第32話『4997大変革』
「遅くなっちゃった」
神様が帰ってきたのは、濱竹に行ってから3時間後のことだった。
明さんが「遅い!」と一括入れるが、神様は悪そびれるわけでもなく嬉しそうに言う。
「でもでも、本は手に入ったよ!」
そうして見せる、2冊の本。そこには『靜連邦全集』の文字が見える。
「2冊だけ?」
明さんがそう言うと、
「まずはね。わたしが持って来れるのはこれだけ。明日までにもう13冊届くよ。まずはわたしと明のやつ。問題作成に取り掛かるよ」
と神様が言う。そう言いながら明さんに1冊渡すと、彼女の横にどっさりと腰を下ろした。
「あの子たちのとこにも行きなさいよ?」
「少し休んだらね。別に明が行ってくれてもいいんだよ?」
明さんと神様はそんな会話をしている。
あの子たちというのはおそらく、兎山派の2家のことだろう。
「私が行ったら面倒なことになるだけよ。萌加が行きなさいな」
「少し休んだらね」
「…………」
その少しがどのくらいか分からないが、ちゃんと行ってくれることを願っておこう。
「そういえば、この本の代償は?」
明さんがそう神様に尋ねると、神様はさらっと答えた。
「ん? 無償でくれた」
は?
む、無償で?
みんなの目が点になっているのを見て、神様が補足を入れてくる。
「なんかね、試験のきっかけを作ったのは濱竹だから、代償を貰ったら筋が通らないって、神務卿に言われた」
うわ、さすが下池川卿だな。
きっかけを作ったのは濱竹側だから、代償は払わなくていいよっていう考え方か。
当たり前といえば当たり前なのかもしれないけど、それをさらっと言うのはカッコいい。
「ま、そんな感じでもらったわけだから、濱竹に感謝しながら勉強に励んでね」
神様にそう言われて、僕と花菜と大志は一礼するのだった。
その日の夜に、濱竹から残りの本が届いた。
運んできたのは、濱竹神務局に所属する下神種の方だった。
これで、教材がそろった。
僕らは試験に向けて、勉強を始めるのだった。
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「届いたわよ!」
お母さんの声に、あたしたちは喜んだ。
何が届いたかは言うまでもない。
あたしたちに日の目を見せてくれる資料。
あたしたちが神治に復活するために欠かせないもの。
それが今、届いたのだった。
「はいこれ、いちかのね」
お母さんがあたしに本を手渡した。『靜連邦全集』。なんともまぁ、安直な題名なこと。
でも、この本こそがあたしたちの希望の光なんだから。
最初に家庭内試験がある。
今から家族が最大の敵となる。
勉強は一人でどんどん進めていこう。
あたしたち御厨家は、母と父、兄、そして私の4人家族だ。誰が家庭内代表になるかは分からないけど、願わくばあたしが代表になってみせる!
日渡派の臣家には2人の男子がいるみたいだけど、お母さん曰く、どっちも私より小さくて臣には向いていないとのこと。それなら、わたしが巫女になれば、彼らより上に立って日渡を実質的に牛耳れるはずだ。
お兄ちゃんが臣になるのもひとつの手だけど、あたしは巫女になりたい。だから、お兄ちゃんには悪いけど、家庭内代表はあたしが戴く。
そうして、再び御厨家が日の目を見て国を牛耳り、名誉と栄光を手にするんだ。
ここから始まるんだ、あたしたちの伝説が。
そう、始まるんだ。
そのためにも、あたしは必死に勉強をする。
誰よりも、誰よりも。
あたしこそが、この国の巫女になる女。
御厨いちかなのよ。
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第321巻『神紀4997年』
第9章『4997大変革』
夏至後14日、第1回日渡式分散神治制家庭内試験が行われた。日渡の上神種家は、日渡国建国後の臣家である磐田家と、巫女家である豊田家、兎山国時代に臣家であった御厨家と、巫女家であった鎌田家の4家だ。ここから一人ずつが代表として選ばれ、次の日の本試験に臨んでいく。
磐田家には、磐田大智と磐田大志という、先代の臣である磐田大貴の弟が二人いた。彼らは大智が15歳で大志が13歳であり、まだまだ子供であったが、大志は学力が高く、子供ながらも30点満点中の29点という高得点で家庭内試験を突破した。兄の大智は20点という記録で弟に敗れたのだった。
