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甘くない異世界 -お約束無しはきついです-  作者: 大泉正則
第四章 クランハウスにようこそ
32/39

4-6 経過報告

作者名が若干変わっていますが、中の人は同じなので気にしないでください。


あと、作品のタブになにかが増えてますが、

一応付けた程度なので、そっちも気にしちゃダメです…。

 今日は久しぶりに王都まででてきていた。


 お供はマイルズとアルの二人だけで、ほかのメンバーはいつものように魔物討伐に出ている。

 メンバーを入れ替えながら複数の班に分かれて討伐するようになっていることもあり、私が少しくらい抜けても問題はない。

 ただし、雇用している非戦闘員の作業員にもしものことがあってはいけないので、1週間ほどまとめて休みを与えてある。



 今回、王都まで出てきた理由のひとつは、村開拓の経過報告をするためだ。


 仮の拠点と二本の道が完成したことで、今後私たちの動き方が大きく変わる。

 いままで事あるごとに森の外まで出て休日を過ごしていたのが、仮設の拠点に留まることが増える。

 また、これからの作業は拠点が中心になるので、土木と建築の作業は移動距離が短くなり護衛はしやすくなる。

 作業の内容も少し変わるので、作業員の再配分も必要となるだろう。

 転生者たちや騎士見習いたちは魔法の訓練も兼ねて土木作業は出来るだろうが、いきなり小屋の建設を手伝わせるのは難しい。

 石材や木材を運んだり重いものを持ち上げたりすることはできるだろうが、大工仕事というのはそれなりの経験が必要な職人の仕事なのだ。


 加えて、作業とは別に行っていた魔物討伐にも変化が出る。

 仮設拠点からルルイス村とマドゥの街の両方へ移動が可能になったことから、移動時間の短縮が可能になったのだ。

 そして、移動時間の短縮が大きく影響するのは魔物討伐班ではなく、輸送班。

 いままでより輸送に掛かる時間が短くなることにより人員を少し削減してもよくなった。

 その分、拠点に置く護衛の数が必要となっているが、役目が違えばそこに要求される能力も変わる。

 輸送班では単独で魔物と戦う可能性が高いためひとりひとりにそれなりの戦闘力が求められたが、拠点防衛では一人で魔物と戦えない見習いのものでも集団として防衛ができればいいので、魔法がまだ思うように使えない見習いでも人数さえいれば護衛となるのだ。

 ある程度は護衛戦力を借りるという意味もあったが、素質のあるクリストス教の騎士見習いとイスラーム教の戦士見習いを参加させているのは多くの者に魔法を習得させるという目的もある。

 中級魔法程度を安定して使えるようになればその後は私の指導がなくても個人個人の修練である程度能力を伸ばすことが可能となるため、十分に中級魔法をマスターした人員の一部は定期的に次の見習いと交代させている。

 十分な戦闘力のある人間と本当の見習いの比率も大きく変わるため、その入れ替えの相談もまた兼ねていた。




 そして、王都まで出てきたもうひとつの理由は、魔術師ギルド排除の途中経過を聞くためでもあった。


 まだ魔術師ギルド本体を排除する段階までは達していなかったが、周囲の排除を完了してから着手するようにと元から伝えてあったので仕方がない。


 ただ、悪質な奴隷商の排除は順調に進んでいた。

 中小規模の奴隷商は、魔術師ギルドと関わりのあるものたちは芋づる式にほとんど炙りだすことができ、地方都市の奴隷商人まで違法なものたちは根こそぎ排除が進んだそうだ。

 大規模奴隷商人も特に悪質な一人を生贄として徹底的に叩き潰したおかげで、大手で3人ほどが積極的に協力してくれるようになり、それ以外の奴隷商人も転生者の取引から手を引くようになったそうだ。

 私のもとに送られてくる転生者はその殆どが奴隷上がりでありその者たちからよく話を聞いていたが、教会は積極的に転生者の保護を進めてくれたことがよくわかっていた。

 一部ではそこからさらに一歩踏み込んで奴隷全体の扱いを向上させる法律にまで発展させようとしているようだが、私も流石にそこまで王国に浸透している制度に踏み込んでいこうとまでは思っていない。

