3-05『上井谷の支配権』
神紀5001年、元旦祭。
靜国の静岡神社に集まった神々は、祭事を終えた午後、最高議会に臨んだ。
本来、この祭事の午後というのは不特定の2カ国間同士の会談が恒例で、最高議会を含め会議など開催してこなかったわけだが、この年はそういうわけにはいかなかった。
昨年勃発した内戦、井谷戦争の戦勝国会議を開催する必要があったのだ。
戦勝国会議と雖も、現時点で靜連邦に加盟する国家のうち、日渡国以外の全ての国が戦勝国である。
なお井谷国と同盟を結び統率国に反抗した日渡国は当然敗戦国なわけだが、終戦直前に濱竹国によって占領され降伏し、その後で統率国に対して反逆の意思なしと認められているため、今更なにか処罰を求める声はなかった。
そのため、発言権は持たないものの出席が認められ、しかしその立ち位置は“濱竹領日渡”などと名乗らされていた。
いちおう補足するならば、日渡は連邦加盟国として認められているため、この扱いは戦勝国会議における形式的な処置である。
「さて、ここで決めなきゃいけないのは、旧井谷国の領土をどう扱ったら良いかだ」
靜するががそう言った。
「現状はどうなっているんだっけ?」
宇治枝恭之助がそう訊く。それに答えたのは濱竹安久斗だった。
「下井谷を靜が、上井谷を濱竹が管理しているな」
「じゃあそれでいいんじゃないか?」
安久斗の言葉に古田崎悠生が意見した。
頷く神々。どうでもいいと言わんばかりの様子だ。
しかし、そんな適当では困ると表情を顰めた靜あおいが、
「その領土分割でも不満はないけどさ、もう少し関心を持ってもらいたいわ。あなたたちだって同じ連邦に所属する当事者なのよ?」
と声をかける。
「でも別に直接井谷と戦ったわけじゃないしな」
猪東綾人がそう発言する。
「勝手に靜と濱竹が井谷を潰しただけだしな」
大山域洞も呟く。
井谷戦争に加担しなかった国々にとってみれば、本当に無関心の領域なのだ。
「はぁ……」
するががため息を吐いた。
しかしそこに、沼蛇松が挙手をして意見した。
「今のまま靜と濱竹で折半するのも別に良いと思うが、直接戦った宇治枝、島谷、根々川なんかにも領土を切り分けたらどうだ? 例えば旧妖精自治領の辺りなんかは元来根々川の領土だ。あとは寸又峡なんかも根々川と繋がりがあると記憶している。あの辺りは靜が所有するよりも、歴史的に見るならば根々川が管理する方が収まりが良さそうだが」
「たしかにそうだね。でもそれだと、俺と嘉和水ちゃんが出る幕はなさそうだ。ほら、俺たちが攻め入った地も結局は旧根々川領なわけだし」
「そうね。私たちよりも千鶴が治めるべきね」
宇治枝恭之助と島谷嘉和水が蛇松の意見にコメントした。
対して名前を挙げられた根々川千鶴は、
「え……」
領土が増えると管理が面倒だと言わんばかりの嫌そうな顔をみせた。
「そんな嫌か?」
安久斗が訊くと、
「嫌というか。その地に住んでるの、ほとんど妖精なわけでしょ? また自治領が云々とか言われると面倒だから渋ってる」
と珍しく長く喋った。
「だったら、井谷全土に住む妖精を濱竹の妖精連邦に移して、空っぽになった土地だけを根々川に移管してみたらどうだろう?」
するがが提案する。
「お、くれるのか? 妖精」
安久斗がするがに訊くと「どうぞどうぞ」とするがが言う。
安久斗はしめたと笑った。
それを見て神々は、全く変な奴だと安久斗を見た。
「まぁ、妖精が付いてこないならもらう。旧領土だし」
千鶴はそう言った。
「そういや、なんで手放したんだ?」
