第23話『連邦神議会、招集。』
話は少し遡る。
「大貴が、殺された」
萌加の言葉を聞いて、安久斗は耳を疑う。
萌加が冗談で自分を試しているのかと考えた安久斗だったが、萌加の表情からそれが質の悪い冗談には思えない。
「死体は?」
どこだと言う意味を込めて安久斗が尋ねる。
「臣の部屋」
萌加は泣きそうな声でそれだけ伝える。
安久斗は部屋を出て、大貴の死体がある臣の部屋まで行った。そこで目にした光景は、思っていたよりも何倍も残酷なものだった。
「……ひでぇな」
その安久斗の言葉に、萌加は何も言わない。
安久斗はしゃがみ込み、畳に付着した肉片をまじまじと見つめる。
「圧力系か」
「たぶん」
安久斗も萌加も、これが自殺や事故でなく他殺であると、この惨状を見て確信していた。
「靜に行くぞ」
「うん。でもわたしは少し寄り道していく。安久斗は先に伝えておいてくれるかな?」
「分かった。招集しておく」
そうして安久斗は空へ飛び立つ。
萌加も後を追って空へ飛び立つが、向かう先は違う。
安久斗は靜に直接向かうが、萌加は途中、兎山の御厨堂に降り立った。
「明!」
萌加がボロボロの引き戸に手をかけて思いっきり開ける。
「早朝から騒々しいわね。どうしたのよ?」
兎山明は、真っ暗なお堂の中で着物の帯を締めていた。
「頼みたいことがあるの」
そこに萌加は静かに言う。
「なによ? 真剣な顔して」
明は萌加の様子がいつもと違うことに気がつく。
「あのね、わたし、まだ信じたくないんだけどさ」
声を震わせながら、萌加は明に告げる。
「大貴がね、殺されたんだ」
「……」
明は、予想以上に深刻な事態に硬直する。
「……本気で言ってるの?」
明が萌加に近づきながらそう声をかける。それに対して、萌加はコクリと頷くだけ。
「そう。そうなのね……」
明は、臣殺しという事態が如何に切実で重大な問題なのかを理解していた。
「それで、私は何をすればいいのかしら?」
だからこそ、そんな重要な事態に於いて自分にどんな役割が与えられるのか気になった。
「西部諸国に日渡の臣が殺されたって伝達してくれるかな? あと、わたしが帰ってくるまで、花菜たちが暴走しないように見張っていてほしいの。わたしが帰って来たら、事態が収集するまで一緒に神治をしてくれると助かるな」
「分かったけど、萌加は今からどこに行くのよ?」
明はそう萌加に訊く。
「靜だよ。神議会に行く」
萌加の言葉に、明は頷いた。
「そう、分かったわ。じゃあ西部諸国には連邦神議会が開かれるってことも伝えておいた方がいいかしら?」
「頼んでもいい?」
萌加が確認でそう尋ねる。
「ええ、もちろんよ。いってらっしゃい」
明がそう言うと、萌加はコクリと頷いた。そして靜に向けて飛び立とうとして、ふと気付く。
「あ、そうだ。花菜と大智と大志に会ったら伝えておいてくれるかな?」
「なにを?」
明が訊くと、萌加が言う。
「『犯人探しは後にして。悲しいのはよく分かるけど、今は取り乱さずに冷静でいること。しばらくしたら戻るから待ってて。今後の方針は帰ったら伝える』って」
「えぇ、伝えておくわ」
そう言って、明は目を閉じて右手を掲げる。小さく「御厨堂の御霊を崇めよ」と呟くと、周囲が淡い青色に光り出して地面から御霊が浮き上がる。御霊は彼女の掲げた右手に集まって一枚の紙を形成し、明がそれを掴み取る。
「行ってくるね」
萌加はそれを見届けるか見届けないか、その辺りで明にそう告げて空へ飛び立つ。
萌加が飛び立った直後、明は静かに目を瞑る。
靜連邦、西部諸国。それは、濱竹を含めた濱竹勢力圏にある10ヵ国を指す俗名である。
濱竹、渡海、日渡、武豊、袋石、周知、根々川、崖川、堀之内、古田崎。
かつての濱傘連盟加盟国+αという感じで、昇竜川沿岸部の国を中心に靜連邦の西部に位置する10ヶ国である。
この10ヶ国は、明が神をやっていた時代から既に交流があり、明はそこの神々とは面識があった。
「御厨堂の御霊を崇めよ」