 私にはまだなんでも変えるほどの力はなく、手の届く範囲で少しだけ変化があっただけで満足する程度の人間だったから。


 また、魔術師ギルドとの関わりのある貴族達の炙り出しも順調のようであった。

 もちろん貴族たちも魔術師ギルドや奴隷商人から賄賂をもらって優遇していることがバレれば問題となるので慎重となっていたが、その賄賂が金品ではなく奴隷となると足がつきやすくなるのだ。

 汎用性のある貨幣や特徴のない宝石などなら追跡は難しいが、特徴のある美術品や武具などになると出処を追いやすくなり、さらに奴隷となると転売したり逃亡したりすればその口からどのような経路で賄賂として渡されたかが特定しやすくなっていく。

 逃亡させないように厳格に管理し不要になった奴隷を殺処分することができるなら情報の流出をぐっと抑えることが出来るが、奴隷というものは死んでしまえば価値がなくなるものであることから、売却の誘惑に抗えない貴族たちが多く出てくる。

 そして貴族たちには派閥があり賄賂の流れもある程度あることから、厳密に奴隷を管理している貴族もその周囲の不注意者から関わりが判明していく。

 財力も権力もあり慎重で狡猾な大貴族であっても、派閥があり賄賂の流れがあればどれだけ気を付けていてもその関係性が見えてくる。


 今回出てきた貴族の中でもっとも高い地位についていたものは財務大臣だった。


 それほどの要職についているものが外国と関わりがある組織とつながりがあるとなれば大問題であるが、そこまでの地位まで上り詰めるだけあって本人はとても慎重で魔術師ギルドと関係があるという証拠は全く出てこなかった。

 魔術師ギルドとの関係も直接本人から出たのではなくその派閥の貴族からでてきた限りなく黒に近いグレーという程度の関係性だったが、我々の目的は法的に正義を明らかにすることではなく問題のある貴族をどんな手を使っても排除することであるので問題はない。

 結局のところの失脚させた容疑は魔術師ギルドや他国との関係性ではなく、部下の横領からの任命責任から大臣の職を辞任させ、さらに手足となる子飼いの貴族たちを潰すことによって動きを封じただけだ。

 まだそれなりの財力は持っているが、権力中枢から離しさえすればそのうち弱体化して根本的に排除する隙も見えてくるだろう。

 まず大事なのは本番である魔術師ギルドの排除に移行した際に妨害できる立場にいるものたちを権力から遠ざけること。

 ただ、外部の団体からの賄賂まで手を広げて権力を求める者たちは一度失脚したくらいでは諦めない貪欲さを持っているので、その先の本格的排除まで行えるなら行ったほうが無難なだけである。


「ふむ、お互いに順調なようですね。」

 今回の経過報告にはプレイアデス枢機卿とマイム師に御足労願っている。

 お互いの立場があるので高級ホテルの一室にお忍びで来てもらっているが、もちろんそれなりの数の護衛が付き従っている。

 それぞれの執務室に個別に訪問するということも考えたが、二つの組織の間の情報交換も同時に促すためにこうして顔を合わせてそれぞれの報告を聞く形式にした。

 前世ではこの程度の歩み寄りも不可能なほどの溝があったことを考えれば良好な関係と言えるが、それでもきちんとした場を定期的に設けないと不安になるくらいの溝はこの異世界でも存在する。