豊田家は、先代の巫女が亡くなってから娘の花菜が一人だけとなっていて、巫女を継いでいた。そのため、彼女は家庭内試験を行うことなく本試験への挑戦権が与えられている。
御厨家には、御厨翔と御厨こずえ、御厨光和と御厨いちかの四人がいた。翔とこずえの間の子供が光和といちかであり、翔が49歳、こずえが47歳、光和が23歳、いちかが19歳である。御厨家は、兎山国の滅亡後は神治の表舞台から姿を消していた。だが、分散神治制の導入により、321年ぶりに神治に復活することが約束された。そんな御厨家から家庭内試験を突破したのは、御厨いちかであった。彼女は試験を28点で突破した。父親の翔が27点と一点差で落ち、光和が26点で翔と一点差だった。こずえは19点で争うことすらできていなかった。
鎌田家には、鎌田和紗と鎌田淳太郎、鎌田秀治郎、鎌田涼菜、鎌田美有、鎌田弘の6人がいた。和紗と淳太郎の間に4人の子供がいる状態である。年齢は、和紗が44歳、淳太郎が47歳、秀治郎が25歳、涼菜が20歳、美有が17歳、弘が14歳であった。家庭内試験を突破したのは美有で、得点は28点。次に涼菜と淳太郎が27点、秀治郎が25点と続き、和紗と弘が23点だった。
そして翌日、夏至後15日。本試験が行われた。
各家の家庭内代表4人は、磐田神社の本殿に集められた。
しかし、そこで予期せぬ事態が起こった。
家庭内代表が磐田大志以外全員女子であり、臣が大志で確定してしまったことである。
そのため、女3人で巫女、臣補佐、巫女下を争う形となった。
3人は全員巫女を志願していた。希望する役職が誰かと被った場合、試験の点数順に職を決める権利が与えられるため、試験が大きな意義を持つものとなった。
試験は磐田神社の本殿で、萌加様と明様の監視の下に行われた。
本試験は80点満点で、問題数は家庭内試験の倍以上になる。
試験の結果、一位は御厨いちかで75点、二位が豊田花菜で69点、三位が鎌田美有で68点だった。
巫女は御厨いちかで決定し、二位の花菜が臣補佐を選んだため、美有が巫女下になった。
こうして、初代臣補佐には豊田花菜が、初代巫女下には鎌田美有が就くこととなった。
こうして役職が決まったため、この日を以って『臣殺しに伴う特別措置』体制が終了した。萌加様と明様による直接神治から日渡式分散神治制に切り替わり、統治権は臣である磐田大志と巫女である御厨いちかに移行された。
日渡式分散神治制の導入により、この国は大きく変化を遂げた。
まず、建国以来巫女の座に居座っていた豊田家がその座から落ち、御厨家がその座を奪い取った。
次に、日渡萌加様を慕う日渡派と、兎山明様を慕う兎山派が共同で神治をする体制になったことで、日渡の神治に明様の発言権が与えられた。これは、巫女となった御厨いちかが提案したものであり、かつての連邦西部諸国の状況を知り、元永神種で神治経験も長い明様を神治に取り入れることで、周辺国家の動きや緊急事態に即座に対応できるようにするためだ。しかし、明様は神治への参加は消極的で、見直すように提案をしている。
さらに、法律の改正も一気に行われた。一番大きいのは、磐田大智の提案による『大逆罪の改正』である。
具体的には、『萌加様を見た者、命令に逆らった者は死刑』という内容から、『萌加様と明様の命令に逆らった者は死刑』という内容に変更した。理由は、萌加様と明様による直接神治の最中、多数の国民が萌加様を見たことで、素顔が国民全体に知れ渡ったためである。素顔がしれているのに隠す必要は全くないという意見に全員が賛成をして改正に至った。
ちなみになぜなんの役職にもついていない大智が提案できたかというと、今回新たに制定された法律『奏上法』というものが大きく関わっている。
奏上法は、日渡上神種家の一員なら誰でも萌加様に奏上することができるというものだ。日渡上神種全員に、奏上権という新たな権利が与えられ、神治に多少の意見をすることができるようになったのだ。しかし、奏上といっても萌加様に直接奏上することはできず、役職についている身内に内容を話すことで、その提案を役職四人衆(臣、巫女、臣補佐、巫女下)に出して審議にかけ、臣か巫女が萌加様に奏上するという形式である。今回、磐田大智の提案は、彼の身内で臣である大志が役職四人衆に伝えて審議し、検討の余地ありと判断されたため萌加様に奏上し、萌加様も賛成したため臣と巫女が法律の改正に動いたのだった。
