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神継者〜カミヲツグモノ〜  作者: ひらたまひろ
井谷戦争
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2-24『救いの艦』

「報告! 敵艦多数が西の水平線より上がる! その数……少なくとも20……否、訂正、30を越える!」


 監視兵の声に船の中は笑いに包まれた。


「おいおい、まさか30なんて」

「濱竹にそんな数ねぇよ!」

「冗談言ってないで教えろー!」

「真面目にやれよ!」


 しかしそれに対し、八王子奥多摩助が怒鳴り声を上げた。


「事実だっ! 敵艦の数は30を下らん! だが濱竹に30も船がないことも事実だ!」


 その言葉で、乗組員はようやく事の深刻さに気が付いた。


 濱竹以外のどこかの船が、あの中に混じっている。


 西から濱竹が現れたということは、おそらくは関西寄りの国家だろうと推察するのは容易かった。


 そしていよいよ、その艦隊が明らかになった。


「報告っ! 見ゆる敵艦、内訳、濱竹戦艦『新時代』を中心とした第一艦隊7隻、濱竹戦艦『大躍進』を中心とした第二艦隊9隻、中京統一連邦戦艦『大名古屋』を中心とした第一艦隊12隻と、関西統一連邦戦艦『一攫千金』を中心とした第三艦隊15隻の、計43隻っ!」


「「「…………」」」


 艦は静まっていた。


 誰も、何も言わなかった。


 ただただ内容が理解できず、口を開けて呆然としていた。


 そのうち、誰かがこう言った。


「関西……統一連邦……?」


 なぜ出てきた? なぜここにいる? 奥多摩助は混乱をする頭の中を頑張って整理してから、この状況における最善の策を見出そうとする。


 霧が引いた海の上、敵戦艦は全部で4艦。しかもその大きさは、全てが自分たちが乗る巨大戦艦『みらい』と同格、もしくはそれ以上である。その戦艦が全て、主砲をこちらに向けて構えていた。


 対してこちらの戦艦はこの『みらい』のみ。真正面からぶつかっても勝ち目はない。


 日渡まではあと5kmを切っているが、このまま進めば濱竹が黙っているはずがない。攻撃が始まって沈められるのは時間の問題だろう。


 であるならば、残された行動はただひとつだ。


「撤退だっ! 撤退せよ!」


 そう、逃げるしかないのだ。


 艦の向きを変えて、東に向けて撤退する。その間に後ろを見れば、敵艦隊がひょこひょこと追いかけて来ているのだ。


 黒い魚影のような43の敵艦に追われながら、全力疾走で古田崎国の御前崎を通り過ぎて、遠州灘を出た。


 それ以降、敵艦隊は追って来なかった。


「くそっ! くそっ!」


 何度も、何度も、奥多摩助は机を殴って泣いた。


 靜連邦の小国日渡を制圧できなかった。


 負けてはいないが、撤退を余儀なくされた。


「関西なんぞ……! 関西なんぞ……!!!」


 しかし、攻撃することは叶わなかった。


 靜国の清水港まで戻ってきた第一艦隊を見て、東輝洋介は急いで何があったのか奥多摩助を呼び寄せて話を聞いた。


 奥多摩助は、いつ殺されるのか分からないと怯えながら、洋介に事の顛末を話した。


「濱竹が関西と中京の戦艦を率いて現れただと!?」


 洋介は大声を上げて驚いた。


 それもそのはずだ、濱竹艦隊は秋田沖で沈んだと思われていたからだ。


 しかし実際は沈んでおらず、糸魚川に寄港することなく通り過ぎ、西側を回って関西、中京と合流して遠州灘まで帰ってきたというのだ。


「奥多摩助、よくやった」


 洋介は静かに奥多摩助を褒めた。


「で、ですが……」


 褒められた奥多摩助は、それが皮肉で、そして死の宣告でもあるように思えて、怯えきった表情で返した。しかし洋介はそんな奥多摩助の頭に手を置いて、雑に撫でると、


「砲弾を撃ち込んでいたならば、世界大戦まっしぐらの相手だ。俺はそんなこと望んでいない。お前は最善の選択をしてくれた。気に病むことはない。これは意味のある撤退、有意義な敗北だ」