安久斗が千鶴に訊くと、
「むかし俣治が犬間攻略の拠点にするために勝手に入ってきたからあげた」
などと言う。
「あげたって……。そんな簡単に渡しちゃ良くないでしょ」
あおいが言うと、
「妖精ばっかりだし、そもそも遠いし。地形も入り組んでて嫌だし、管理面倒だし」
と千鶴が言った。
「じゃあ今度は管理怠らないようにね」
するがが千鶴に言うと、「なるべくがんばる」とだけ返ってきた。
「じゃあ根々川の旧領は返還するとして。それ以外の土地は下井谷を靜が、上井谷を濱竹がもらうって感じでいいかな?」
するがが取りまとめるように訊く。
神々は頷いて、反対意見がないことが確認された。
「じゃ、そういうことで」
これをもって、井谷戦争が完全に幕を閉じた。
……はずだった。
ーーーーー
ーーー
ー
冬至後5日。
関東統一連邦から通達が入った。
『終戦から50日経った今も未だ濱竹国が上井谷を占有している怪奇な状況について説明せよ』
なんだそれ。
俺はその紙を見つめて眉を顰めた。
「説明せよって言ったって、そう決まったとしか言いようがない」
俺はそう思って返事を書いた。
内容としては簡潔に『戦勝国会議で領土を定め、根々川、靜、濱竹の3カ国で分割した結果だ』とした。
返事はそれから3日後に来た。
『根々川の領土は旧領であるため正当性が理解できるが、上井谷が歴史上濱竹の領土となったことは確認できず、なぜ皇神種国家に祖神国家が譲歩し戦略上重要とも取れる土地を与える必要があるのか理解できない。』
はぁぁ???
おいおい、内政干渉だろ。
どうにも腹が立って仕方ないので、俺は南四の祖神を呼び出して会談することにした。
来たのは済田政樹だった。おそらく手紙を書いているのもこいつだろう。色々歴史などを調べてくるあたり間違いないと見る。
「内政干渉をやめてほしい」
「はて、何のことでしょう。私たちは靜の威厳を、もっと言えば祖神種の威厳を保つために意見をしているのですが」
なんとも面倒な奴らだ。
祖神種のメンツが保たれない限り、いつまでもつべこべ言ってきそうだ。
「祖神種の威厳とか、うちは関東と違って特段求められてないんでね。それよりも統率国という枠組みで協調し、靜と濱竹が共に手を取り合うことで連邦を安定させる必要があるんだ。だからこの分割は妥当で……」
「妥当? 生ぬるいですよ、生ぬるい。本当、そんなことをやっているから舐められるのですよ?」
いや、お前らが勝手に下に見て舐めてるだけだろ。
……あぁ、下に見られている理由を教えてくれているのか。
え、もしかして親切心のつもりか?
うーわ、めんどくせー。
「まぁいいです。で、その皇神種と協調することで何が得られるんですか?」
「何って。連邦の安定と円滑な運営だが?」
「いいや、残念ですがそれらは得られませんね」
「は?」
なんだこいつ。
政樹は眼鏡を指で押し上げると、
「皇神種国家に譲歩するような弱い祖神種として印象付けられてしまっては、東西どちらからも下に見られ、靜連邦はいつまで経っても“所詮”靜連邦だもんな、などと言われ続けます。そうすれば侵略される可能性も上がりますし、平和とか安寧とか、そういうのは遠ざかる一方です。連邦の安定? 円滑な運営? 本当に皇神種に任せて得られるものですか? だとしたらそれはあなたたち靜の領導性に問題があり、皇神種よりも立場が弱い、良くて皇神種と同格な蛮庸な連中だという証明に過ぎません」
「あっそ」
「つまるところ、」
え、続くの?