「二本の道と仮設の拠点の完成でまた動きが変わるでしょうが、これからもよろしくお願いします。」

「やっとというところですが、もっと人員を投入しても良かったのでは?」

「いえ、自分たちで護衛できる規模程度がちょうどいいのですよ。

 あまり大規模にやりすぎると末端まで目が行き届かなくなりますし、私たちの開拓を快く思わない連中にも目をつけられるようになりますからね。

 それにいまでも十分な資金と人員を手配してもらっているので…。

 それよりも、今大事なのは魔術師ギルドの排除ですよ。」

「なかなか魔術師ギルド本体のほうまでたどり着かないのがもどかしいですがね。

 ただ、これほど関係している奴隷商人と貴族たちが芋づる式に炙り出せたのには驚きです。

 特に貴族の方は皆慎重ですからね。」

「まぁ、この手法は意図して探し出したのではなく、ズルト近くの拠点を襲撃した際にたまたま出てきただけのものですからね。

 財務大臣なんて大物まで出てきたのは驚きですが、よくもここまでと思うほど広範囲に手を伸ばしてたものですよね。

 これが王族まで及ばなかったことが不幸中の幸いです。」

「この世界では王族に他国が手を貸すことも王族が他国に助力を請う事も危険ですからな。」


 この異世界の奇妙なルールとして、その国の首都と定めた都市に他国が攻め込んではいけないというのがある。

 首都まで攻め込むと神罰が下って軍隊が消滅させられるというのだが、この適用範囲が思ったより広くて曖昧らしい。

 そして過去に他国の兵士を借りてクーデターを起こそうとした継承順位の低い王子が神罰を受けたことがあるらしく、王族が他国の兵士を借りることが危険だとされている。

 首都が絶対他国の侵略を受けないがゆえに王族のほぼ全員が首都に居を構えており、そこに兵士を引き込むことが危険なだけだろうと言われているらしいが、そこの判断は神が独断で決めるらしいので思い込みで決めるべきではない。

 継承順位の低い王族が簒奪することも他国から資金援助を受けることも可能だとは思うが、最終的な手段を封じられている状態で危険な取引に手を出すべきではないという判断なのだろう。

 どうあっても他国に攻め滅ぼされて殺されることがないとわかっている王族は革新よりも安定を好むようになるらしく、この世界の他の国でも専制君主制が維持されている国が多いそうだ。


「残念ながら、我がイスラーム教は過激派たちのこともあって貴族たちから警戒されておって、あまりそちらの調査に協力できなかったのが申し訳ないです。」

「いえ、その分イスラーム教の方々には村の開拓のための資金を余計に出してもらっていますからね。」

「いえいえ、村の開拓と魔術師ギルドの排除は別のこと。

 サトシ様の村の開拓が順調に進むことも大事なことですが、魔術師ギルドを排除し他国のスパイをこの国から追い出すことも神が望まれたことです。

 それなのに同じイスラームを信ずるものが神の望まれたことに協力しないばかりか、その一部から賄賂を受け取って手を貸しているなどとは…」


 実は奴隷商人の調査の中から、その一部がイスラーム教過激派に奴隷を引き渡していたりさらに一歩踏み込んで過激派自体が奴隷商人を営んで転生者を取引していることが分かっている。

 なんといっても、前世で奴隷制を復活させて一部の少数民族を奴隷として売買していた連中が過激派にいたのだ。

 その一部が転生してきて、この異世界で奴隷商人をやっていても何ら不思議ではない。

「本当に腹立たしいことですが、転生者には過激派も多く、その中には指導力があるものも含まれていて、それなりに勢力をまとめておるのですよ…」

 前世ではキリスト教とは違いイスラム教支配地域は紛争が多く、その中で比較的地位の高いものも犠牲になることがある。

 テロの犠牲になった穏健派の人間もそれなりに居るようだが、ここ最近は戦いに敗れた過激派の転生者が多くなっているらしい。

 そしてその中にはある程度地位の高い過激派幹部も含まれているらしいのだ。

 幸いにしてカリスマとまで言われる一人で組織を立ち上げるほどの人物は転生していないようだが、ある程度人を指揮した経験のあるくらいの転生者はいるらしい。

 そうした転生者がある程度とりまとめを行うので、クリストス教徒は違いイスラーム教では転生者だけでまとまった派閥というものが存在するらしい。

 まぁ、本当に全てを分かって過激派を率いているような人物は、その活動がけして神のためなどではないことを理解しているがゆえに、宗教の犠牲者としてカウントされないのかもしれないが…。



