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甘くない異世界 -お約束無しはきついです-  作者: 大泉正則
第四章 クランハウスにようこそ
27/39

4-1 ルール違反と神

 私たちは王都イェルサルムの教会に来ていた。


 脇には強ばった顔で岡持ちを持つマイルズと不思議そうな顔で私が持たせた箱を抱えるアル。


 王都の教会でいいのか?と思うかもしれないが、ここはクリストス教の教会ではあってもクリストス教本部ではない。

 イェルサルムほどの大都市になれば分院とも言うべき小さな教会がいくつかあっても不思議ではない。

 今回はことを大きくしないために王都の外れの方にある小さな教会を選び、立ち会う人間も厳選して()()()絞らせた。


「さて、マイルズ、前回と同じように祭壇の上に並べてしまってくれ。アルに持たせた箱の中身はまだ出さないようにな。」

「は、はい!」

 マイルズはもちろん、祭壇に並べるということの意味を理解している。


 今回用意した食べ物は、ミックスフライのタルタルソース添え、煮込みハンバーグのようなもの、カレーライスのようなもの。

 肉の種類がこの世界特有のものであったり、香辛料が思うように揃っていないのは仕方ないことだ。

 そして飲み物はアポルの炭酸飲料と、コーラを作ろうとしたがその手前までしか行かなかった炭酸飲料。


 これら前世での調理技術が使われた料理を簡単に入手できるのが、今回の供物提供を王都の教会で妥協したことの一つの理由だ。

 …本来の目的は神との会談のはずだが、供物の提供の方が目的っぽくなっているのは私のせいではないはずだ。


「この箱の中身はまだ秘密なのでしょうか?」

「デザートだからさっさと出してしまうとダメだというのもあるが、今回の目玉だから驚かせようと思ってね。もっとも、私の記憶を覗かれるとすぐわかってしまうんだが。」

「ならば、食事が終わるまでは見ないように注意しないとね。」

 少年神はいつものようにいつの間にか現れて、煮込みハンバーグにさっそく手を伸ばしていた。

 突然の降臨にアルが驚いてびくんと身をすくませ、マイルズは膝をついた体勢で祈りながら硬直する。


「今回は王都だから、前世の技術を使ったものをいろいろと用意してみた。まぁそれだけが目的で王都の教会にしたんじゃないが、せっかく手に入れやすいんだから活用しないとな。」

「なるほど、ただの出来たてのハンバーグかと思ったら、中にチーズを入れて独特のソースで煮込んでるんだねぇ。」

「あつあつの肉料理といっても多少手間をかけたものをと思ってね。

 この煮込むのに使っているデミグラスソースもだけど、製法を知らなければこのような形に加工しようとは思わないからな。

 このミックスフライとタルタルソースも油で揚げるという調理法とか卵をこの形に加工するというのが分かっていないと生まれないものだからね。

 まぁ、前世ではそれなりに普及してるから見たことはあると思うけど、できたてを食べるとなるとまた違うものさ。」

「そうだね、このフライの揚げたてのサクサク感は普通の供物じゃまず無理だね。それと、このカレーライスもなかなか美味しいね。」

「カレーの味にこだわる日本人としてはスパイスも米も思うようなものが手に入ってないように思うけどな。供物として出てきたりはしないのか?」

「匂いや香辛料がきついものは少し忌避されるんだよ。インドの辺りでは供えられてるかもだけど、あの辺りは別の宗教が多くてあまり顔を出せないしね。」

「そういう意味ではこのコーラもどきは香辛料+炭酸でお目にかからなかっただろうな。バカみたいにコーラを求めるアメリカ人のせいで作られたんだろうけど、いまいち味が違うような…」

 コーラのレシピは前世での最大の企業秘密の一つなので完全な再現ができなかったのは仕方ないが、炭酸飲料自体は王都ではそれなりの金を出せばすぐに手に入るので輸送の手間はない。