 そう言った。その言葉に奥多摩助は堪えきれずに涙を流して、その場で伏して泣き喚いた。


 洋介はしばらくそれを見た後で、


「おい、靜! 状況が変わった。濱竹が日渡に味方すれば厳しくなるぞ! どうすんだ?」


 その場に一緒について来た靜しみずに訊いた。


 しかししみずは、


「知らないよ、そんなの。安久斗次第なんだから今から焦っても仕方ないし」


 と、少し不機嫌そうに答えた。


 洋介は内心、これはダメだと思いながら、


「濱竹が関西や中京を従えて戻ってきた以上、俺たちはもう奴らに手が出せん。世界大戦を誘発するわけにはいかんからな。悪いが猪頭の開発に戻らせてもらうぞ!」


 と言って、第一艦隊に乗り込んでその日中に土肥港まで戻っていくのだった。


 こうして井谷戦争から、関東統一連邦は完全に撤退した。


 靜連邦には濱竹が関西統一連邦と中京統一連邦を従えて戻り、その巨大な戦力が井谷につくか靜につくかという緊張が立ち込めていた。




ーーーーー

ーーー




「安久斗が戻ったってー」


 靜国の静岡神社にしみずが戻ると、するがにそう伝えた。


「さすがに死んでなかったか」


「ま、安久斗だし。あと、関西と中京の艦隊を連れて戻ったから、南四が猪頭まで逃げ帰ってった。これで南四は戦争を完全に離脱するみたいだよ」


 しみずのその言葉に、するがはガッツポーズをしながら、


「でかしたぞ、安久斗!」


 と珍しく大きな声を上げた。それを聞いたしみずは耳を塞ぎながら「うっさ……」と小さく言いながら部屋を出ていった。


 残ったするがは、どうしても上がってしまう口角を頑張って抑えながら、


「これで全てが終わるんだ……!」


 そう呟きながら椅子に寄りかかった。




ーーーーー

ーーー




 安久斗様が戻られたとのことで、僕ら日渡国神治首脳部と統合神務局関係者一同は、疎開先の豊岡神社から浜松神社に移動した。


 そこで、安久斗様と濱竹軍主力部隊の帰還式が執り行われた。


 浜松神社のエントランスホールに、萌加様をはじめとした僕ら日渡国の神治首脳部が並び、安久斗様らが本殿に入られるのを待った。


 戦車や装甲車から軍隊に囲まれるようにして安久斗様、ひくまさん、おなさんが降りて来られ、その後すぐに軍が隊列を整えて、安久斗様、ひくまさん、おなさん、中田島将軍が並び、それに続いて2列(陸軍と水軍が1列ずつ)に並んで軍隊が整列した。