俺が嫌そうな視線を送るが、そんなことは構いもせずに政樹は話を続けた。
「濱竹なんぞに領土を与えれば、靜の威厳なんてものは消滅するのです。戦争を仕掛けた祖神国家がその全土を併合できず、なぜか途中から参入してきた皇神種国家に戦略的重要拠点を持っていかれては、靜とはどんなに弱い祖神種なんだと、体数だけは多いが頭はそれぞれ3分の1なんだと、そう言われかねませんよ。連邦内の立場も、外から見たら靜は祖神種の中では最弱なのかと、そう見られます。濱竹に領土を渡すというのは、対外的に見て不利益しかないんですよ。あなたはそれをもっと自覚するべきです」
「忠告どうも。でもそれ、内政干渉だから」
俺は政樹にそう言った。
「いえいえ、そうじゃありません。これは祖神種として、祖神種の地位を守るために取っている行動です。おかしいのは靜のほうですよ? 祖神種たる者、その強さを内外に知らしめる必要があるでしょうに」
政樹は俺にそう言った。
「いや、内政干渉って言葉知ってる? その意見こそが干渉でしかない。靜連邦のことは靜連邦で決める。あんたら関東に決められることじゃないんだ」
「知っていますよ、そんなこと。でもそれはそちらだって同じことです。我々の主義思想に意見をしてはならないのですよ」
「安心して、するつもりないから」
なんだよこいつ。
いや、マジでなんなの。
「まぁ、物分かりの良いあなたなら、きっとこの程度言っておくだけで十分でしょう。上井谷、ちゃんと靜が併合してくださいね。期待していますよ」
政樹はそんなことを言って去っていった。
腹が立つ。靜連邦の中で決めたことに口を出すな。
俺は政樹からの話を姉さんとしみずに伝えた。
「酷い干渉じゃない。無視しましょう」
姉さんが言う。
「いちいち相手にしてられないしね。靜連邦のことは靜連邦で決める。関東に決められる筋合いはない」
しみずもそう言った。
「とはいえ、大人しく引き下がるとは思えないんだよなぁ」
俺が言うと、姉さんもしみずも視線を逸らした。
見解は一致していた。
「でも、やっぱり何か言われる筋合いはないよ」
しみずがそう言う。続けて、
「靜は靜の決定にのみ進む。それ以外の如何なる侵害も受けてはならない!」
と強く言った。
「そうね。ましてそれが連邦外からの言葉なら、ただの干渉でしかないもの。靜連邦における領土はこれで確定、安久斗にも断固として上井谷を守るよう命令しましょう」
姉さんが言う。
俺もしみずも頷いて、すぐに安久斗に連絡を入れた。
安久斗はこの決定に「わかった」とだけ言う。
一昨日の関東との会談で、彼も相当弱ってしまったのか、今回の決定にもいつも通りひとつふたつの嫌味を言うかと思ったが、意外にも何も言ってこなかった。
そして改めて、靜連邦は井谷戦争後の領土を統率国の中で確定したと、関東を含む連邦外に通達した。
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ーーー
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しかし、その通達を受けた関東統一連邦は「連邦内に如何なる理由があろうとも祖神種の威厳は確固として守られるべきだ」と靜連邦に再度領土の見直しをするよう抗議した。
しかし靜連邦はこれを受け入れず、領土を再編することはなかった。
これを受けて関東統一連邦は、靜連邦に駐屯する南四軍のために作られている靜連邦全土の地図を井谷戦争後初めて更新し、勝手に上井谷を靜国の領土としたのだった。
すなわち、関東統一連邦は濱竹の上井谷支配を認めない考えを正式に表明したのだ。
これに対し、靜連邦は抗議した。
「上井谷の支配権は濱竹にあり、靜国の領土ではない。靜国は旧根々川領を除いた下井谷のみがその権限が及ぶ土地と認め、これは靜連邦の採決に基づいて定められし正式な領土である」
その文言に対し関東統一連邦は、