このように、例え役職に就けなかったとしても、上神種全員が意見をすることができる制度を整えた。これによって、日渡の神治はより幅広い意見を取り入れられ、より客観的に物事を捉え、取るべき最善の手段を選んで国を運営することができるようになると期待されている。
神紀4997年に起きた、この一連の大きな変革のことを、我々は『4997大変革』と呼ぶことに決めた。
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あー、どうしよう。
僕は今、とても悩んでいた。
大志が臣になったことは喜ばしいことだ。花菜も巫女ではなくなったものの、大志の補佐という心強い役職に就いてくれてありがたい。そして何より、僕が無職になれたことが素晴らしい! そのくせ、上神種ではあるから神治に発言する権利を有している。……まぁ、そう滅多に奏上権を使う気はないけど。
それで、こんなに喜ばしい状況で何を悩んでいるかというと、僕が神治に参加する目的であった『法律の改正』が済んでしまったことだ。
しかも、めちゃくちゃあっさりと。
奏上法の手順を確認したいから何か意見出せ、と大志に言われて、僕は軽い気持ちで大逆罪の改正を提案した。ただの例で、手順の確認だけだから、本当に改正はしないだろうと思っていたら、巫女に就いたいちかさんや巫女下に就いた美有さんがその法律に驚いて「顔バレしてたら意味ないじゃん。改正しようよ」と言ったことで事態は急変。ほんの数分で法律は改正されてしまった。
これにより、父が作った国民に対する理不尽な大逆罪は消え失せ、大逆罪らしい内容に生まれ変わったのだった。
目的達成に喜ぶ気持ちはもちろんある。一応、これは僕の意見での改正ということで僕の功績になるみたいだし。ただ、これほど早く終わるとは思っていなかったために、この先のことを何も考えていなかった。
いや、待てよ?
これを目標に神治に参加していたわけだから、もしかして僕が神治に参加する必要ってもうないんじゃない!?
なにも無理して今後も神治に参加することないじゃん。
この変革を機に、今までの自由を求めた生活に戻ればいいんじゃないか?
そう考えたところで、ふと思い出した言葉があった。
「大智を神治に関わらせろって言ったのは、神様よ」
これは、僕に大逆罪を吹っかけてきた花菜が言っていた言葉だ。
これが意味することはただ一つ。『神治に参加していないと、神様の命令に反いたことになる』ということだ。それ即ち大逆罪であり、待ち受けるのは死だけである。
そうだったよ。最初散々花菜に追いかけ回されていた原因は、神様の命令に反いたという理由だった。なんで神様が僕を神治に入れたがったのかはよく分かんないけど、僕は目標がなくなったからと言って勝手に神治から去ることはできないみたいだ。
が、しかし。
実際、この変革以降って、役職に就いていなきゃ日常の神治に関われないわけだから、奏上法を使わない限り僕は神治に関与していないと同然なのでは?
そして奏上権を有しているから、神治にはいつでも参加できる状態。
つまり、実際は参加していないがいつでも参加できる位置にいるということ。
さて、ここで疑問が出てきたな。
神治から離れれば大逆罪を喰らうということから、絶賛神治からは離れられない状態であるのだが、この状況で神治から離れていないと言えるのはどこまでなんだ?
僕が奏上法を使ってこまめに意見を出し続けないといけないのか?
それとも、奏上権を持っている時点で神治に参加していると見做されるのか?
うむむむむ、難しい。
一番手っ取り早いのは萌加様に尋ねることだが、それをすると「うーん、じゃあずっと意見出してて!」って言われる未来が鮮明に見えて怖い。それだったら、知らないふりして奏上法を使わないでおくのが一番いいだろう。
よし、そうしよう。
僕は何も知らない。
奏上権を有しているから、僕は何もしなくても神治に参加しているんだ!
