4-3 用地選定
「こうして改めて地図を見ると難しいものですね…」
私たちは場所を改めプレイアデス枢機卿の執務室で村を作る場所を検討していた。
なぜ場所を変えたかといえば、地図のためだ。
現代の日本と違って詳細な地図というものは簡単に手に入らない。
測量技術が拙いということや複写が難しいなどの理由もあるが、一番はそれが戦争の際に重要な国家機密として扱われるからだ。
たとえ小学生の書いた壁新聞のような地図であってもそこに目印となる地形と拠点の位置が書いてあれば戦略的な価値が出るため、簡単に店で売っていないし不用意に外国に持ち出そうとすれば国家反逆罪となる。
ゆえに正確な地図というものは多くの情報を自ら収集できる組織にしかほぼないし、機密性の高い場所にしか置いていない。
そして、枢機卿の執務室はその条件を満たす場所であり、さすがにクリストス教会は良い地図を持っていた。
「こうして見るとアブラハム王国は狭いですね。」
「戦争で負け続けで他国に領土を奪われておりますからね。首都を攻めてはいけないというこの世界のルールがなければとっくに滅んでいたでしょう。」
クリストス教の作った地図はきちんと測量された正確な地図というわけではなかったが、主要な街の方角は合っているようだし、アブラハム王国以外の国も大雑把に大きさがわかるような大陸全体を記したものも存在した。
ま、大陸全体の地図はほとんどが暗黒領域で、ほぼその首都くらいしか描かれてはいなかったが。
この異世界は、ほかの世界の神々が自分の世界から転生させるために共同管理している状態にある。
ゆえにたとえ弱小の神でも転生させる先がなくなるのは困るため、神に関連する国の首都に攻め込んではいけないというルールが全ての人間たちに強制されているらしい。
ただし首都以外の土地についてはその縛りはなく、度々戦争が起こって負ければその国の有用な土地は奪われていく。
それでもアブラハム王国がそれなりに残っているのは、首都である王都を無理やり広げてその周辺の土地もまとめて首都の一部だと主張していることと、魔物が多発する未開発の地域が多いためだ。
アブラハム王国は巨大に膨れ上がった王都に引きこもっている人々と、何度土地を奪われても新たに魔物たちの領域を切り開いてきた人々で成り立っているのだ。
「当然魔物が出るために手付かずになっている場所を切り開くことになるでしょうが、それでも誰かが所有している領地ということになるようですね。」
「人が住んでいない手つかずの場所を開墾するにしても、誰が責任者として行いその費用を誰がどの割合でだし、その土地からの収入をどのくらいの割合で税として収めるかを事前に決めた後に許可をもらう必要があります。
そこを曖昧にしたまま開拓をはじめると、せっかく開墾した土地をタダ同然で奪われたり領主に搾取されるだけになったりしますからね。」
「魔女たちとの関係からルルイス村から程近い場所と考えていますが、農業ができるように平坦で川が近くにあるという条件を加えるとかなり瘴気の濃い深い森しかないようですね。
ルルイス村のあるビーデル男爵領か、その北のハミルトン子爵領か…」
「我らクリストス教としては、ビーデル男爵とはあまり繋がりがありませんがハミルトン子爵にはその血縁に何名か信者がいたはずです。
そのものたちを通じて開拓の条件を有利に進めることも可能ではないかと…」
「そうですね、伝手があるならそれに越したことはありませんが、まずは現地の調査をしてからですね。
地図だけで検討するのではなくしっかりと自分の目で見てから場所を決めないと意外な問題点があるかもしれませんし、ビーデル男爵のほうもルルイスのほうで伝手があるかもしれません。
まぁ、どちらにせよ隣接する領地の情報も必要なので、この二人の貴族の人物像や経済状況、領地自体の状況などを調べておいていただけるでしょうか?」
「わかりました。どの程度我々から手を回せるかも含めて、早急に調査してお伝えします。」
「私たちの方も、現地調査の経過は逐次報告させようと思います。また、それらの情報は教皇やイスラーム教とも共有するようにお願いしますね。」
プレイアデス枢機卿は教皇との情報共有には若干嫌そうな顔をしたが、きちんと念を押しておいたので実行はしてくれるだろう。
「さて、このあたりから始めようか。」
私は一度ルルイス村の治療院へ戻り、ほぼフルメンバーを引き連れて現地調査に来ていた。
置いてきたのはイツキとマリアンヌだけだ。
もちろん目的は調査だけなのでなるべく魔物は回避する予定ではあるが、今回は危険かどうかの調査ではなく危険なのは分かっているがどのくらい危険なのかの調査を含んでいるからである。