「カレーライスにはイマイチ合わないけど、ワインが添えられてるよりはマシと思わないとね。」

「まぁ、コーラはカレーと合わせるというより、デザートやお菓子と一緒にのほうがいいな。」

 カレーは普通の水を添えるのが一番だと思うが、王都ではしっかりとした浄水システムが作られているのか清潔な水が簡単に手に入る。


「ふぅ、さすが作りたての料理は美味しかったけど、このくらいじゃまだまだ満足しないよ? とっておきはデザートだったね?」

「これは炭酸以上に供物として万全の状態で捧げられることがないものさ。さぁ、アル、その箱をこっちに貸して。」

「は、は、はひ!」

 挙動が怪しくなっているアルがひっくり返さないうちに箱を受け取り、ひんやりと冷やした器を取り出した。

「こ、これはアイスクリームだね?」

「とりあえず基本のバニラアイスを用意したよ。香り付けに使ったのはバニールの葉というものだが、風味はほぼバニラアイスそのものになっている。これもすぐ溶けてしまうと別のものになってしまうから、供物としてしっかりとしたものは食べたことがないだろう?」

「溶けてしまえばただの甘ったるいミルクだからね。これを常温である祭壇に捧げる人はいないよ。」


 今回の目玉はアイスクリーム。

 材料的に問題があったのはバニラだけで、あとは製法と冷やすという部分が問題なだけ。

 前回開発した熱を奪う魔法もなんとか凍るところまでいけるか?という程度に上達はしていたが、今回はあらかじめ用意した水の中に氷の礫の魔法をぶち込むという方法で氷を作り出し、それを用いてアイスクリームを作った。

「なるほど、これがアイスクリームの味か。

 アイスは炭酸以上に供物には向かないからね。

 そして暑い時ほど皆が欲しがっているのを見るけど、もちろんそういう季節にはアイスはすぐ溶ける。

 当然、神への供物として供える人間なんかいないから食べられなかったしね。

 ふむふむ、なるほど、冷たくて甘い食べ物というのもいいねぇ。」

 少年神は夢中になってアイスをスプーンですくって口に運ぶ。

 もともと甘いものが好きな神様には満足頂いてるようだ。

「せっかくバニラアイスを作ったから、パフェっぽいものも作ってみたよ。シリアルやウェハーも作ったやつがいるようだしな。」

 シリアルとウェハーが手に入れば、あとはホイップクリームとジャムはどうとでもなる。

 ただ、イメージにある通りのパフェにするためには、その形のガラス容器が足りなかった。

 ガラス自体はこの異世界にも存在したが、まだまだ加工技術が足りないのか複雑な形のものは流通しておらず、市場にあるガラスも非常に高価で食器というより観賞用の美術品だった。

「そうだね、あの器に入れろとまでいうのは少し無理があるだろうね。でも、この形でも十分味を楽しめるよ。」

 お椀の形の陶器に盛り付けられたパフェもどきを少年神は美味しそうに食べる。

「うん、さすがサトシだ。僕の満足のいく取って置きを用意してくれるね。」

 パフェもどきを平らげ、満足そうに祭壇の上であぐらをかく少年神の前にいくつかのお菓子を出しながら、ハーブティーを入れる。

「さて、そろそろ難しい話をしようと思うから、私の記憶を見てくれるかな?

 ちなみに、今日のお茶はこの世界独特のハーブを使ったハーブティーだ。

 前世のハーブとは少し種類が違うが、こちらの世界のハーブの方が強いマナの中で育っているせいで香りも強い上に効能もはっきりしてる。

 なかなか良い味わいのハーブティーが出来てると思うぞ。」

「ふむふむ、なるほど…」

 少年神はマカロンを再現したと思われるお菓子を齧りながら、私の記憶を確認する。



「まず話をしなければいけないのはやはりズルトの街の近くにあった奴隷狩りの拠点の話だろうな。

 いろいろと問題があるけれど、やはり一番は転生者をあらかじめ知ることのできる仕組みだろう。

 あの仕組み、私が見たところでは人の手だけでは成り立たないと思うのだがどうだろう?」

「そうだね………僕が死んだ人間の体を修復して転生の説明をしている場所は、この世界ではなくあちらの世界に近いところにある異次元の中だからね。

 こちらの世界からのぞき見しようとするのはほぼ無理なはずだけど…。

 グドゥルフの神が関わってるなら可能か?

 そうとしか見えないけど、こんなに直接的に関わっていいのか…。」

 少年神は唸りながら首をかしげているが、ほかの世界の神が転生させようとしている人間のことをこっちの人間に教えるというのはあまりに直接的すぎる。

「そもそもこの世界はいくつかの世界から転生させるためにあるのだとしたら、そこに共通のルールはあるんだろう?