「皇神種国家に領土を分配し、祖神の権限を意図的に虐げるような弱意的かつ消極的な祖神種など、世界の恥晒しも良いところ、この靜国の決定は全世界の祖神種の面前に泥を叩きつけるような侮辱的行為と受け取る。靜連邦は世界の緩衝材などという便利な文句を盾に祖神種の権限を弱め、皇神種に好き勝手やらせる野蛮連邦であると再認識し、祖神国家の威厳および世界の祖神種の地位を保護するべく、我々関東統一連邦はここに靜連邦の採決を厳しく非難し、領土をあるべき姿に改善させるよう求める」
と声明を出した。
靜連邦は当然内政干渉を辞めろと声明を出し、関東統一連邦を厳しく非難した。
非難の応酬が続いていた冬至後17日、南四連邦が靜連邦に駐屯させていた軍を動かし、新型戦車を見せびらかすように街道を西に進ませ、靜国のすぐ目の前、富田川の東岸に進駐した。
また、清水港に関東統一連邦の第一、第二艦隊を終結させ、その全ての主砲の照準を静岡神社に定めた。
砲弾を撃ち込むことはなかったが、その威嚇に靜国が軍を動かし、富田川を挟んで南四軍と睨み合った。
また、濱竹国とその応援要請を受けた中京統一連邦は直ちに連合艦隊を編成し、駿河湾の封鎖に動いた。
関東統一連邦の大艦隊が駿河湾に閉じ込められている中、沼国と猪頭国も新造した戦艦を動かして清水港へと迫った。
しかし、その駿河湾の封鎖を解除するべく、すなわち関東の第一、第二艦隊を救出するべく、北守連邦の第五艦隊が動き出し、濱竹中京連合艦隊の目前にまで迫った。
“駿河危機”の勃発である。
どちらかが警告射撃を含む攻撃をした時点で戦争に発展するであろう状況に、世界は黙っていなかった。
関西統一連邦と九州統一連邦、第四大陸連邦は合同で声明を出し、無益な争い事を繰り広げる大連邦協商を厳しく非難した。
また、世界の緩衝材となっている靜連邦で関東と中京が戦争を起こせば、世界は一気に崩壊へと舵を切ると警告を出し、これを「正しく危機的状況だ」とした。
その後すぐに桜咲メグは創造神カリナと会談し、大連邦協商の仲裁を依頼した。
カリナはメグの依頼を引き受けると靜連邦に来て、靜するが、濱竹安久斗、名護密、東輝洋介、伊山歌仙を静岡神社に招集し、今回の騒動について厳しく叱責した。
しかし、騒動の元となった関東統一連邦の靜連邦への内政干渉については「武力を用いずに解決してください」と言うのみで、それが内政干渉に値するか、咎められるべき行為であるのかは一切言及しなかった。
カリナの指示で、それぞれの軍は本来あるべき持ち場へと戻り、“駿河危機”は幕を下ろした。
しかし、この一件で大連邦協商は既に意味を為していないことが明らかとなり、関東統一連邦対靜連邦と中京統一連邦という構図が提示されることとなった。
設立から4年目を迎えた大連邦協商は、本来あるべき文明保護協定の軍事組織としての役割を完全に失い、その意義や存在について話し合うべく、桜咲メグは靜の三大神に文明保護協定の開催を請願した。
この請願に関東統一連邦の東輝洋介も便乗し、祖神種の地位を明確にするべく靜国の領土決定の是非を協定で採決したいと申し出た。
文明保護協定を開催するか否か、靜の三大神は臣と巫女も交えて話し合いを開いた。
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「桜咲からの請願は、今後の大連邦協商の在り方を問うというものね」
姉さんがそう言う。
「これで“不要”と結論付けられれば大連邦協商は解体、そうなるとボクたちは関東と中京の技術的支援が得られず損をすることになる」
しみずが言った。
「とはいえ南四の軍は追い出せるし、関東に内部から蝕まれる危険性も消えるね」
俺が言うと、一同から頷きが返ってきた。
現状、大連邦協商の恩恵は大きく、この靜連邦は支援が開始された去年から著しい成長を遂げている。
これは単に関東統一連邦からの支援がもたらした結果である。
憎らしい奴らではあるが、確かな技術力と文明を持っていることは言うまでもない。
それが無条件で50年得られるのだから、今後の靜連邦の発展を考えれば大連邦協商という枠組みは守り抜かなければならない。
しかし、大連邦協商に属することで靜連邦自体の存続が危ぶまれる事態に陥っている。