再び御霊術を使い、地面から御霊を8体召喚すると、明はそのふよふよと浮かぶ色とりどりの霊魂に告げる。
「さっきの話、聞いてたわね? 伝達頼むわよ」
明のその言葉で、御霊は各方面へと飛び立っていく。
「もう少し寝たいけど、さすがにダメよね」
明はそうため息混じりに呟き、ひとつだけあくびをした後、磐田神社に向けて歩き出した。
ーーーーー
ーーー
ー
萌加と別れた安久斗は、15分ほど飛行して靜国の神社である静岡神社に到着した。
境内に降り立つと、靜神務局の警備員に止まるように声をかけられる。その声に応じて止まると、安久斗は自身の名前と要件を伝える。
「濱竹の神、濱竹安久斗だ。至急、三大神に面会願いたい」
「安久斗様でございますか!? 御無礼致しました。すぐに局長に問い合わせて……」
「バカヤロウ! 局長やら神務卿やらを介さずにお前が直接三大神に伝えろ!」
安久斗は警備員に怒鳴りつける。
「しかし……」
「緊急事態だ! 神務卿を介している時間すら惜しいんだよ!」
濱竹と同様に、分散神治制を採用する靜に於いて、一般の神務局員が直接『神』に奏上するなど許される行為ではない。そのため、一般的な報告の流れとしては、神務局員が自身の上司である神務局長へ報告し、神務局長が神務卿へ報告し、そしてようやく神務卿から『神』に報告がいくというシステムとなっている。
安久斗もそのくらい知っている。なにせ濱竹も同じシステムを採用しているからだ。しかし、それを分かっていても無茶振りをする理由があった。
「ですが決まりは決まりです! 守っていただかないと……」
「一刻を争う事態で守ってなんかいられるかクソ野郎!」
安久斗がそう神務局員を怒鳴りつけた瞬間、本殿の扉が開く。
「何の騒ぎ? うるさいんだけど」
そしてそこから現れた一人の少年。青がかった銀髪で、童顔ではあるが顔の部位ひとつひとつは整っている。そのため、もう少し時間が経てばイケメンになりそうな成りをしているのだが、生憎と彼はこの状態より見た目が歳をとることはない。
「も、申し訳ありませんっ!」
神務局員が少年に深々と頭を下げると同時に、安久斗が少年に話しかける。
「出てきてくれると思ったぜ、するが」
「何の用だよ、安久斗」
そう。安久斗の前に現れたのは、靜の三大神が一人、靜するがであった。
安久斗が大声で神務局員を怒鳴りつけていた理由は、その声に反応して三大神の誰かが自発的に出てくることを狙っていたのだ。
「用事も用事、緊急事態だ」
安久斗は真剣そのものの顔でするがを見る。
「只事じゃなさそうだね」
するがは安久斗の表情を見て、面倒事は勘弁だと言わんばかりの顔をする。
「残念な話だが、お前の嫌いな面倒事だ」
それを察した安久斗がするがにそう言うと、するがは一つ大きなため息を吐く。
「だと思ったよ」
するががそう言って、安久斗に要件を喋るように首で促す。
安久斗はそれに応えて、
「日渡の臣が殺された。至急、連邦神議会を開きたい」
と告げた。
その言葉に、するがが硬直する。
「待て、本気で言ってるの? 日渡の臣が殺されたって……」
「本気だ」
もちろんするがは臣殺しというものが如何に深刻な問題か知っている。安久斗が冗談で言っているようには思えないし、夜明け前にわざわざそんな冗談を言いに来るはずもない。そうとなると、それが嘘でないことは容易に分かった。
「とりあえず、詳しくは中で聞くよ。上がって」
そう言って、安久斗を本殿に誘導した。
「あ」
が、その直後に思い立ったようにするががそう言って、神務局員を見つめた。
「お前、今の話聞いたよな?」
するががそう神務局員に問い詰めると、
「は、はいっ!」
と神務局員は敬礼をする。
するとするがは右手を神務局員の左肩に優しく置く。
「じゃ、死んで」
「……え?」
途端、するがの右手が置かれた局員の左肩より、大量の血が噴き出した。
その血はするがの右横で、まるで無重力空間に放り出されたが如く球体を成す。