土地の高低、土壌の状態、水源とする川の水質、森に生えている植物の種類と植生、そして森に出現する魔物の種類と数など、村を開拓しようと思うならば調べなければいけないことはいくらでもある。
「で、村を作るって言っても、何を重視するんだ?」
「実はそこで少し迷いがあるんだが、少なくとも自給自足できる程度の農業はやれるようにと考えてる。」
「魔物を狩ってその肉を食ってればいいんじゃないのか?」
「肉だけで食料を賄おうとすると栄養が偏るし、もしもの時に食糧難になるぞ?」
ステファンの発想はステーキばかり食べてればいいというようないかにもアメリカ人なものだが、わたし的にはきちんと栄養バランスのとれた食事がしたい。
「でもこの世界なら動物と違って魔物はいくら狩りまくっても減らないんじゃないですか?」
「瘴気があるうちはいくらでも魔物が湧いてきますね。逆を言えば、このように瘴気が濃い場所だといくら駆除しても魔物の危険性は減らないということですが。」
シモンズの疑問にアランがこの世界の常識としての魔物の生態を答える。
まだあまり魔物との戦いに慣れていないシモンズとポールはぎょっとして弓を強く握り締め周囲を警戒する。
「そんなに警戒しなくても、いきなり魔物が目の前に湧くなんてことは滅多にありませんよ。
瘴気とマナから魔物が生まれるときは、意思あるものからは見つからない離れた位置に生じると言われています。
本当に極稀に目の前で魔物が発生するのを目撃したという話が出ますが、まず核となる部分が生じるので発生途中でその核を破壊すると魔物になる前に消滅させることができたという話があります。
人に見つかる場所に発生しないのはその核が無防備である瞬間を狙わせないためなんでしょうね。」
狩人としてもかなりの腕を持つブライアンは、効率よく魔物を狩るための知識が豊富だ。
その中でも伝聞でしか魔物の発生の話を聞いたことがないのだとすれば、そう滅多にお目にかかることではないのだろう。
小さな魔物の発生ですら私はまだ見たことがないのだし。
「まぁ、肉ばかり食べていられないといっても魔物の肉と素材はひとつの収入の軸になるだろうから、農業が軌道に乗っても狩り続ける事になるだろうな。
ただ、農業従事者が魔物に襲われないようにする対策は必要だし、本当に魔物と遭遇したくないものは安全な都市や村に住まわせるべきだろう。」
新規に村を開拓できる場所となるとどうしても瘴気の濃い危険地域となるので、魔物狩りを中心としないものたちにもある程度の危険は覚悟してもらわないと生活できない。
「瘴気の濃淡よりも農業しやすいかどうかを重視することになるだろうな。
現状の転生者たちの事情を鑑みるに、農業に詳しい人間は少ないだろうしな。
まぁ、シモンズはその数少ない例外に入るだろう。」
「わたしなんかはただの牛飼いなので大したお役には立てませんよ。この世界に来てから農場で働かされてたといっても単純な肉体労働ばかりですしね。」
「いや、少なくとも一次産業に従事していたというだけでも違うさ。
前の世界では魚は切り身で泳いでると思っている奴がいたり土の上に生えたものなんて汚くて食べれないなんて平気で言う奴がいたりしたからな。
シモンズにとって取るに足りない当たり前のことでも、実は重要なことなんてのもたくさんあるはずだから、大いに頼りにしてるよ。」
「いやぁ、あまり期待されると困るんですが…」
戸惑うシモンズには悪いが、実際の農作業では私も詳しくはないので頼るしかないだろう。
「さて、そろそろ候補地のひとつとなっていた辺りだが、思ったより高低差があるな。」
ビーデル男爵領側の候補地と思しき場所にたどり着いたが土地の起伏が激しく、農地として使うならまずは平らにならすという段階で苦労しそうだった。
はじめの候補地の選定に使ったクリストス教所有の地図はこの世界としてはかなり精巧なものではあったが、前世の日本で手に入った地図にようにその高低差までひと目でわかるように作られたものではない。
また、おそらく今いる場所がビーデル男爵領だと推定しているが、明確な目印があるわけではないので確定はしていない。
川や山脈などの明確な目印がない限り、土地の境界などは曖昧なことが多い。
特にその境界が森の中であるときは、それは曖昧な地図の上で決めただけだったり森の外から眺めてだいたいこの辺りにしようというだけで、明確な目印等があるわけではないのが普通だ。
正確な地図がある日本においてもその境界が昔曖昧な話し合いで決めただけで正確には誰も知らないなどはよくある話で、いざ確定しようとなると高い金を出して改めて測量し直さなければいけなくなる。
「とりあえず、アル達は川を確認しに行ってくれるか?