軍の駐屯、内政干渉、そして今回のように軍事的圧力まで、結局のところ大連邦協商があるが為に靜連邦の主権が脅かされていると言える。
その旨のことを溢すと、意外にも臣の呱々邏から意見があった。
「お言葉ですが、もし我々が関東が求める“理想の祖神国家”の姿を成したら、内政干渉や軍事的圧力は軽減されるのではないでしょうか……?」
「理想の祖神国家?」
姉さんが訊き返す。呱々邏は「はい」と頷いた。
詳しく聞かせろと言うと、呱々邏は咳払いをして話し始めた。
「関東は、祖神種である我々靜国が絶対的な支配力を持つように促しています。上井谷の支配権もそうですが、それ以上に濱竹安久斗神に対する対応や、去年あった猪頭諸国の忠誠心も、全ては靜国の権限を強めるべく行動しているように見えます。靜連邦を支配下に置くことだけが目的なら、わざわざ靜国の権限を強める必要はありませんし、それなら勝手に軍を動かして併合してしまえば良いだけです。でも、それをしないでわざわざ我々靜国の祖神国家としての威厳を気にしてくる辺り、そうあるようにさせたいのではないでしょうか」
「つまり、ボクたちが関東から見て祖神国家として相応しい姿になれば、求めるものがなくなるから、今みたいな内政干渉や軍事的圧力が減ることに繋がるって考えか」
しみずが確認すると、呱々邏が頷いた。
関東が望む祖神国家の姿になれば、か。
「併合前の下準備かな」
俺が呟いたら、姉さんが強く頷いた。
「たしかに呱々邏の言うことは一理あるわ。結局それって関東の要求に応じて上井谷を併合するってことだし。向こうの要求に応えれば、向こうの理想形にどんどん近づくのは当たり前のことで、そうすれば自ずと干渉も減る。当然のことね」
そこまで言ってから、姉さんは少し間を置いて「だけど」と続ける。
「それが既に“内政干渉”なのよ。呱々邏の言っていることは関東の希望に沿うように靜国の姿を改めるってことじゃないの。それがもう内政干渉以外の何物でもないじゃない」
「お、仰る通りです」
姉さんに意見されて呱々邏は小さくなった。
「まぁ、気にしないでいいさ。意見は議論を深める上で重要なものだしね」
少し気にしてしまうかもしれないと思って、俺は呱々邏をフォローしておくことにした。
「お言葉ありがとうございます」
呱々邏は俺にそう言ってきた。俺は微笑みを返した。
「で、話を戻すと、」
しみずが切り出した。全員の視線がしみずに集まった。
「桜咲は大連邦協商の在り方について気にしていて、関東はボクら靜国の対応が祖神国家あるまじきものであることを気にしている。それぞれその採択を取りたい、というか意見を集めたいから協定を開催したいと言っている。するの、しないの?」
しみずはそう言ってから「早く決めたいんだけど」と付け足した。
おそらく、他にやりたいことがあるのだろう。
「大連邦協商の存廃も、祖神種の在り方も、結局のところ我が国に、我が連邦に大きな影響をもたらす議題だ。関東からの提案なんて靜のことしか言っていないわけだしね」
協定を開催したら、我が国に取って不利益となる結果が生じる可能性がある。
良くても現状維持だし。
それって利益があんまりにも少なくないだろうか。
「でも、連日関東から脅されているから少し嫌な方向に考えが巡ってしまっていたけれど、冷静に考えれば関西がいるわけだし、関東に対して内政干渉や圧力の面で味方になってくれる可能性は大きいじゃない。それならきっと、関西は関東と違って靜連邦が定めた領土を尊重してくれると思うのよね」
姉さんがそう言った。
「たしかに。関東と対立するからこそ、ボクらの支持をするっていうのは大いに期待できるね」
しみずが言う。
「楽観視するならそう言えるね」
それに今までも、なんだかんだでそんな感じだった。
結局は東西対立のプロパガンダに使われるだけなんだろうけど、それでも関東にガツンと言ってくれるなら開催するべきだと言える。
「開催してみるか。大連邦協商がどうなるか不安ではあるけど、内政干渉の解決策は期待できそうだし」
俺がそう言うと、姉さんもしみずも異議なしと頷いた。
よって靜国は、世界の祖神国家に向けて文明保護協定の開催を宣言した。