10秒ほどで神務局員の全ての血が抜き取られ、彼は死に至った。
靜の三大神。連邦唯一の『祖神種』であるその権能は『風属性』の全ての『要素』と『要素源』である。今、するがが使った技は『風属性』の権能を駆使した複合技であり、僅かな傷口から圧力と風力を駆使して血液を一瞬で抜き取ったのだった。
「日渡の臣が殺されたなんて情報、下神種なんかに漏れちゃいけないからね。証拠隠滅」
するがは自分の横に溜まった血を境内の池に放り投げながら安久斗に告げる。
「やっぱ祖神種様のやることは違うぜ」
安久斗は呆れながら、そして感心しながら言った。
「んじゃ、行こっか。姉さんとしみずを起こしてくるから、先に第一応接間に行っててくれるとありがたい」
「おう、分かった。そろそろ萌加も来るだろうから、来たらあいつも入れとくぜ?」
「ん、よろしく」
安久斗とするがはそういう会話を交わして、本殿の中で別れる。
安久斗は第一応接間を目指し、するがは残りの三大神を呼びに行く。
そしてその直後、本殿に飛び込んでくる赤い炎があった。
「おう、そろそろ来ると思ったぜ」
安久斗はその炎を纏った飛行物体に声をかける。
安久斗の声に、飛行物体は急ブレーキをかけて床に降り立つ。そして炎を体にしまって不安そうに言う。
「犯人、見つけられるかな……?」
「さぁな? だが、靜に任せておけば大丈夫だろ。『圧力』はあいつらの専門分野だ」
安久斗は萌加にそう言うと、応接室の扉を開けて黒色のふかふかなソファにどっかりと座る。
「遠慮のない神」
「いいだろうが。ここじゃ俺らは客人だ」
萌加は安久斗の横に腰を下ろすと、目の前の木目調の机の上に置かれたクッキーに手を伸ばす。
「お前こそ遠慮ねぇじゃねぇか」
それを見て安久斗が指摘すると、
「いいじゃん。ここじゃあわたしたちは客人なんだから」
と萌加が言う。
それがおかしくて、二人は笑い合った。
「楽しそうね」
突然聞こえたその声に、安久斗と萌加は切り替えて挨拶をする。
「よぉ、あおい。寝癖ひでぇな」
「しみずも、久しぶりだね」
その挨拶を受けて、あおいが安久斗に対して微笑みながら右手をワキワキさせて、
「あら? 目覚まし代わりに一発殺って欲しいのかしら?」
と言う。
「あ、遠慮しとくぜ」
安久斗がサラッと返すと、あおいはイラッとして顔を顰める。
「姉ちゃん、安久斗の挨拶にいちいち反応しない。カッコ悪いよ」
そう言ったのは、するがと同じ髪色のクール系美少女のような容姿をした靜しみずだった。
実はしみずは男である。いわゆる『男の娘』なのだ。
その容姿と声の高さ故に女子と勘違いしている者がほとんどであり、靜国を除く連邦の『臣』と『巫女』の全員が彼を女と認識しているのだった。
「はぁ。まぁいいわ。それで萌加、詳しく聞かせてくれるかしら?」
あおいは安久斗から視線を外して萌加に向き直る。
「1時間くらい前なんだけどさ、臣との繋がりが切れたことを感じたの。それで慌てて大貴の部屋に行くと、肉片が飛び散って死んでたの」
「肉片が飛び散る?」
萌加の言葉をするがが反復する。
「あぁ。まるで『気圧泡内波』で殺したようにな」
安久斗がそう言うと、
「もしかして、ボクたちを疑ってるの?」
としみずが訊く。
「別にそうじゃない。だが、白とは言い切れないがな」
安久斗の返答に、あおいが立ち上がる。
「あんたねぇ!」
「姉さん」
そのあおいをするがが一喝する。
あおいは安久斗を睨みながら座った。
「事故であの死体が出来上がることはあるかもしれないけど、あの部屋にそんな事故になる要素はないし、まして自殺ってことはないよ。日渡に圧力系を持ってる上神種はいないし。そうなると……」
「他殺の可能性が高いってことだね」
萌加の言葉にしみずが頷きながら言った。
「殺せるほどの能力を持っているということは下神種じゃないわね」
あおいが顎に手を当てて言う。
「そうだな。あいつらの力では殺せはしないだろうな」
