はじまり
私は虚無であった。
物心がついた頃には他人の心を覗き見ることができた。
「この子可愛い。」
「私あの子のこと嫌い。」
「こいつバカだな。」
他人の心を覗き見るなんて、簡単だった。みんなが何を考えて、誰にどんな感情を抱いて、私のことをどう思っているのかも。
だから私は人との距離の取り方が上手だった。
自分のことをよく思っている人とだけ仲良くして悪く思ってる人とは関わらない。簡単だ。
それに私は運良く容姿も完璧だった。
日本人離れした鼻の高さ、小さな顔、綺麗な二重の目、小さめの口。身長も高すぎず低すぎない程度。
男子で私に興味を持たない子はいなかった。
ただ、他人の心が読めても、愛を感じることは出来なかった。恋人ができても、それは恋人というより、所有物と表現する方が正しかった。
よくセックスは愛情表現だという人がいるが、あれはただの性欲処理に過ぎない。恋人としようが他の男としようが快感の得かたはソレ次第であった。
あの頃の私は砂漠を彷徨いオアシスを求める旅人であった。この何にもない、殺伐とした、乾ききった砂漠に飲み込まれそうで怖かった。
人生とはうまくできているもので、オアシスは突然現れた。
高校3年の時だった。