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甘くない異世界 -お約束無しはきついです-  作者: 大泉正則
第三章 さぁ、パーティーを始めよう
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3-7 イスラームの戦士

さて、だいぶ時間がかかっています。

しかも、予定したところまでなかなかたどり着かないので、一度区切ることにしました。


いろいろ難しい内容で調べながら書いてたのもありますが、

強烈な風邪をひいて五日ほどダウンしてたんですよね…


さて、内容について注意して欲しいのですが、

私はなるべく中立な気持ちで書こうと努力していますが、

正直、私はイスラム教徒ではありませんし知り合いにもイスラム教徒はいません。


よって、ネットで調べたことと池上さんのお話によって書かれています。(池上さんはすごいですねw

 その者は新人たちの訓練が一通り終わり安定した魔物討伐がうまく回るようになった頃に現れた。



 ステファンはその動きはやや大雑把では力任せではあるがその体格を生かした強固な護りで前衛として活躍をし、技術と素早さで前衛をこなすアランとの組み合わせは抜群の安定感だ。

 また、ジョルジュはブライアンにこそ及ばないがなかなかにロングボウを使いこなし、技術的にはまだまだなシモンズとポールを引き連れて弓兵として狩りをこなしている。

 イツキはまぁ相変わらずではあったが、御者として獲物を運ぶ馬車を担当してくれているため、いちいち狩りを長時間中断させなくても良くなっている。


 そして、何より狩りの効率を上げるのに貢献したのがダガーである。

 我々が使っている索敵や隠蔽の魔法を自ら習いたいと志願しただけあってその習得にかける集中力は大したものだった。

 索敵については広範囲も個別対象精査もあっという間に覚え、もともと出来かけていた隠蔽もさらに磨きをかけて私でもなかなか発見できないレベルにまで向上させた。

 結界系がやや苦手だが、これは一箇所にじっと留まっているのが苦手という性格のせいだろう。

 その代わりに、筋力強化と防御強化はしっかり覚え、短剣での攻撃系の技も作り出した。

 まぁ、筋力強化の魔法は魔力を動かすゆえに隠蔽とは相性が悪く、同時に使うと魔法が使えるものには見つかってしまうという、私たちにも当てはまる欠点が見えたのはひとつの収穫とも言えるが。


 そして、魔法以外の点については既に習得しているため、戦うための身のこなしや痕跡からの魔物の追跡方法、そして我々に情報を伝えるためのハンドサインなどを完璧に使いこなしていた。

 また、これはちょっと反則なのだが今まで見ているだけだった他の間者たちとも情報を交換し、魔物の位置情報を集めてくれていた。

 そのお礼にと、村の外に間者達が休憩できる小屋をこっそり建てたのは秘密だ。



 その日は午前中の一回目の狩りが終わったあと、私とマイルズ、アランの三人が治療院に残っていた。


 他のクリストス教の護衛たちは一部が私と離れて魔物討伐に同行することにはいつも少し難色を示すのだが、村の中であればそんなに危険が有るはずがない。

 また、私が同行しなくて狩りの方は大丈夫か?と思うのは、少し傲慢すぎだろう。

 最悪、ダガーとブライアンさえついて行ってればどんな魔物からも逃げ切ることができるだろうし。


 私がたまに残って別行動するのは以前からできないかと試行錯誤している魔法の研究のためだ。


 ほいほいといろんな魔法をお手軽に作り出しているが、もともと魔女の魔法であったものを応用していたり、前世でのゲームなどの中で使われていたイメージがあったればこそのこと。

 そして、それらの土台の上で、何度も試行錯誤することによって有用な魔法の形というものを作り出し、さらに反復させることによって体に覚えさせている。

 その魔法が戦闘中やとっさの時に発動させられるまでには、長い時間がかかるのだ。


「うーん、やはり土の壁を全て魔力だけで作り出すのはちょっと消費がきついな。」

「初めからある土を動かして壁にする魔法は消費も小さく強固ですが、土がないところでは使えませんしね。それにこの中庭で練習すると、地面が凸凹になってしまうでしょう。」