 もともと力がないから出来ることがほとんどないと言ってたが、力があればここまでこの世界に直接的に手を出していいのか?」

「うーん、もちろん共通のルールらしきものがあって元の世界から得られる力を使ってこの世界に場を整えていいことにはなっているけどね。

 グドゥルフの連中が詠唱を使って神が導いた魔法を使うのはその範疇に入るけど、これは完全にルールから逸脱してるね。

 直接この世界の人間に手を貸してはいけないことになってるはずなんだけど…」

「その共通のルールってやつの問題かもな。

 そもそも直接手を貸すなどのルール違反がないかを誰が監視し、誰がペナルティーを課すんだ?

 ペナルティーを受けるとしたら、どんなものを?」

「え? そ、それは他の世界の神々にそういうルールなんだと言われてて、違反するなと念を押されただけで……違反したらどうするとまでは言われていないような……」

 私たちの世界の神はまだ若く、そして力がないと言っていた。

 ユダヤ教こそその前に存在していたとはいえ、キリストが誕生してからまだ2000年ちょっと、ユダヤ教成立から数えても3000年と少ししか経っていないのだ。

 それに仏教やヒンズー教などのほかの宗教を信じる人間がまだ多くいる上に、元を同じくする宗教同士で争っている最中だ。

 完全に自分の世界の信仰を独占した上でもっと長い期間支配しているような神がいたとしたら、太刀打ちできるはずがない。

「ルール違反に対する監視やペナルティーが曖昧であるならば、その共通のルールを守れというのが口先だけやバレなければいいという習慣になっている可能性があるな。

 あなたがまだ若く力がないから侮って、絶対にルールを守らなければいけないと思わせたのだろう。」

「そ、そんな……いや、確かに他の神たちは僕のことを若造と馬鹿にしてたけど……ルールの話も上から目線で絶対守れと強調されてたけど……」

「新参者にルールを守れと口を酸っぱくしておきながら自分ではバレないようにルール違反をするなんていうのは、ちょっと汚い大人なら当たり前にしていることさ。

 拠点の状況と神のルールの監視と罰則が曖昧なことから見て、転生してくるタイミングが奴隷狩りにわかってたのは、グドゥルフの神がルール違反をしていたからで間違いなさそうだな。」

「くそっ、なんて汚い! あれだけルールを守れと言っておきながら、こっそり違反してるなんて! こうなったらルール違反のことを問い詰めてやる……」

「いや、それはやめたほうがいいな。

 まずは明確な証拠がないから、そんなことは知らないと誤魔化されるのが落ちだ。

 よしんばルール違反を認めて同じことはもうしないと約束されても、既に転生の場所を変え同じような奴隷狩りに遭わないように対策済みだから意味がない。

 どのようなペナルティーを課すのか決まっているならともかく、そこが曖昧ならば大した効果もないだろう。

 実際に何をしたかといえば、ただこちらの人間に転生してくるものがいるよと囁いただけなんだ。

 その結果としてアブラハム王国の戦力になるはずだった転生者がしばらくの間根こそぎ奴隷として捕らえられ、一部の才能のあるものが洗脳され隷属させられた魔術師にされたとしても、それはあくまでこの世界の人間が行ったこと。

