいな」
リンが抱えている罪の意識は相当重い。当然である。彼女は祖神国家の臣家の産まれで、育ちが良いのだ。一国の役職上神種を拉致監禁したのだから、それが死刑に該当することくらい分かっているのだ。
自分はそれをした、そして捕まった。ならば待っている未来は死のみ。そう思うのは当然であろう。
しかし明は、そんなリンを殺すつもりはない。
「あなた、自分のことを『無能力者』と言ったわね」
「……はい」
リンはそう返事をする。
「その力って、相手の能力を使えなくするのよね?」
「え、えぇ。障害みたいなものです」
その言葉に明は何も言わず、
「じゃ、ちょっと今ここで発動してみてちょうだい」
そう指示した。リンはそれに従って、能力を発動した。
当然、竜洋も明も能力が使えなくなる。
「噂に聞いていた通り、厄介な力ね。それにしても、あなた、能力がかなり強いのね。影響範囲が随分と広いみたいだけれど」
明が言うと、竜洋が、
「衣堆国は祖神国家ですから、その臣家となれば当然能力も強くなるのでありましょう」
と告げた。すると明は「祖神国家の臣家なの?」と珍しく目を丸くして驚いていた。
「へぇぇ、そりゃ凄い。道理で渡海一帯が無能力地帯になるわけだ」
明が感心したように言うと、
「ま、私には関係ないけど」
などと言いながら当然のように御霊術を発動し、リンの能力を御霊で喰らい尽くした。
「「えっ!?」」
これにはリンも竜洋も驚かずにはいられなかった。
「あの、め、明様。お言葉ですが、明様は無能力の影響を受けないのですか?」
竜洋が困惑しながら訊くと、
「そんなことないわよ? 無能力の影響は、神種関係なく受けるわ。昔は妨害能力とか抵抗能力とか言われていたこともあったわ」
さらりと明は返した。
「で、ですが今、あなた様は能力を使って私の能力を解除しました。それはどうしてですか?」
驚きすぎて、もはや悲しみも何も忘れたリンがそう訊くと、
「『御霊術』は能力じゃないの。あれは私が創り出した術なのだから、能力とは別よ。ほら、竜洋は知っているでしょう、私の能力は『地属性』の『墓』よ。御厨家と同じ。でも『御霊術』はその権能の外側にあるの。あれは全くの別物だから、影響を受けないの」
明はそう言った。
「……そうか。だから、先ほどの戦いの時、無能力空間だったにも関わらず『御霊術』が発動したのか」
理解したように呟く竜洋。それを聞いて明は頷き、
「それに、私が通貨に偽装させた御霊も、無能力空間で存在できていたでしょう? あれだって『御霊術』が能力じゃないからできる芸当よ」
そう言った。
「……何なんですか、あなた様は……」
リンは驚きに驚きを重ねて、疲れ果てて力なく項垂れた。
明はその言葉に答えず、項垂れたリンの顎を人差し指で支えると強制的に顔を上げさせて、
「あなたが私の前で無力であることを十二分に見せつけた今、あなたに処罰を告げるわ」
そう前置きをしてから告げた。
「あなたにはこれから、ひとりの少女の身代わりとなって生きていってもらうわ。大丈夫、衣食住は全て保証するし、そんなにキツいものでもないわ。その代わり、落石リンという名前は捨ててもらう。つまりは別者になって生きてもらうわ。そして何より、私に仕えてもらうわ。逆らったら死ぬように術をかけておこうと思うから、覚悟しておくことね。あとあなた、濱竹に対して悪感情があると思うけれど、それは無理に捨てなくていいわよ。私も元は反濱竹勢力だし、何しろ今から成り切ってもらう子なんて相当強い反濱竹勢力だから。ということで、これが罰。それ以外は自由にしてくれて構わないわ。とはいえ、後で被害者の湊には頭を下げてもらうけど」
明の言葉に、リンは涙を流した。
それは、悲しみの涙ではなかった。
かといって喜びではないのだが、ひとまずはある程度自由に生きていける環境が保障されたことによる安堵だった。
「はい、この落石リン、全身全霊をもって尽くせる限り、明様に従いますっ!」
そう言って頭を下げたリンに、明がひとつ息を吐いて、
「いいえ、あなたの名前はもう落石リンじゃないわ」
そして、強い意志を託すようにジッと彼女を見つめると、
「あなたは今日から御霊術の祖、“御厨あかり”と名乗りなさい」
「はいっ!」
その返事に、明はどこか嬉しそうでもあって、同時に寂しそうでもあったと、隣にいた竜洋は思うのだった。
こうしてここに御霊術の祖と呼ばれる“御厨あかり”と、その弟子とされる“兎山明”が、同時に実体を持って存在することになったのだ。
長年、兎山明が隠し通してきた嘘は、これでひとまず終止符を打つことになるだろう。
御厨あかりは、全く別の御厨あかりを生成することで、御厨あかりであることを隠し通すことにしたのだった。