「あくまで借家なんだから、地面掘り返して魔法の練習はNGだな。」

「また今度時間のあるときに、村の外の畑のないところで練習致しましょう。」


 中庭であれやこれやと検討している私たちの背中に、門の外から大声で呼びかける声が聞こえてきた。


「失礼いたします。こちらにサトシ様はおいででしょうか?」


 突然の大声にびっくりして門のところに行くと、頭に白い布をつけた少年が一人跪いていた。

 いや、出会ってから跪くならわかるけど、門の外で跪いてから声をかけるとか、わけがわからないから。

 それにその大声。

 もしもなかに誰もいない状態で訪れ、誰か出てくるまで上げ続けたとしたら近所迷惑甚だしいから。


「私がサトシだが、君は一体?」

「はっ、これはサトシ様、お目にかかれて光栄でございます。

 私はイスラーム教の戦士、アルファーシ=サダム=ノキーアと申します。

 私はサトシ様の下僕、アルとお呼びください。

 アッラーより下された神託に従い、サトシ様のもとに仕え、ムスリムとサトシ様との絆を結ぶために参りました。」

「と、とりあえず、ここじゃなんだから中に入ってくれるかな?」

「はっ、失礼します。」

 門の前に跪かせたまま会話をするというのは傍から見るとありえない光景だったので慌ててなかに招き入れたが、こりゃまためんどくさいのが来たなぁと頭を悩ませる。

 まぁ、ほとんど忘れかけてたけど、そういえば一人寄越してくれって前に少年神に頼んだよね…。


 そして食堂に通し、椅子に座らせて会話しようとしたのだが、ここでもひと悶着。

 椅子ではなく、床の上に直接座ろうとしたのだ。

 どうやら私と同じ高さの椅子に座るのがNGだったらしい。

 普段クリストス教の護衛たちにかしずかれていても、さすがに一段高い席を作るほどにふんぞり返ってはいないのでそんなものは用意できていない。

 それじゃ会話できないからと無理やり椅子に座らせたが、上座と下座に異常にこだわった。

 これは最終的に私が折れたが、おかげで椅子に座ってても距離がかなり離れてて会話しづらい。

 マイルズとアランはアルを警戒して私の左右をがっちりと固めている。


「さて、まずは君のことの確認から始めようか。最低限の条件として穏健派であることは必須だ。また、ある程度の妥協をしてもらわないと共同生活はできない。イスラーム教の現状と合わせて説明してくれるかな?」

「は! 私はスンニ派でも穏健なグループに所属しておりまして、原理主義とも距離を置いております。

 イスラーム教全体でもっとも穏健であると言われているマイム師の下でお使えしており、戒律などについても、ある程度の妥協を許すと直接の許可を頂いております。

 現在、イスラーム教はほぼスンニ派が単独支配しています。

 シーア派の方も転生してきますが、明確な指導者がいないためにまとまりきれず、ばらばらにスンニ派の中に溶け込んでしまっているようです。」


 前世においてイスラム教にはシーア派とスンニ派の2大派閥が存在するが、その違いは大雑把に言うと指導者がムハンマドの血縁を継いでいるか、いないかである。

 ハディースというムハンマドの伝承を重視するかなどの違いはあるが、その根本にある経典はコーランであり違いはないはずではある。

 つまり、後継者争いから分裂し、世襲制をやめたのがスンニ派とも言える。


 では、この異世界ではどうなるかというと、転生してくる中にはスンニ派もシーア派もいるだろうが、そこにシーア派の正当な後継者が含まれるか?となると、なかなか難しいだろう。

 結局、ジハードだなんだと言いながら戦っていても、戦死していくのは末端の兵士である。

 指導者はどうか?といえば、後継者争いで暗殺くらいはあるだろうが、それは宗教を理由として犠牲になったとは言い難い。

 結果として、血縁を重視するシーア派の指導者は転生してこないのだ。

 宗教によってその途中の階位は様々であろうが、最低でも一番上が存在しなければまとまりようがない。

 結果、この世界でシーア派がまとまることはできなかったということである。



礼拝(サラート)についてもきちんと行えるようにはしてやりたいが、ここにも妥協が必要だ。

 特に昼に行うものは短くしてもらい、戦闘中や逃走中、また追跡を行っている途中などは時間をずらしてもらうことになる。

 また、部屋は一番端の部屋にして他人への影響は少なくさせようとは思うが、礼拝の際には大声でのコーランの朗読はさせられない。

 小声で、もしくは無音で祈りを捧げ、部屋の外にはなるべく音がもれないようにして欲しい。

 こちらも出来るだけの防音を施そう。」

「はい、どんな形であれ、礼拝は行いたいのでよろしくお願いします。」

「残念ながら、私がいま拠点にしているルルイス村にモスクはないので、どうしてもモスクで礼拝したい時は近くのモスクのある街まで休日にでも出かけてもらうことになるな。ちなみに、今はどの方角を向いて礼拝を行うんだ?」