「大智は奏上権を使って意見バンバン出してね! って神様が言ってたよ。もちろん反いたら大逆罪が適用されるからね」
……と、思っていた時期が僕にもありました。
次の日に、上神種家の顔合わせ式の準備のために、本殿の掃除をしていた時、花菜からそう言われて僕は落胆した。
マジかよ、あの鬼畜ロリ神め。
ちゃんと堂々と街中を歩けるように法律変えてやったじゃんか。ほんとに恩知らずだな。
……まぁ、こんな言葉、絶対に本人の前では言えないけどさ。
てか永神種相手にそんな大口叩けたら逆にすごいよね。僕は無理だな。だから心の中だけでそう思っておいて、絶対に表に出さないようにしていくのだ。
「こんにちは〜」
そんなことを思っていたら、庭から声が聞こえた。
そこに目を遣ると、6人の親子がいた。
「鎌田です」
「あ、どうも。お世話になります」
爽やかなお姉さんが発した言葉に、僕は少し緊張して返した。
初対面って、緊張する……!
「鎌田のみなさんはこちらです。自由に腰掛けてください。美有さんは前ね」
緊張した僕とは違って、花菜は手際よく座る場所を案内している。
なんというか、花菜ってすごいよな。
こういう時にささっと動いて誘導してしまうんだから。
さすが現役で巫女を務めていただけある。
とりあえず、本殿の中はもうお客さんもいるから、僕は庭掃除でも始めようか。
そうして僕は、外箒を持って庭の掃除を始めたのだが。
「あら、まだ準備中でしたの?」
少し経って、そんな声を掛けられた。そこには以前見た、肥えたおばさんとその家族がいた。
「いえ、会場は整っていますよ。僕はただ神社の掃除をしてるだけです」
僕はそう答えると、箒を動かして掃除をした。
「あら、そう。ま、掃除をするのは当たり前のことね。せいぜい励みなさいな」
おばさんはそう言って本殿に歩いて行った。
……なんだあの人。
そう思って、おばさんを見つめていると。
「あなたが大智くん?」
そう女の子に声をかけられた。
「あ、はい。そうです」
僕は少し戸惑いながらそう答えた。
「わぁ、あんまり大志くんに似てないね」
……そうか? 兄弟だけどな。
「まぁそれはどうでもよくて」
「は、はぁ」
なんだろうな、ちょっと掴みにくい。
将軍ほどではないけど、会話しにくい部類に入る子だな。
「あたしは御厨いちか。この国の新しい巫女よ。よろしくね」
「よ、よろしくおねがいします」
僕がそう返すと、彼女は右手を出してきた。
……握手、しろと?
僕は彼女の顔を見る。すると彼女は首を傾げて、なんで握手しないの? と目で訴えてきた。
僕は差し出された右手を取って、握手した。
「ん」
彼女はニコッと笑って、じゃあねと言うと、満足したように本殿に歩いて行った。
……不思議な子だなぁ。
何歳なのかは知らないけど、おそらく僕より年上だろう。といっても、あんまり大差はないと思う。
背丈も僕と大差なかったし、ちょっとだけお姉さんって感じなんだろう。
いちかさんが席についたところで、居間の方から廊下を通って大志がやって来るのが見えた。
僕は箒を片付けて大志と合流し、一緒に本殿に入る。
そして僕は御厨家の横にひとつ空いたスペースに座り、大志は正面の玉座の真横に座った。
これで、上神種家は全員が揃ったことになる。あとこの場に来ていないのは……
「日渡上神種家の者どもよ、頭を垂れて平伏せよ!」
そんな独裁者じみた言葉を、可愛らしい声が言った。
全員無言で頭を下げた。そして目の前を、大小二つの木靴がカランコロンと音を鳴らして通り過ぎて行く。
「直れ。皆、わたしに注目せよ」
その言葉で、僕らは玉座を見る。そこには神様と明さんがいた。
……それ以外がいたら困るけど。
「わたしこそが、この日渡の始神種、日渡萌加である。日渡上神種家はわたしに仕え、わたしに尽くし、この国をより豊かにするために神治を行え。そして、国だけでなく連邦の安寧を意識した為政者になれ。これからは、この上神種家が政の中心だ。この全員に発言権がある。大変革を終えて日渡が大きく成長したことを、連邦中に知らしめよ!」
「「「はっ!」」」
神様の言葉に、全員が一斉に頭を下げた。
日渡上神種家。ここにいる全員が上神種で、これからこの国の神治を引っ張っていく存在。
この国の興廃は僕らが握っている。神治を成功させて発展するのも、失敗させて廃れるのも、全て僕らにかかっているんだ。