 将軍以下軍隊は本殿に入って来ないようだが、安久斗様に続いてひくまさんとおなさんが本殿に入られた。


 安久斗様に萌加様が歩み寄り、微笑まれながら、


「無事で何よりだよ、安久斗」


 と声をお掛けになった。


「ハッ、舐めんな」


 安久斗様は萌加様に笑顔でそうお返しになってから、萌加様と握手を交わされた。


 僕らはそれに拍手をして、帰還を歓迎した。


 僕の元にはひくまさんが寄って来られて、


「色々と手を回してくれたみたいだね。ありがとう」


 と声を掛けられたので、


「いえいえ、僕は何も……」


 と答えておいた。その後で微笑みながらひくまさんに握手を申し込まれたので、その手を取って臣同士で握手を交わした。


 横を見ると、珍しくおなさんが花菜と何か談笑していた。……あの方、あんな感じで笑うんだ、びっくり。


「おなは、ああ見えて世間話が割と得意なんだよね」


 僕がそちらに視線を向けていたから、当然ひくまさんに見つかり、僕にそう言ってきた。


「なんか意外です。笑ったところなんて初めて見ましたよ、たぶん」


 そう答えたら、ひくまさんも「分かるよ、珍しいよね」と笑っていた。


「まぁ、とはいえ誰彼構わず話し込むわけじゃないんだ。あいつは自分が認めた同格の他者に限ってああいう振る舞いをするんだ。良くも悪くも、上でも下でもない存在とね」


「あぁ、そうなのですか」


 つまりおなさんにとって、花菜は同格の存在で、上でも下でもないから世間話をする対象になるわけか。


 まぁでも同格だよなぁ。同じ巫女だし。


 違うとすれば、花菜のほうが14歳ほど若いことと、国の規模が比べるのも烏滸がましいくらいに違う程度か。


 ……同格ではないな、うん。


 そう考えると、花菜のコミュニケーション能力というのは侮れないのではないかと思えるようになった。


「で、だ」


 ぼんやりとそんなことを考えていたら、安久斗様が僕らを見渡しながらお声をかけられた。


 全員の視線が安久斗様に集中する。


「萌加、頼んだ」


「うん」


 安久斗様はすぐに萌加様に話を振られると、萌加様が懐より紙を取り出されて、それを読み上げられた。


「日渡国は、緊急特別統治法に基づき、濱竹安久斗神の帰還を以て緊急特別統治を終了する。就いては、濱竹国全域を日渡国の保護下から切り離し、その土地の主権を濱竹安久斗神に返還することを宣言する。また、統合神務局を解体し、保護下に置く以前に存在していたそれぞれの神務局に戻すこととする」


 そのお言葉に、安久斗様が「全て承諾する」と敬礼され、


「ここに濱竹国は我の帰還と共に主権を回復し、日渡国からの解放を宣言する!」


 と力強いお言葉を述べられた。


 エントランスホールで見物していた全ての上神種、下神種がその言葉に湧き立ち、拍手をし、中には泣いている者もいて、そして安久斗様らが不在の中で完成した濱竹国歌を熱唱し始めた。


 安久斗様やひくまさん、おなさんは国歌ができていたことに大層驚いておられたが、


「こりゃまたオメェらやってくれたな」


 と豪快に笑われながら僕らに視線を向けられた。




 その熱狂もひと段落ついたあたりで、安久斗様が真面目な顔をされて萌加様に問われた。


「で、井谷と靜の戦争はどんなもんだ?」


「連邦加盟国の全軍を投入して井谷を押しているという情報は入っているけど、どこまで押しているのか具体的なことは分からないし、何しろ日刊靜だから……」


「それは信用できねぇな。アレは立場上、靜に不都合な記事は作れねぇし」


 井谷戦争の戦局を尋ねられるも、国を閉じてしまっている影響で僕らにも情報があまり入って来ず、戦局は今ひとつ分からないのだ。


「仕方ねぇな。お前ら、戦争には直接関与してんのか?」


 安久斗様は話題を転換なされ、萌加様にそうお尋ねになった。


「うーん、靜に宣戦布告しているわけじゃないけど、井谷には濱竹の武器庫に余ってた武器を輸出してる。まぁそれで目を付けられて南四に宣戦布告されたんだけど、その南四は関西をちらつかせることでたぶん撃退できたから、直接戦争はしてないかな」