安久斗の言葉に異論は出ない。下神種の力は、誰がどう見ても殺せるほど強いものではないからだ。
「まぁ、間違いなく緊急事態であるわけだから、連邦神議会を開こうか」
「ありがとう。助かるよ」
するががそう言うと、萌加が力なく笑った。
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靜の西隣に位置する宇治枝国。
国土はそれほど大きくはないものの、靜のお膝元で古くからの交流があり、連邦ではわりかし大きな力を握っている国である。
『靜と濱竹より緊急通告。非常事態ゆえに連邦諸国永神種議会を開催する。会場は靜国の静岡神社で、開始は只今より1時間後。遅れた者には容赦しない。直ちに集合せよ』
宇治枝の神、宇治枝恭之助の元にその通告が入ったのは、午前3時半を少し回った頃のことであった。
「お、珍しいじゃん。靜と濱竹が共同通告なんて」
恭之助は笑いながら夜明け前の空を見上げる。
「参久、いるかい?」
「はい、ここに」
恭之助は臣の藤枝参久を呼び出した。
「連邦神議会が開かれるらしい。俺は靜に行ってくるから、帰ってくるまで神治は任せたよ」
「承りました」
恭之助は参久にそう伝えると、靜に向かって飛び立った。
「さて、3年ぶりの神議会。今回はどんな内容かな?」
恭之助は飛びながらそう呟いて頬を緩めた。
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所変わって、靜連邦の東端、関東統一連邦との境目から伸びる半島、猪頭半島にも、その通告は届いていた。
「連邦神議会? こんな早朝に。一体なんだってんだ」
「知らねーよ、んなもん」
「しみずたんからの命令とあらば、この流水掬、早朝でも深夜でも、地の果てからでm……」
「はいはい、分かった分かった。うるさいから黙ろうね、この変態」
「いやいやー、元気なことはいいことじゃーないかー。うんうん」
「……お腹すいた」
そんな会話を行うのは、猪頭半島に位置する6つの国の神々である。彼らは『猪頭諸国』として団結をしており、猪頭という国を中心にして、6つの小国が実質ひとつの国であるかのように機能している。定期的に神同士で会合を開き、情報を共有しているのだ。
「3年ぶりに開かれる連邦神議会だ。それに今回は靜と濱竹が共同通告している。これは緊急事態に違いない。我ら猪頭諸国も靜連邦の一員。同じ連邦に所属する盟友が困っているのであるならば、助けるのが礼儀だろうよ」
猪頭諸国のリーダーとも言える存在、猪頭国の神、猪頭大平がその場を仕切る。
「とか言ってさ、大平。実はここで恩を売っといてこっちがピンチの時に助けてもらおうって算段でしょ? うわー、ずるーい」
しかし、そこに口を挟んだのは河頭国の神、河頭咲良だ。その発言はあからさまな棒読みで、大平を煽っていた。
「うるせぇ、断じて違う。俺は靜連邦の一員として……」
「でもさー私たちってー、今すっごい困難に直面してるわけじゃーん? 手伝うから助けてよーって言った方が賢いんじゃなーいのー?」
咲良に反論しようとした大平に向かって、今度は熱山国の神、熱山美佑が笑いながら言う。
「確かに、厄介事に直面しているね。関東統一連邦が軍を展開してくるなんて……」
「靜からは『ただの挑発だから気にするな』と言われているが、現状はもういつ戦争になってもおかしくないレベルだな。夏半湾は向こうが完全に掌握してるし、明らかに物騒なデカい船もうろうろしている。いつ何をされてもおかしくない現状だ」
流水国の神、流水掬と、猪東国の神、猪東綾人が深刻な顔で言う。
「……寝ていい?」
「ダメだ」
その話の裏では、降田国の神、降田ツメキが寝ようとしていた。が、それを大平が断る。
「とにかく、神議会には行くぞ。行かないと首が飛ぶ。……物理的に」
大平がそう言うと、猪頭諸国の神々は一斉に頷いた。そして、猪頭国の伊豆神社を飛び立ち、湾を隔てた北西にある靜へと向かうのだった。