 神が直接行ったことなんて大したことじゃないよと言い逃れるのは簡単さ。」

「むー、ならば僕の方もルール違反の禁じ手を…」

「それもあまりオススメはしないな。

 もともと力がなくて大したことができない可能性もあるけど、相手は一人じゃないんだからお互いにルール違反をこっそり行っていてその対策もとっているはず。

 いままで手を出してなかった少年神がいきなり手を出しても、完全に封じられて証拠を押さえられて糾弾されるのが落ちさ。

 大事なのは相手がルール違反をしてくるぞということがわかっていること。

 今回のように転生の情報がまた伝えられるだろうし、こちらの元の世界の位置が分かっているなら元の世界の情報も神様経由で伝わっているかもしれない。

 ほかにもルール違反がこっそり行われている可能性もあるし、これから先のここぞというところで新たなルール違反が行われるかもしれない。

 その心構えと警戒と対策が必要とわかったことが、今回の収穫だと考えるべきだ。」

「むー、なんかすっきりしないけど、仕方がないことなのかなぁ…」

 少年神はそのいらいらを飲み込むようにマカロンを一口で頬張り、コーラもどきで飲み下した。


 異世界だからとはいえ、神々がしっかりとしたルールを作り厳守しているとは限らないのである。



「さて、相手の神のほうはどうしようもないとしても、それ以外に対処ができる場所があるんだ。」

「え? というと?」

「魔術師ギルドさ。

 グドゥルフに通じていてアブラハム王国に不利益をもたらしているなら、排除する必要があるって話は前もしたと思うけどね。

 今回の件でグドゥルフに通じている確たる証拠も出たし、アブラハム王国の貴族たちに食い込んでる部分の排除にも多少の目処がついた。

 ただ、私と私の仲間たちだけで対処するには相手の組織が大きすぎるし、神が直接手を下すのもまずい。

 その手助けをしてもらうために、今回はその組織の上層部の方々にお越しいただいてるのさ。」

 私は教会の片隅で先程から微動だにせずに祈り続けている数名を指し示した。


 クリストス教からいままで世話になったプレイアデス枢機卿に加えて今回はクリストス教最高権力者の教皇ルイス8世にもお越しいただいた。

 イスラーム教からはアルを通じた繋がりのある穏健派指導者のマイム師。

 プレイアデスと教皇はお互いに二大派閥を率いるものとしての多少の不仲さがあり、イスラーム教のマイム師も過激派や原理主義はもちろん穏健派でもほかにいくつか派閥がある中でのたった一人の選出だ。

 それぞれに一人だけ礼拝堂の中に同行することを許してあるが、教皇は護衛の聖堂騎士、マイム師も護衛の戦士を一人なのに対し、プレイアデス枢機卿は自身の後継となるであろう若い司教を連れてきていた。

 教会の外にはもっと多くの護衛や付き添いがいたし、プレイアデス枢機卿以外はなぜこのような場所に自分たちが呼び出されるのか?とやや不満げであったが、少年神が姿を現した直後から体を硬直させ、何が起こるかわかっていたはずのプレイアデス枢機卿も含めて一心不乱に祈っている。

 イスラーム教の指導者であるマイム師をクリストス教の教会に呼ぶのは来てくれるか少し不安だったが、

そこはさすが穏健派、なんとか了承してくれた。

 また、少年神が現れた時にちゃんと自分たちの神として認識してくれるか?も問題なかった。


 私自身こちらに来て枢機卿から話を聞いてから知ったのだが、神様の名前は”ヤハウェ”というらしい。


 そして、これはユダヤ教でもイスラム教でもちゃんと、神の名はヤハウェだとはっきりしているというのだ。

 まぁ、日本人に一番馴染みのあるキリスト教ですら神様の名前がヤハウェだという話はさっぱり聞いたことがなく、これの読みを変えたエホバがかろうじて耳にしたことがある程度だ。

 実際のところ、キリスト教徒は”ゴッド”としか呼ばないし、イスラム教徒は”アッラー”としか呼ばない。

 それは結局、神と呼んでいるに過ぎず、名前を普段は呼んだりしない。

 ま、結局偉すぎる相手を名前で呼ばないというだけであり、日本人でいえば天皇陛下のお名前が実は”明仁”であるということを知らないのと同じことである。

 総理大臣くらいならフルネームで記事に書いたりもするが、明仁天皇陛下などという呼び方はどこであってもしないものである。


 そんなこんなで宗教の指導者三名が自分たちが信奉する神に拝謁したのだが、あまりにかしこまりすぎてその先のアクションは起こせないようだった。

 せめて自己紹介するくらいの度胸は欲しかったなと思うのだが、私が感じる神の存在感とはまた違ったプレッシャーを感じているのだろうなと思う。

 ただ、このようにただ祈っているだけであっても神に直接謁見したという事実は大きく、彼らの地位はこれからさらに強固なものになっていくであろう。


「さて、ということで、魔術師ギルドはアブラハム王国にとっての敵であることが明らかになりました。

 お三方には後でその明確な証拠に関する資料をお渡ししますが、魔術師が王国の役に立っているという以上に王国から優秀な人材を洗脳してさらい、あまつさえ神がアブラハム王国のためにこの世界に転生させた人々を組織的に害していたということはもはや疑いの余地はありません。