西の方にあるはずだ。
マイルズたちはこの周辺の瘴気濃度の測定を頼む。
魔物が出たときには無理に戦わずに撤退するようにな。」
今回、イスラーム教からも数人の助っ人が既に派遣されていて、身軽な物を中心に四名ほどアルのサポートとして連れてきていた。
また教皇派から3人の騎士が派遣されており、マイルズの下につけている。
瘴気の濃度を測る魔道具はとても貴重なものであり、教皇が管理を行っていたものを今回その護衛の騎士と一緒に借り受けているのだ。
「残った人間はまず土壌の確認だな。」
「任せておいてくれ、塹壕掘りは海兵隊の十八番だ。」
「まぁ、塹壕掘るんじゃないんですけどね。」
「それにだいぶ堅そうですよ?」
「いいから、掘るんだよ!」
ジョルジュとポールの茶々にもめげずにステファンがスコップを地面に突き立てるが、見た目通りに地面は堅くスコップの切っ先はあまり入っていない。
意地になって体重をかけているが、表面の土の層は薄くその下は岩ばかりのようだ。
「あまり無理をするとスコップの方が壊れるからな。どれ、一発魔法で掘り返してみるか。」
私はステファンから少し離れた位置に狙いをつけると一気に魔力を放った。
「ウォール!」
硬い土がごっそりと削られ、さらに向こう側に一つの壁を作り出す。
そう、この魔法は壁を作るために開発したものだが、そこに存在する土を使って作り出すために穴掘りに使うこともできる。
土を移動させるためには一度作った壁をもう一度崩す手間が入るが、とりあえず穴を掘るだけなら持っていく土を深くイメージするだけで一発だ。
「掛け声的に明らかに用途が違う魔法だが、この堅い土に一発でこんだけ深い穴を開けるってのは大したもんだ。鍛え抜かれた海兵隊も真っ青だぜ。」
「しかも同時に壁も作って時間が経っても壊れないから、塹壕を作るならさらに二倍お得さ。もっとも、塹壕を作るくらい大量に掘ろうと思うと魔力が足りなくなるけどな。」
「まぁ、ジョルジュが言ったとおり塹壕掘るんじゃねぇからいいだろ、はっはっはっ。」
わたしは豪快に笑うステファンに苦笑を返しながら、掘り下げた穴の中を見ていた。
「これは硬い土というより岩ですね。しかも結構深いところまである。」
シモンズが実際に穴に降りてその質を見ていた。
「岩でも砕けば土になるんじゃないのか? 実際にアイルランドとかじゃ岩を砕いて土を作ってることもあるんだろ?」
「それは石灰岩でできた特殊な島の話ですよ。
普通は岩を砕いて土にして農業をしたりはしません。
あなたのように無駄に力が余ってる人でも岩を砕いてなんてやってたらあっという間に根を上げます。」
「さすがにそこまで深く岩になっているときついな。
よくこれだけ木が生えてるもんだ。
どれ、もう少し周辺を掘り返してみるか。」
それからいくつかの穴を場所を変えて掘ってみたが、あまり良い結果は得られなかった。
「川は少し西に蛇行しているようで、想定していたよりも遠いようですね。少し見つけるのに時間がかかってしまいました。」
川を探しに行ったアル達も戻ってきたが、予定した位置に川はなかったようで少し時間がかかっていた。
まぁ、何も手をつけられていない川はその流れを変えるものであり、平地に近い場所を流れる川は蛇行して時折氾濫しながらその位置を変えるものだ。
「川が以前に流れていた場所であれば農業に適した土があるかもしれないが、そうなると今度は川の氾濫に注意する必要が出てくるから、あまり川に近い場所も危険だしな。」
「瘴気の濃度の方は想定していたよりも低かったんですがね。これだけ人里から離れていてこの瘴気の濃度なら悪くはないんですが…」