「すっげぇ微妙な立ち位置だな」


 安久斗様は頭をお掻きになりながらそう呟かれる。


「そういえば、今更だけど安久斗はどっちの味方なの?」


 その反応を見た萌加様が、少し不安そうにそう尋ねられた。


 僕らは、安久斗様はこちら側の味方をしてくれるであろうという想定をしていたため、安久斗様の帰還を計画した。


 濱竹の国土が靜勢力に侵略されて実害が出る可能性があるのなら、さすがの安久斗様もこちらの味方をしてくれるはずだろうと踏んでいる。


 現に、濱竹には南四からの攻撃が数発撃ち込まれて、火災が起きていた。南四は事実上撤退しているが、まだ戦争が終わったわけではない。


 これから再戦する可能性もゼロではない。


 萌加様に「どっちの味方か」と問われた安久斗様は、「難しいな」と呟かれてから、


「今はまだ決めてねぇんだ。強いて言えば、どっちの味方でもねぇな」


 とお答えになった。


「じゃあ……!」


 こちらの味方をしてくれ、と萌加様は安久斗様にお願いしたいようで、そう声を発せられたが、それは安久斗様によって封じられてしまう。


「萌加、国を開いて連邦に戻れ」


「うぇ……」


 その安久斗様のお言葉に、萌加様はただただ絶句されていた。それをご覧になって安久斗様は頭を掻かれて、「じゃあ仕方ねぇな」と気怠そうに仰ると、


「俺は一度靜に行く。俺が戻ってくるまでに、国を開くか閉じたままでいるか決めろ」


 そう仰って、神社を去っていってしまわれた。




ーーーーー

ーーー




 安久斗が靜国静岡神社にやってきたのは、冬至前80日の正午過ぎだった。


 静岡神社を丸く囲うように広がる府中と呼ばれる市街地は、すでに北部が戦場となっていて上空から見るだけで廃墟となっていることが見て取れた。


ひでぇもんだな」


 静岡神社に入って、靜の三大神と会談した安久斗は、開口一番そう言った。


「作戦のうちだから。とはいえ、ちょっと損害が大きすぎて困ってしまうね」


 するががそう笑いながら答えた。


「しかし井谷は強いな。あの戦力、滅ぼしちまうのが惜しいくらいじゃないか?」


 安久斗がそう言うと、


「バカ言いなさい。残しておいたところで良いことないわよ。戦力丸ごと吸収できるわけでもないし、犬のように忠実なしもべになんてならないだろうし。大きな反乱勢力のまま変わらないわよ」


 とあおいに怒られる。


「で、安久斗はよく戻ったね。あんなベストタイミングで戻るなんて思ってなかった。ボクら、日渡は見捨てなきゃいけないかなとか思ってたくらいだもん」


 しみずが安久斗にそう言った。


「あぁ、それか」


 安久斗はそう言うと、


「あれは日渡の作戦だ。あいつらも相当、この人類文明を真似たような戦いに馴染んできてるみたいで驚いたぜ」


 と返した。


「日渡が立てた作戦だったのか?」


 するがが訊くと、「そうだ」と安久斗が返した。


「じゃあ関西と関係を持っていたのも濱竹じゃなくて日渡だったってこと?」


「そうだな」


 信じられない、とあおいが言った。それにするがも頷いて同意を示すと、


「てっきり安久斗がサハに行ったフリをして西側を巡っているものとばかり思っていたよ。手紙の返事も全然来ないし」


 と笑いながら言った。


「おいおい、俺はちゃんと北端で務めを果たしてきたんだぜ? いくらなんでも黙って西に行くほど破天荒じゃねぇよ」


 そう返した。


「あ、でも、アレはどうなの?」


「なんだよ、アレって」


 しみずの質問に安久斗がそう訊くと、しみずが具体的な内容を問うた。


「北守連邦沖で濱竹の船が沈んだって噂。適当に情報をばら撒いたの?」


「んなわけないだろ、作戦のうちだ」


 安久斗の言葉に、


「それもさっき言ってた日渡が立てたってやつ?」


 あおいが訊くと、


「んや、それを利用して濱竹軍が立案した別のやつだ」


 と安久斗が答えた。詳しく聞くと、


「日渡は関西に根回しして、濱竹艦隊が大連邦協商が定める範囲より西を航行できるようにしてくれていたんだ。おかげさまで俺は糸魚川ではなく、北陸の富山に寄港するよう桜咲から指示が出た。また桜咲は、富山、下関、大阪、豊橋とそれぞれ寄港して、5日で濱竹まで戻るルートを提示してきて、大阪で関西の第三艦隊と、豊橋で中京の第一艦隊とそれぞれ合流するように指示を出してきた。これは日渡からの根回しだ。だが、それだけでは糸魚川に寄らないことで濱竹が西に向かったことがすぐにバレてしまう。日渡あいつらも詰めが甘いからな、関西や中京を味方にしただけで、そこまでは考えていなかったのだろうよ。それで濱竹は、艦隊の古い部品を北守連邦の沖合でわざと捨てて、あたかも船が沈んだように見せたってわけだ。こうすれば、濱竹艦隊が糸魚川に寄っていない理由ができるだろ?」


 安久斗が樺太にてもらった桜咲メグの手紙には、関東が太平洋で軍事演習を行うこと以外にも、細かな寄港場所の提示と、艦隊との合流が書かれていて、それらが日渡と連携を取って立てられた作戦であることも記載されていた。


 それを見て、安久斗は帰還が必ず上手くいくことを確信したが、関東を欺くための決定的な一打が足りないことに気がついて、その穴を補う別の作戦を付け加えたということだった。