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さて、猪頭の隣国に、連邦三番目の経済大国である沼という国がある。
この国にも同じように通告が届いた。
「蛇松様」
「知っている」
臣である沼津間門は、神である沼蛇松に神議会の招集を奏上しようとしたが、蛇松は既に招集を知っていた。
「1時間の猶予があったが、行くか行かぬか迷っているうちに30分が経過してしまったな」
蛇松は月を見ながら腕を組んで唸る。
「失礼ながら蛇松様。なぜ、迷うのですか?」
間門がそう尋ねると、蛇松は片目で間門を見る。
「いやな、今、この状況で国を離れて良いものか迷うのだよ」
「しかし、遅れた者には容赦しないと……」
「だが、欠席した者に対する何かは書いてあるか?」
間門の言葉に蛇松は真顔で返す。
「それは……」
間門は黙るしかない。そう、沼蛇松という神は少しばかり面倒な性格をしているのだ。
「関東統一連邦が我が友邦にまで手を伸ばしている。我ら沼軍も連邦境界線にまで派遣している。そこで昼夜問わず睨み合って気を張っている兵がいるというのに、神々が宴会を兼ねた集会に参加して良いだろうか」
蛇松の言葉に、間門は俯いて黙った。
「おい蛇松」
そこに高い声が響く。
蛇松が後ろを見ると、そこには背の低い美少女が立っている。
「どうした、下香貫宮」
彼女は、下香貫宮家の当主、八重という。まだ13歳の女児ではあるが、霊力を操る『人間』である。
実を言うと、沼は国ができてから今日までの約4500年間で、一度も人類反乱が起こったことがない。それは、この霊力を操る人類である香貫一族を保護し、神治に取り込んだことにあった。
神類が文明を築きあげた頃、霊力を操れることから香貫一族は人類の信仰対象とされていた。そして希望の光でもあった。その力をもって神類と戦い、猪頭半島(当時はまだ伊豆半島と呼ばれていた)から富田山(当時はまだ富士山と呼ばれていた)の麓までの人類を保護し、そこに勢力圏を築いた。それから500年ほどして、蛇松が国土拡張のために戦争を仕掛けてきた。香貫一族はそれに敗れたが、蛇松は香貫一族を保護して人類の居住区域を確保した。そして、各地で神治制が取り入れられると、蛇松は即座に香貫一族を神治に取り入れ、見事に人類との共存国家を作り上げたのだった。
これは、蛇松の偉大な功績として取り上げられる。しかし、他の国がこれを真似することはできなかった。理由は至って簡単で、力を持った、信仰の対象となるような人類がいないからである。沼だけが偶然手にすることができた平和と栄光なのである。
そんな香貫一族だが、今は2つに分裂している。1つは八重が当主を務める下香貫宮家。そしてもう1つ、上香貫宮家がある。
両家は元は同じ家であったが、今から100年ほど前に仲の悪い兄弟がそれぞれ家を立ち上げたことにより上下に分かれてしまった。ちなみに『上下』は優劣ではなく、家が北側にあるか南側にあるかを表しているだけである。
その下香貫宮八重が、神である蛇松に助言をした。
「神議会、行ったほうがいいと思うわ」
「なんでだ?」
ぎろりと蛇松は幼女を見つめる。しかし、それに物怖じする様子もなく八重は言う。
「だって、それに参加して意見するのが蛇松の仕事でしょう? 兵も民も、みんなそれは知っているはずよ」
蛇松はふむと顎に手を置き目を閉じて考える。
そして数秒して目を開けて、
「確かにそうだな。神議会に出られるのは永神種のみ、つまり俺だけ。代わりがきかないわけか。そうなると、出席するのも永神種の務めだな」
と呟く。そしてずっと横に控えていた間門にはっきりと告げた。
「行ってくる。留守の間、関東に動きがあったら即座に対応せよ」
「はっ」
そして沼蛇松は、靜に向けて飛び立つのだった。
ーーーーー
ーーー
ー