マイルズの方も測定を終えたようで、その数値は良かったらしい。
「とりあえずはもうひとつの候補地に行って確認してみよう。」
このビーデル男爵領の候補地はルルイス村にも程近く、ビーデル男爵にもルルイス個人で繋がりがあるということなのでこちらが第一候補だったが、農業を中心とするなら苦しいと言わざるを得ない。
「さて、ここいらがもうひとつの候補地…の辺りだと思う。」
ハミルトン子爵領にある候補地も同様に目印などはない。
早速、先ほどのビーデル領と同じ調査を開始する。
「土は…そうですね、肥沃とは言えませんが先程と比べればまだ耕すことができるレベルでしょう。きちんと作物が育つようにするためにはそれなりの肥料を加えて時間をかけなければいけないでしょうがね。」
「川はほぼ予想通りの位置にありました。少し東に寄っていましたが、想定の範囲内でしょう。」
土と水に関していえば、こちらのほうがだいぶいいようだった。
「瘴気に関しては残念ながらだいぶ濃いようですね。これだけ濃いと、それなりの魔物が近傍に発生するでしょう。」
「それだけいい土地には瘴気がたまりやすいということなのかもしれないな。とりあえず、今見た二箇所の候補地なら土と水をとるか、安全をとるかということになるか?」
「こっちでいいんじゃねぇか? 魔物の討伐をほかに頼むならともかく、自分たちで討伐してその肉や素材を売り飛ばすんだから、向こうからわざわざこっちに貢ぎに来てくれるビッチのようなもんだろ。」
「その魔物の強さにも依るだろう。瘴気が濃ければ、それだけ強い魔物が出てくるということだ。」
「早速、魔物が来たようですよ!」
周囲を警戒していたダガーが魔物の気配を捉えた。
ここに来るまでにも多少の魔物に遭遇したが、なるべく接敵しないように回避しながらやって来た。
多少回避しきれずに戦闘になった魔物もいるが、大物はそれだけ気配が強いので余裕を持って回避していた。
どうせあまり荷物を増やすわけにもいかないので小物を狩っても価値の高い部分だけを取ってほかを放置してきたし、大物になるとそれだけ重量も重くなるからだ。
「こりゃ、かなりの大物だな…」
それは既に私の索敵範囲内にも入っているが以前なら迷わず逃亡を選んだであろう強烈な存在感で、魔法を覚える前ならこれがいきなり目の前に現れると思うとぞっとする。
そして、その魔物は私が索敵の魔法を覚えてから初めて遭遇する手触りであるのは間違いなかったが、どこかで以前に遭遇したことがあるような気がするものだった。
「この気配はもしや……」
「見えました! これは…ブラックベアです!!」
遠くを見渡すために木に登っていたダガーが頭上の枝からその姿を確認した。
他の転生者たちは咄嗟にはブラックベアの脅威度がわからず、クリストス教とイスラーム教から派遣されている者たちにもすぐにわかるものとわからないものが混じっている。
「どうしますか?」
マイルズは当然私から以前の話を聞いていてブラックベアの脅威度がわかっている。
「迎撃する! ヤツは逃げても最後の一人を殺すまでしつこく追ってくるいやらしい魔物だ。」
私の迎撃するの一言で皆が一斉に戦闘態勢を取る。
「まずはアランとマイルズでやつの突進を止めてくれ。
ステファンも前で抑えてもらうが、まずはその動きを見るまでは下がり気味に。
ヤツは弱いところから襲うとするから、他の者たちも慌てて攻撃しようとせずにまずは前衛がその動きを抑えるまで待ってくれ。
私たちの戦い方に慣れていない者たちは私の後ろで無理に手を出そうとしないでくれ。
突進を止めたらダガーは周囲に他の魔物がいないかの警戒を。」
私は素早く指示を出しながら、周囲と体の中にある魔力を集めていつでも動かせるように構える。