 王宮内や王国軍の中に多くの魔術師がいることや、貴族たちの中に魔術師ギルドと通じているものがいるとしても、それを排除していかなければいけない段階に来ていると見ています。


 そして排除のためには組織の力が必要です。


 魔術師ギルドは小さな組織ではありませんし、王国の貴族を相手にするのも簡単ではありません。

 そのための力を、クリストス教とイスラーム教の方々に貸していただきたいのです。

 それは消して簡単なことではありませんが、アブラハム王国と神がこの世界に送ってきた転生者たちを害している魔術師ギルドを排除するのに、力をお貸し願いたい。」

「僕は僕を辱めたグドゥルフの手先である魔術師ギルドを僕のアブラハム王国から排除することを望む。」

「「「はぁーーーー。」」」

 少年神の言葉を受け、宗教指導者たちは低く平伏し答える。

 相手の組織は巨大であり、その排除には多大な労力が必要で、全ては一朝一夕では終わらないので、神の言葉という強力な裏付けくらいは必要となるのである。



「さて、魔術師ギルドの排除は皆に頑張ってもらうとしても、サトシはそれだけに専念するわけでもないんだろ?」

「そうだね。魔術師ギルドには消えて欲しいと思っているけど、私が直接争っているわけではないしね。

 ただ、奴隷にされた転生者たちはどうにかしたいとは思っているんだよ。

 魔術師ギルドから直接転生者を受け取って奴隷にしていた商人自身はもう捕らえたけど、そこから転生者と知りながら取引してた奴隷商人を根こそぎ潰していきたいんだよね。

 これもクリストス教とイスラーム教に手伝ってもらうことになるだろうけど、それによって神がアブラハム王国に送った人々が助かると思えば協力してくれるはず。

 それと同時に、私たち転生者の組織も作り上げて宗教に属したくない転生者たとを集めたいと思っているんだよね。

 今は戦えるものたちを中心に魔物討伐をやっているけど、戦えない人たちもいるだろうからその人たちが生活できるような手段も作らないといけない。」

「ふふーん、そこは教会からの寄付で生活って訳にはいかないの?」

「それで構わないと思っている人はクリストス教やイスラーム教に保護してもらっていてもいいけど、そういうのが嫌だって人は私も含めてそれなりにいるのさ。

 やはり自分たちで稼いでしっかり大地に踏ん張って生きていかないと、前の世界で一度死んでいるとは言えちゃんと生きてるとは言えない。

 大規模にやるためには一時的に資金を借りなきゃいけないかもしれないけどね。」

「ふーん、そういうものなのかねぇ…」

 飢えもせず寿命で死ぬようなこともない神様には、この短い人生をしっかり生きるという感覚はわかりづらいのかもしれない。


「しっかりした組織が出来上がってそこに前世での知識がある人間が集まれば、いま王都で手に入る以上の素晴らしい料理が作り出せるかも知れないんだぜ?」

「あーーー、それならとても重要だ。魔術師ギルドの排除より重要じゃないか!」

 少年神が関心をもちそうな部分をくすぐると、面白いくらいに反応する。

「ま、始めたからといってすぐ形になるとは限らないけど、とにかく始めないことにはいつまでたっても出来上がらないから長い目で見て欲しいね。」

「そうだね、素晴らしい供物のために頑張ってもらわないとね!」

「まぁ、供物のためだけに頑張るわけじゃないけど、いろいろ頑張ろうと思っているのさ。あと、ついでに魔術師ギルドも潰すしな。」

「いいじゃないか、供物のために頑張ってくれても!

 教会にもそのための援助もしっかりしてもらいたいし!

 あと、ついでに魔術師ギルドもしっかり潰してもらいたいし!」

 そのわがまま具合が今の少年の姿にあっているなと思い苦笑する。

「ともかく、また進展があったらまた報告するよ。」

「わかったよ。報告がなくてもたまに供物を捧げて欲しいけどね! 次回の取って置きも楽しみにしてるよ!」



 少年神は平伏したままの宗教指導者と残念な一言を残し消えていった。

 宗教指導者たちは感動に涙を流したままだったが、少年神の残念な部分は相変わらず見えていないようだった…。


さて、四章開始です。

この話自体では四章のテーマはわかりづらいでしょうが、

章の題名から推測してくださいw

まぁ、軽い内容にできれば、サクサクかけるはず…(最近間が空きすぎなのは自覚してます

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