明から伝達のあった靜連邦西部諸国の神々は、靜と濱竹からの通告が入る前から崖川国の掛川神社の本殿に集まっていた。
なぜそこに集まるかと言うと、崖川は西部諸国の中で神社の本殿が濱竹に続いて2番目に広いからという理由である。つまるところ、のびのびと話し合いができる場所であるからだ。
「明姉さんの言っていた通りだ。神議会が開かれた」
通告が入ってからすぐにそう言ったのは、連邦西部諸国の一国、周知国の神である周知小國である。
「しかも靜と濱竹の共同声明って……」
日渡の東の隣国である袋石の神、袋石夜鳥が言う。
「さすがの靜も臣殺しは緊急事態と言わざるを得ないみたいだな」
日渡の北隣に位置する武豊国の神、武豊耐久が発言する。
「連邦全国を巻き込んでここまで大事になれば、流石に犯人も見つかるでしょ」
周知の北にある根々川国の神、根々川千鶴がそう言うが、日渡の南、かつて兎山国の頃に分離独立した渡海国の神、渡海勇は違う見解をしていた。
「いや、連邦諸国が日渡のような小国のために動くかは分からん。俺らのように日渡と距離が近く、萌加と親交があれば話は別だが、中部や東部、猪頭諸国がどう動くかは全く予想がつかない」
「確かにそうだ。もし俺があっち側で神をやってたら、日渡のためには動かねーな」
勇の意見に口を開いたのは、古田崎という岬を国土に持つ古田崎国の神、古田崎悠生である。
「まぁ、どうであれ俺らは日渡に協力しないとな。同じ西部諸国として」
後ろ向きになりつつある場の空気を、堀之内国の神、堀之内弥凪が転換する。
「そうね。そのためにもまずは靜へ行きましょう。神議会で詳しいことを聞くわよ」
それに同調するかのように、崖川国の神、崖川あさひがみんなに告げた。
そして全員が本殿の外に出て空へと飛び立った。
ーーーーー
ーーー
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招集から55分が経過した。
場所は靜国の静岡神社の会議室。
大きな円形のテーブルに30脚の椅子があり、現在は1つだけ空きがある状態。その1人を待つために、沈黙した時が流れるのだった。
そして、残り1分というときにドアが開く。そして入って来た男が大声で三大神に向かって言う。
「おいおい、こんな早朝から人を呼び出しておいて謝罪もねぇのか?」
「あら、俣治。なんで祖神種である私たちが、あなたみたいな始神種に謝罪しないといけないのかしら?」
靜を挑発したのは、靜や濱竹と国境を面する北部の広大な山脈地帯を領土に持つ井谷国の神、井谷俣治である。
古くから靜と仲が悪く、常にビリビリしている関係である。
「落ち着け、井谷。姉さんも。席についてよ」
喧嘩する俣治とあおいを無理矢理引き離したのはするがだった。
そして彼は、靜連邦28ヵ国30人の神々に告げる。
「朝早くからの招集に応えてくれて感謝する。これより、連邦諸国永神種議会を開催する」
靜するが 身長169cm 年齢■■■■歳
靜しみず 身長156cm 年齢■■■■歳
藤枝参久 身長175cm 年齢27歳
猪頭大平 身長184cm 年齢■■■■歳
河頭咲良 身長163cm 年齢■■■■歳
熱山美佑 身長149cm 年齢■■■■歳
流水掬 身長178cm 年齢■■■■歳
猪東綾人 身長168cm 年齢■■■■歳
降田ツメキ 身長154cm 年齢■■■■歳
沼蛇松 身長179cm 年齢■■■■歳
沼津間門 身長171cm 年齢33歳
下香貫宮八重 身長149cm 年齢13歳
周知小國 身長166cm 年齢■■■■歳
袋石夜鳥 身長159cm 年齢■■■■歳
武豊耐久 身長182cm 年齢■■■■歳
根々川千鶴 身長168cm 年齢■■■■歳
渡海勇 身長178cm 年齢■■■■歳
古田崎悠生 身長177cm 年齢■■■■歳
堀之内弥凪 身長164cm 年齢■■■■歳
崖川あさひ 身長160cm 年齢■■■■歳
井谷俣治 身長177cm 年齢■■■■歳