いままでどうやれば倒せるかと散々頭の中でシミュレーションしてきたが、いざ遭遇すると緊張でのどが渇く。
ゴクリと唾を飲み込み、突っ込んでくる気配に合わせて魔法を放つ。
「「「シールド!」」」
アランとマイルズ、そして私が作り出したシールドが三枚重ねでブラックベアのがっしりと突進を受け止める。
「バインド!」
その勢いを止めたと見た瞬間、私はすかさず動きを拘束するための魔法に切り替えた。
この魔法は土だけでも相手を拘束して移動を阻害できるが、周囲に植物があればより強固に拘束できる。
私の魔法で動かされた木の根ががっしりとブラックベアの後ろ足を捕らえその場から移動できなくさせた。
前足も同時に拘束して攻撃力を落とす選択肢もあったが、私はあえて後ろ足だけに絞って魔法を使った。
ブラックベアの攻撃力も脅威ではあるが、今は拘束の解除よりも目の前の敵に集中させ、後衛への攻撃を防ぐほうが重要だ。
「よし、いいぞ!」
ステファンも加わってブラックベアの動きを完全に押さえ込んだところで後衛にゴーサインを出す。
ここで難しい攻撃方法や魔法などは必要ない。
動きの止まったブラックベアに矢を射掛けていくだけでいい。
私もコンポジットボウに持ち替えてひたすら矢を放ち、ブラックベアをハリネズミにしていく。
前の三人は攻撃を加えるよりもブラックベアを抑えることに集中し、私の魔力も矢に乗せて攻撃力を上げることよりも拘束の魔法の方に注ぎ込む。
そして、ブラックベアの動きが止まるまで…いや、止まってからもしばらくはその手を止めず一方的に矢を射掛けた。
「よし、こんなものでいいだろう。」
ブラックベアは完全に動かなくなっていたが念のためにと長剣でトドメを刺すマイルズを見ながら、私は感慨にふけりながら息を吐いた。
思えば私はいつかブラックベアを倒すために強くなろうと思ったのだ。
ここで一つの目標を達成したと言えるが、私は仲間たちを守れるほど強くならなけれないけないのでここはまだまだ通過点と言える。
「こいつは高級素材の固まりみないなやつだから、慎重に解体してくれ。
大きすぎて全てはもって帰れないだろうがなるべく役に立つ部分は持って帰りたい。
特に皮は穴だらけだろうが私が鎧に使うからしっかりとな。」
「いつまでもその安物の革鎧を使っているから特に思い入れがあるのかと思っていましたよ。」
マイルズは長剣の血を拭いながら、解体作業に入ろうとするシモンズとポールに場所を譲る。
「この鎧は手に入れた当初は私にとっては高級品だったし特別な思い入れもあるが、ブラックベアの皮を手に入れたら取り替えようと決めていたのさ。ブラックベアにはこの鎧以上の思い入れがあるからな。」
「だが、熊の毛皮で鎧なんか作ったら、どっかの蛮族か野盗みたいな外見になるんじゃねぇか?」
「それもまた一興さ。」
私はにやりとステファンに獰猛な笑みを返しながら、その戦果に酔いしれていた…。
我々はその後、まだ臭みの残るブラックベアの肉を無理やり使って焼肉パーティーにし、持てるだけの素材を持って帰還した。
その後、もう三箇所ほどの候補地を別に調べたが、それ以上に良好な場所を見つけることはできなかった。
私はブラックベアを討伐したハミルトン子爵領の土地を開拓する場所と決めた。
ブラックベア、討伐!
まだちょっと早い気はしたけど、いつまでも引きずるような相手じゃないしね…。
まぁ、私は熊肉の実物は食べたことがないのでどのくらい臭いか知りませんが、
肉ってのは屠殺してからしっかり時間をかけて血抜きしないと臭いはず
ま、もって帰れずに捨てていくくらいなら臭くても食えって話ですけどねw