 余談だが、その作戦は小松喜々音が中心となって立てたものであった。


「よくこんなにも関西が協力してくれたもんだね」


 するがが少々驚いたように感想を言った。


「ま、靜連邦に介入する関東が目障りなんだろうさ。だから自分たちも少し介入して、関東を追い払う計画に乗ってくれたってところだろ」


 するがに対して安久斗がそう見解を述べた。


「でもこれで、西部には関西との繋がりができて、関東も我が物顔でこの連邦の内政に入り込めなくなったね」


 しみずがそう言うと、


「そう簡単に諦める奴らとは思えんが、今までのように連邦全域で統制を強めることは難しくなっただろうな」


 と安久斗は言う。


「少なくとも西部にはもう簡単に干渉できなくなったね。ここまでは、計画以上の成果を出せている」


 するががそう言った。


「そうね。じゃあ私たちも、そろそろ本気で動こうかしらね」


 するがの言葉にあおいがそう返して、安久斗を見た。


「あぁ」


 安久斗はそれに頷く。安久斗だけではない、するがも、しみずも、あおいの発言に頷いた。


「靜の三大神の名の下に命ずるわ」


 あおいが安久斗にそう切り出した。安久斗は姿勢を正してその言葉を聞いた。


「濱竹国は、この瞬間より靜連邦に回帰し、また同時に、二大統率国の一席に任命す。我ら靜国と共に、連邦の、主として西部の件に従事し、世の乱れを正し広く安寧をもたらすことに専念せよ」


「はっ! この濱竹安久斗、しかめいを承りて、連邦の安寧を第一に考え、靜国と志を同じくし、その名誉高き務めに従ずることを誓い奉る!」


 こうして、日渡の保護下より外れて主権を回復した濱竹は、およそ270日ぶりに二大統率国の座に復帰したのであった。


 この“皇神種国家を連邦の統率機関に置く”という決断は、関東統一連邦がもう靜連邦の内政に深く関与できないことを見込んでのものであった。


 つまりは、祖神種第一主義を掲げる関東統一連邦に対する、明確な叛逆的意思の現れとも言える行動なのだった。


 内政に引き込むと見せかけて、甘えるだけ甘えて技術をもらい、しかしその裏で着々と排斥の準備を進めるというのが、靜と濱竹が年始に企てた()()だったのだ。


 日渡の予期せぬ行動で一時は頓挫に追い詰められそうになるも、結果的に関西を入り込ませることに成功し、これ以上ないと言っても良いほどにまで計画は上手くいったのだった。


 そして、それ以外にもうひとつ()()があって、それは絶賛進行中なのである。


 その計画とは、言わずもがな……


「さ、それじゃあお遊びはこれでおしまいだね」


 するがはそう言って肩を回した。


「お、いいのか? もう少し人類式の戦争を経験しておかなくても」


 安久斗が訊くと、


「そうしたいのは山々だけど、ほら、これ以上は軍が疲弊しちゃうしさ」


 とするがが答える。


「だったら、こっから先は俺に任せてくれないか? こっちは実践経験が足りねぇんだ。人類式の陸戦を少し経験しておきたいからな」


 安久斗がそう言うと、するがが「いいけど、あまり長引かせないように頼むよ」と返した。


 安久斗は「ありがとよ」と返すと、


「じゃ、諸々片付けてくるさ。10日で終わらせてやるよ」


 そう大口を叩いた。


 靜と濱竹が企てるもうひとつの計画。


 それは、共通の宿敵を滅ぼすことなのだ。

この話の主な戦闘


“遠州灘制海権奪還戦”

 神紀5000年冬至前80日朝

(関東統一連邦第一艦隊VS濱竹・中京・関西連合艦隊)

 →日渡国への艦砲射撃を行い、上陸しようとしていた関東統一連邦に対し、濱竹・中京・関西の3勢力が連合艦隊を形成して攻撃を仕掛けた。その43隻、うち巨大戦艦4隻という圧倒的な物量を前にして、関東統一連邦は撤退を余儀なくなれた。濱竹は、これを以て本来所有していなければならない遠州灘の制海権を関東統一連邦(特に南四連邦)から取り返すことに成功した。

 →まだ世界大戦を誘発したくない南四連邦にとって、中京や関西といった西側勢力が動いたという状況は好ましくなく、この敗戦で井谷戦争から完全に身を引くことを宣言する。そして猪頭半島の開発へと注力していくことになる。


ーーーーーーーーーーー


井谷戦争

第4章

 219『届かない文』

 220『挑発行為の果てに』

 221『同盟国として』

 222『強制参戦命令』

 223『進路を妨げる者』

 224『救いの船』

これにて完結。

次回からついに最終章。

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― 新着の感想 ―
おお、そういう事だったのか!流石に考え無しではなかったか、どうやら私は祖神種の靜を見くびっていたようです……。ただ元の計画でどうやって関東を追い払うのかは私にはあんまり分からないですが。日渡が危うく戦…
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