そう考えると、神治って恐ろしいくらいに重要なものなんだと実感する。正直、今までその実感というものを欠いていたかもしれない。……いや、神治らしい神治に関与したことがないから分からなかっただけかもしれないけど。
「さて、楽にしていいよ。わたしも楽にするから」
そうして神様はいつも通りの緩い感じに戻った。
「それで、今日は日渡上神種家の顔合わせ式ってのを行おうと思います」
神様がそう言って、その趣旨を説明する。
「日渡式分散神治制に於いては、上神種家同士の連携も大事になってくる。永らく続いた日渡派と兎山派の対立は、この瞬間に幕を閉じるの。そしてこれからは、手を取り合ってひとつの国を作り上げていくの。ひとつの国を作り上げるのに、上神種家同士が対立してたんじゃ神治は厳しいってわけよ。だからみんなには、上神種家同士が仲良く対等な関係にあってほしいの。そこで今回の顔合わせ式をきっかけに、仲良くなってくれたらなって思います」
神様の言葉に明さんが付け足す。
「御厨家と鎌田家は、私を神にして兎山国を再建させるとかっていう馬鹿げた発想は捨てて、日渡国のために尽くしなさいな。神治に参加できるようになったことで、あなたたちの地位と名誉は回復されたわよ。あとは為政者になれれば、国民や連邦からの信頼を勝ち取れるわよ。兎山再建よりも輝かしい未来が、萌加に尽くすだけで待っているわよ。だから精一杯、頑張りなさい」
その声に、御厨家と鎌田家は一礼した。
しかし、あまりいい表情はしていない。どうやら兎山再建という野望は捨てきれないみたいだ。
……その思想、日渡にとってはかなり危険だから捨ててくれるとありがたいんだけど……
まぁ、そう簡単には諦めきれないはずだ。数百年も前からずっと叶えようとしてきた夢なんだから、今諦められれば、とっくの昔にその夢に挫折していただろう。
逆に、神治に復活できたのだからここからが勝負だと考えているのだろう。
でも、明さんを神に戻すってどうやるんだ? そもそも、どうやって永神種から降りたんだ?
ぜんっぜん分かんないや。
まぁでも、これに背けば大逆罪が適用されるため、兎山再建はなかなか苦しいだろう。というか、今の法律では不可能だろう。
しかし、奏上法が制定されているからどうなるかはまだ分からない。もしかしたら、法律を変えてまで動いてくる可能性は大いにある。
僕ら日渡派は、これに断固として反対すべきだろう。
「さて、じゃあ家の紹介に入るかな。まず、ここから三年間臣家となった磐田家、起立。臣の磐田大志と、その兄の磐田大智」
そう考えていると、いきなり神様が紹介を始める。僕と大志は立ち上がって礼をした。
みんな拍手をしてくれる。
拍手が収まってから、僕と大志は座った。
「次、こっから三年間巫女家となった御厨家、起立。巫女、御厨いちか、その兄、御厨光和、その父、御厨翔、その母、御厨こずえ」
立ち上がった御厨家の方々に拍手を送る。
「次、臣補佐家となった豊田家、起立。豊田家は現在花菜一人だけです」
拍手。花菜は綺麗な姿勢で礼をした。
黙っていれば綺麗な子なのにね、花菜。暴力的な性格とウザささえなければ完璧なのに。
「そして最後、巫女下家となった鎌田家、起立。巫女下、鎌田美有、その弟、鎌田弘、その姉、鎌田涼菜、その兄、鎌田秀治郎、その父、鎌田淳太郎、その母、鎌田和紗」
拍手を送り、送られた鎌田家の皆さんは礼をする。
「以上4家18人が、今のところの日渡上神種家の顔ぶれだよ。しっかり覚えておこうね」
神様の言葉で、僕は全員を再度見渡す。
顔は覚えたけど、名前を覚えられる気がしない。
まぁ今後、頑張って覚えていこう。
「さ、堅苦しいのはここまでにして、今からはみんなで美味しいものでも食べて騒ごっか!」
神様の言葉で、この顔合わせ式の会場が移った。
僕らは本殿を後にして、磐田神社最大の部屋、『宴式の間』へと移動するのだった。
御厨翔 身長180cm 年齢49歳
御厨光和 身長182cm 年齢23歳
御厨いちか 身長166cm 年齢19歳
鎌田和紗 身長153cm 年齢44歳
鎌田秀治郎 身長173cm 年齢25歳
鎌田涼菜 身長156cm 年齢20歳
鎌田美有 身長153cm 年齢17歳
鎌田弘 身長160cm 年齢14歳




