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席を変わってもらえませんか

夏のホラー2020用

「席を譲ってもらえませんか」


 学校からの帰宅中、電車に揺られてスマートフォンでゲームをしていると、浮浪者のような姿の男性が声をかけてきた。駅の中で、私の行方を塞ぎ、顔をじっとみては「見つけた見つけた」と嬉しそうにニタニタと笑っていた男性だ。

 噂には聞いていた。駅の中で、うろうろしながら、誰かを探している浮浪者がいると。人の顔をじっと見つめて、違うとか見つけたとか呟いて電車の中にまでついてきては、席を譲るように声をかけるのだと。この時、席を譲ってはいけない、譲ると寿命が縮むのだという都市伝説じみた話までがセットだ。

 空いている席もちらほらあるし、別の席が空いていますよと一蹴しようかと考える。

 みすぼらしい姿の男性だった。髪も髭も伸び放題で、電車の中でも異彩を放っている。一見年寄りかとも思ったが、近くで見ると意外とそうでもないのか、三十か四十くらいなのかもしれない。顔はやつれており、目がぎらぎらとしていた。変に絡まれても厄介だし、都市伝説など信じてはいない。いいですよと目を合わせないように席を立ち、私は別の車両に移動することとした。

 すれ違いさま、男性は小さい声で「ありがとう、ごめんなさい、ごめんさい」とぶつぶつと呟いているのが聞こえた。

 世の中にはいろいろな人がいるものだ。学校で友達と話すネタくらいにはなるかと思う。そこで笑い飛ばして終わり。その程度の出来事だ。


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