「そういえば、奴隷商人から転生者を買い取っている貴族を調査している過程で分かったのですが、ある程度の技術を持っている転生者を囲い込んでおいてその技術を独占して儲けている貴族がいるようですね。」

「それは王都に出回っている物品を見てそうだろうなと予想はしていました。

 技術的な下地がないがゆえに作れないものも多いですが、どう見ても転生者が前世の技術を持ち込んだだろうなと思われるものが多く出回っていますからね。」

 科学技術の水準が違うゆえになんでも作れるというわけではなかったが、前世での記憶さえあれば再現可能なものはこの異世界でも多く出回っていた。

 庶民の側から目に付くのは食料品などが多く、マヨネーズやドレッシングなどの調味料、フライドチキンやハンバーガー、カレーもどきなどの加工食品が特に目に付く。

 また道具類も前世でのアイデアさえ持ち込めば作れるものが多く存在していたが、どれも値段が高かった。

 そして前世での知識があれば安く生産できるであろう香辛料や塩なども軒並み高く値段が抑えられ、その製法や産地なども一切庶民には情報が伝わっていなかった。

 その価格操作や流通量抑制、情報操作などを見ていれば、明らかにそれを独占して儲けようとしている富裕層の意図が透けて見えてくる。


 そう、この異世界は特権階級が支配している封建社会であるがゆえに独占禁止法などというものが存在していないようだった。


 ほかの国ではどうかはわからないが少なくともアブラハム王国は未だに富が独占されており、他国からの輸入品の値段を鑑みるに他の国も似たような状況であろうと予測できる。

 そのようにいろいろと情報を出しみ惜しみして隠しているが故に、転生者がもたらす技術が広まらずに未だにこのように技術水準が低いのだろう。

 前世から持ち込まれた技術が銃火器や戦争の技術に波及していないことが不幸中の幸いだ。



「私の目的は虐げられている転生者の救済なので、その囲われている者の状態にもよるでしょうね。

 情報の拡散を防ぐためにある程度自由のない生活を強いられているでしょうが、その生活が過酷なのか安定しているかが問題です。

 その転生者がその生活で満足しているなら無理に連れ出す必要はありませんし、その技術で富を得ている貴族がいるなら無理に混ぜっ返して反感を買う必要もないでしょう。

 ただ、その転生者が虐待されていたり自由を求めるなら、助け出すべきだと思います。

 独占している技術についても転生者の安全の保証になるなら、秘匿したままでも構いませんしね。」


 私の目的は技術を持つ転生者を集めて金儲けをしようというのではないので、そこで無理をする必要はなかった。

 科学技術的に未発達なこの異世界は、同時に社会的な仕組みも法律も未発達である。

 故に自由や平等を求めても、それを権力でいくらでも握りつぶせる状態でしかない。

 自分たちが求める権利を手にするためには、慎重に行動しそれを守るための力を持たなければいけないのだから。



「さて、魔術師ギルドと関係のある奴隷商人と貴族たちの排除も順調のようですし、魔術師ギルド本体に着手できるまであと少しでしょうね。

 引き続き慎重に進めてください。

 私の方の村の開拓ももう少しで手がかからなくなるでしょうから、そちらに協力することもできるようになるでしょう。

 もうしばらくの間は任せっきりになりますが、よろしくお願いします。」

「お任せ下さい、サトシ様。

 主の御心に応えるため、我ら一同全力で魔術師ギルドの排除に邁進してまいります。」

「我らイスラーム教もクリストス教と力を合わせ、必ずや達成してみせます。

 サトシ様にも一日も早く素晴らしい村を拓けるよう、援助を続けさせていただきます。」



 私は二人の宗教指導者が手を携えて同じ目標に向かっているのを確認すると、会談場所となった高級ホテルの一室を後にした…。


今回の内容、順調に進んでますの一言で終わりそうな予感もします。

ま、投稿ペースの方はこ難しく考えすぎて順調ではないんですがねw

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