「残念ながらメッカの方向はわからないので、王都のモスクの方向に礼拝を行っています。神が首都と定めた都にあるモスクなので。」

「なるほど。」

 イスラム教徒の行う宗教的儀式の中で多くの人が思い浮かべるのが礼拝(サラート)だろう。

 イスラムの六信五行のうちの行の一つである礼拝は一日に五回行われ、日の出前、正午すぎ、遅い午後、日没後、そして就寝前に行わなければいけないらしい。


「断食はいつぐらいになるんだ?」

「先々月に終わっております。次は来年です。」

「そうか、断食は慣れないものが見ると戸惑うから、時間があるのは助かるな。」

 イスラム教の宗教儀式の中で次に有名なのは断食であろうが、ここではひとつの誤解がある。

 多くの人が断食をラマダンと呼ぶと思っているが、ラマダンというのは断食を行う月の名前であって、断食自体はサウムと呼ぶ。

 その正式名の誤解に比べれば、約一ヶ月の断食といえども日が出ている間だけの断食で日没後に食事を取ることは多くの人が知っているといってもいいだろう。

 五行は、信仰告白(シャハーダ)礼拝(サラート)喜捨(ザカート)断食(サウム)巡礼(ハッジ)で成り立っており、信仰告白とは「アッラーフの他に神は無い。ムハンマドは神の使徒である。」と証言すること、喜捨は収入の一部を困窮者に施すことである。

 ただし、五行のうちの巡礼だけは、どうやってもメッカに行く方法はないであろうが…。



「さて、こちらの求めた通りの人物かの確認は問題ないようだとして、もう少しイスラーム教の現状について聞いておこうか。

 原理主義の連中が居るらしいことは言ってたが、過激派の連中もやはり少なからず転生しているのだろう?

 穏健派以外の勢力がどのくらいの規模で、どういう活動をしているかを聞いてもいいだろうか?」

「私がサトシ様にお伝えするようにと言われた情報では、転生者にはやはり過激派や原理主義の極端な人間が混じっていてそれなりの人数がいるというのが確かな話です。

 ただ、過激派の連中はこちらの世界でも事件を起こし、何度か大規模に討伐されています。

 原理主義の本当に暴力的な連中はこれら過激派に合流していたため、大きく数を減らしたとのこと。

 ごく最近にも王国軍による大規模な討伐が行われ、ほぼ壊滅的な被害を出しながらもまだ僅かに残っているとのことです。

 私が聞いた数では、暴力的な原理主義者を含む過激派組織が2000人ほど、マディノの街に潜伏していると聞いています。」

「ふむ、やはりそのくらいはいるのか…」

 意外に思うかもしれないが、前世でのイスラム過激派はだいたいスンニ派である。

 普通、テロや暴力による勢力拡大は少数派で迫害された側がするイメージがあるが、イスラム教の場合は少数派であるシーア派はテロを受ける立場になったりする。

 これも指導者がムハンマドの血縁者かどうかの影響なのかもしれない。

 シーア派自体が少数で弾圧されていたとしてもその指導者自身がそこまで厳しい環境になければ、暴力や過激な思想で今の地位を向上させようと思わないということではないだろうか。


「さて、君を受け入れるべき我々の方の話だが、現状把握などのためにイスラム教からの人員を希望したのは私の独断に過ぎない。

 今の我々のグループは私とマリアンヌ以外は奴隷にされていたことがある転生者と、クリストス教が私につけてくれた護衛達とで成り立っている。

 私自身は過激派は嫌いだが、イスラム教徒すべてが悪いのではないとわかっているつもりだ。

 だが、私以外の転生者に中には全てのイスラム教徒を過激派と同列視して、強烈に拒絶反応を起こすものもいることが予想される。

 イスラム教徒であるアルにきつく当たるものが出ることを覚悟するとともに、そのようなものたちの態度を許して欲しい。

 私を含むここにいる転生者は一度、イスラム教徒に殺されているのだから。」

「は、はい、わかりました。」

 私自身も前世でイスラム教徒に殺されたという言葉は十分に重く響いたのだろう。

 アルは顔色を真っ青にしながら深く頷いたのである。



 そして、私は狩りから戻ってきた他の仲間たちにアルを紹介したのだが、予想通りに大モメとなるのだった…。

だいぶ苦労してます。

風邪のせいばかりではありません。

やっぱりイスラムのことを調べながら書くのは大変ですね。

おかげでイスラムの知識が三倍には増えたつもりですw


情報はWikipediaを中心に拾っていますが、

やはりまだまだ不正確な部分は残っているかと思います。

私自身ひねくれものなので全て鵜呑みにはしていませんが、

うぃきぺもややイスラム側の人間が自分たちの擁護のために書き込んだ匂いがするので、

必ずしも確定的な情報じゃないかもしれないと思っています。

ま、これは宗教をテーマにした学術書ではないつもりなので、

多少怪しい内容や間違ったことがあっても、よほど重大でなければ修正はしません。

(ま、読んで怒りをぶつけるような人はプロローグ見た時点で読んでないと思いますが


ちょっと予想以上に重くて分割するので、次の話もイスラム中心になりそうです。

ま、次の話のほうがやや怪しい自論が混じってきそうですが…(次はもう少し早く書きたい

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